神々の会議 2
どうして?
もう何度目かわからない。
花が突然燃えて消えていく。
花が勝手に燃えて消えると言うことは、魂の消滅を意味する。
どれだけ手を尽くしても、一度消滅した魂は永遠に戻ることができない。
いったい、私の何がいけなかったのだろうか。
ずっと、ずっと、毎日同じように大切に守ってきたのに。
ヴァイオレットにはどうしてこんなことが起こっているのか、原因がわからなかった。
当然だ。
ヴァイオレットは時の神と一回あった以外、誰とも会っていない。
人間界で何が起きているのか教えてもらうことができないのだ。
どれだけ頑張っても、花が消えていくのは当然なのに、自分のせいだと思い込み、ヴァイオレットは日に日に心がすり減っていった。
そんなときだった。
時の神の遣いがきたのは。
そして、ようやく知った。
花が消えた原因が自分ではなく下界の者たちの仕業だということを。
※※※
「運命の女神さまを連れてきました」
下級神官が扉の前でそう宣言すると、目の前の大きな扉がゆっくりと開いていった。
扉が開き、中の様子が見えるようになると、神々の視線が自分に集まっていることにヴァイオレットは気づいていたが、気にすることなく部屋の中に入った。
「久しぶりだな。元気にしていたか?」
神はいつでも完璧な姿をしている。
どれだけ、悲しくても、つらくても、苦しいことがあっても、美しい姿が衰えることはない。
今のヴァイオレットもそうだった。
外見だけ見ると、元気そうに見える。
「お久しぶりです。はい。元気に過ごしていました」
本当は元気に過ごしてはいなかったが、言ったところでどうにもならない。
だがら、ヴァイオレットは話を本題にするためにも嘘を吐いた。
「そうか。早速で悪いが本題に入らせてもらう。ここに来るまでの間に、大体のことは聞いただろう」
時の神が言うように、ここに来るまでに下級神官から人間界で何が起きていて、なぜ自分が一度も呼ばれたことのない会議に呼ばれたのか、その理由は聞いていた。
「はい」
「あなたを呼んだのは、あなたにしてもらいたいことがあるからです」
「私にできることなら何でもしましょう」
ヴァイオレットは人間たちの魂を守るためだけに産まれてきた。
そのことをヴァイオレットはきちんと認識している。
今回のことは下界の者たちのせいだとしても、守り切れなかった自分の責任でもあると思っていたので、それを挽回する機会を与えてもらえるなら、本当に何でもするつもりだった。
だが、そんなヴァイオレットの想いを馬鹿にするような声が横から聞こえてきた。
「なんでもねぇ」
ヴァイオレットは声のした方を向くと、美しい黄金の髪が天井窓から差し込んでくる太陽の光で輝き、見たものを虜にするよな桃の花のような色の瞳をもった女神と目が合った。
その女神の下から上まで舐めまわすような不快な視線と見下すような表情から、自分に好意的ではないとヴァイオレットは察した。
初めて会った女神に何故このような態度をとられるのか理解できなかったため、ヴァイオレットは一瞥だけして、また時の神に視線を戻した。
そんなヴァイオレットの態度に馬鹿にされたと感じ癪に障ったのか、その女神の両目に炎のような怒りが宿った。
「ありがとうございます。ですが、その前に確認しないといけないことがあります。あなたにその力があるのかということを」
「力ですか?」
力にもいろいろ種類がある。
時の神が望む力はどんなものなのだろうか。
種類によっては、自分は力になれないのではないのかと思うと、問題が解決するまでの間、ずっと蚊帳の外にいさせられるのかもしれない。
そう思うだけで、ヴァイオレットはどうにもならない喪失感に襲われた。
「はい。下界のものを滅せられるだけの力があり、その力を人間に授けることができるかということです」
ヴァイオレットは生まれてから一度も人間の魂を守る役割でしか力を使ったことがない。
そのため、時の神が言う下界の者たちを滅せられる力がどれくらいのものをさしているのかわからなかった。
たとえそれほどの力を持っていないとしても、使ってみなければ判断してもらえない。
ただ、やるしかないのだ。
時の神と初めて会ったときに、自分の力の使い方を教えてもらったので発動させることは難しくない。
ヴァイオレット一呼吸した後に、ゆっくりと自身の力を解放した。
ヴァイオレットの神気が青みを含んだ銀色に輝く。
左手を伸ばし、そこに力を集める。
ヴァイオレットの神気で作られた、花模様が施された美しい銀の弓が現れた。
右手には矢を作った。
ヴァイオレット一つだけ窓が開いているところから空を狙い、矢を放った。
矢は一瞬で空高くまで登り、光を放った。
その瞬間、物凄い風圧が巻き起こり、ヴァイオレットたちがいる建物以外、周囲にあった建物は半壊した。
神々は予想もしなかった運命の女神の力に目を見開いた。
自分たちの中で最も若い神である彼女が、四天王に次ぐ力を持っていた。
そんな神々の心情などヴァイオレットは気にもせず問いかけた。
「私にその役割を果たすことはできますか」




