天花園
神々の宮殿からでると、そこに四神がいた。
先ほど護衛に立候補した神たちだった。
「お前たちここで何をしているのだ」
そのまま通り過ぎようとしたヴァイオレットの腕を掴み、時の神が四神に尋ねた。
「何って、運命の女神を待っていたんですよ。護衛ですから」
他の神の真っ白な透き通る肌と違い、その神だけは少し肌が焼けていた。
燃えるような真っ赤な髪だから、余計にそう見えるのだろうか。
ヴァイオレットはその神を見上げ、何を司る神なのだろうかと思った。
そんなヴァイオレットの考えを見透かしているかのように時の神が「彼は天空と炎を司る神です」と教えてくれた。
他の神についても、ついでにといった感じで教えてくれた。
金髪に紫の瞳をした男は太陽と嵐を司る神。
銀髪で毛先が水色で瞳も水色の男は海と風を司る神。
黒髪で限りなく黒に近い紫の瞳をした男は月と死を司る神。
彼らの正体を知り、ヴィオレットは時の神に次ぐ力を持つ神々が自分を守ると知り、内心動揺した。
自分を守ることより、下界の者たちを倒す任務の方が重要ではないのかと思ったりもした。
「まぁ、確かに護衛の任についたのなら、天花園に行く道のりを知らないといけないしな。そなたたちも一緒についてきなさい」
時の神は勝手に一人で納得し、ヴィオレットの意見を聞かずに勝手に決めた。
いや、それより「天花園」とは何だろうと初めて聞く言葉にヴァイオレットは首を傾げた。
そんなヴァイオレットの疑問を払拭するかのように、天空と炎を司る神が「天花園」について尋ねた。
「天花園とは何でしょうか」
「天花園とは運命の女神が住んでいる場所のことですよ」
時の神の言葉に男は納得したのか、それ以上何も言わなかったが、ヴァイオレットは自身がいる場所がそんな風に呼ばれていることに驚いていた。
「天界にこんな場所があったとはな。初めて歩くぞ」
太陽と嵐を司る神が周囲を見渡しながら言った。
その言葉に海と風を司る神も同意するように頷いた。
彼ら四神でも知らない場所があるのかとヴァイオレットは内心驚いた。
彼は天界を守る神々の最後の砦と言われるくらい強い。
守る管轄はそれぞれ違うが、地形を把握していないと何かあったときすぐに駆け付けるとこができないので、彼らの頭の中には天界の地形が頭に叩き込まれていた。
ただし、時の神と運命の女神の場所だけは彼ら、四神でも把握することが許されなかった。
そのため、今歩いている場所すら彼らは把握しておらず、初めて見る景色に少し驚いていた。
運命の女神の住む天花園まで一直線で歩いているが、ところどころに結界が張ってあり、その結界は強力でいくら四神でも突破するのは無理だと感じていた。
護衛の任についていなかったら、彼らは一生天界にこんな場所があることを知らずに過ごしていただろう。
「ここです」
時の神が突然止まり、そう言った。
彼らは前を見るが目の前には何もない。
ただあたり一面草原になっているだけ。
こんな場所が運命の女神が住む天花園なのかと困惑した。
「運命の女神」
時の神に呼ばれ、ヴァイオレットは頷いてから一歩前に出て、結界に触れた。
ヴィオレットが結界に触れたことで、風景が歪み、隠されていた扉が開いた。
「どうぞ」
ヴィオレットが自身の住む場所に足を踏み入れる許可を出すと、先ほどまであたり一面草原だったのが、色鮮やかな様々な種類の花が視界一面に飛び込んできた。
美しい。
その一言に尽きる。それ以外の言葉が似合わないほどの絶景の場所だった。
そんな場所を一人で管理し守っているヴァイオレットを四神はさっきまでとは違う感情で彼女を見た。
「これほどとはな……」
時の神は感嘆した。
あの荒れ地が、こんな美しい場所に変わっていたなんて想像をはるかに超えていた。
どれだけ人間の魂を大切にしていたかは、この場所を見れば一目瞭然だった。
「あなたはすごいですね」
突然、時の神が優しい顔でそう言った。
ヴァイオレットはいきなりどうしたのかと不審に思ったが、顔に出すことなく「そうでしょうか」と何に対して言われているのかわからず、とりあえずそう答えた。
「ええ」
「では、満足したのなら帰ってください。あの人たちも一緒に連れて帰ってくださいね」
ヴィオレットは突然呼び出されたせいで、中途半端に終わった仕事を再開しようと、奥へと入った。
今のヴァイオレットは見送りする時間すら惜しかった。
例え、自分のせいで花が燃えたのだとしても、何か手はあるかもしれない。
夜になったら、選定した人間に力を与えなければならない。
やることは沢山ある。
勝手に来たのだから、勝手に帰るだろうと見送りは必要ないと判断した。
生を終えた魂の花が枯れているのを見つけ、ヴィオレットはその花を抜き、次の人生を迎えるまでの間、保護するために供養しようと自身の力でその花を消し、土に返そうとしたそのとき、花が燃えた。




