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神ゲーのヒロインになりました  作者: 若狭巴


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神々の会議

「まずいことになったな」


一人の神が呟いた。


その神は自身の美しい髪を握りしめながら険しい表情をしていた。


「ああ。まさか、ここまで堕ちていたとは思わなかった」


神々はその一神の言葉に激しく頷いた。


「これから、どうなさるおつもりですか。皆様も知っているでしょう。我々、神は人間界への干渉を禁じられています。直接、降りて手助けすることはできないでしょう」


水の女神の言葉に神々は黙り込む。


いい解決策がないからだ。


「そもそも、なぜこんなことが起きたのでしょうか。今までしなかったのに、このようなことをし始めたのには必ず理由があるはずです」


愛と美を司る女神が口を開くと、何神かは顔を赤らめた。


顔だけでなく声まで美しいなんて、と大切な会議の最中だということを忘れさせるほど愛と美を司る女神は魅力的だった。


久しぶりに会ったせいで、余計にそう見えているのもあっただろう。


「理由か。誰か心当たりある者はいるか?」


正義を司る神の問いかけに誰も答えない。


当然だ。


誰も心当たりがないのだから。


長い沈黙が訪れ、誰も口を開こうとしなかった。


そんなとき、恐る恐る知恵と希望を司る、子供のような姿の神が「あの……」と声を出した。


神々の視線は一斉にその神の元へと集まった。


いきなり自分よりも格上の神たちから見られ、その神は委縮してしまう。


そんな心情を察した時の神が、優しい声で尋ねた。


「ゆっくりで構いませんで、どうぞ言ってください」


自分よりもはるかに上の時の神に優しくされた神は本当にゆっくりと話し出した。


「あの、もしかしたら、なんですけど、違うかもしれないんですけど……」


前置きが長く、ゆっくりと話す神に何神かは苛立ってきていたが、時の神に逆らうことなどできず、ただ我慢して話を聞くしかなかった。


「運命の女神が、関係しているのでは、ないでしょうか」


ようやく結論を言った神に、神々は「間違いない。運命の女神が原因だ」と思った。


彼女が誕生してから、人間たちの魂は一人も奪われることがなくなった。


天界の神々も、下界の穢れた存在たちも、暗黙のルールで人間界に手を出すことはしなかった。


いや、そんなことをすれば人間界は荒れ果て何も残らなくなる。


そんなことになれば、神は信仰が消え、生きられなくなり、穢れた存在たちも同じように人間たちの魂を食べることができなくなり消えてしまう。


どちらも最終的に死んでしまうので手を出してはいけないと決められていた。


だが、彼らはそれを破って人間界に降り、生きた人間を殺し、運命の女神に魂を回収される前に食べた。

運命の女神のお陰で多くの魂は守られた、だが、彼女の存在のせいで新たな問題が生まれた。


ここにいる神々のほとんどは声には出さなかったがそう思った。


「原因がわかったのなら、これからどうするか考えるべきではありませんか」


戦の神が話を最初に戻す。


「どうするも我々は地上に降りることはできませんよ。これは原因を作った運命の女神が責任を取るべきではありませんか」


雷と美を司る女神が険しい表所で言うと、それに賛同する神々も「そうだ」と同意した。


「それは……」


時の神が否定しようと口を開くが、それよりも先に天空と炎を司る神が足で机を破壊した。


その破壊音はあまりにも大きく、一瞬で部屋の中は静寂になった。


それをやった人物が、創造神、時の神につぐ、四天王と呼ばれる一神であったため、静かになるしかなかったのだ。


「ごちゃごちゃうるせーな。運命の女神は俺たちができなかったことをやった。その女がいなければ、人間の魂はどれだけ食われていたと思う?文句があるなら、穢れた存在を殺してから言え。安全な場所でふんぞり返ってるだけの役立たず共が」


彼の言葉に誰も言い返さなかった。


彼が自分たちよりも格上だから言い返せないというのもあるが、何より正論しか言っていないので反論のしようがないのだ。


普段なら、彼が暴れたら時の神が落ち着くように宥めるが、今日は傍観していた。


今回は天空と炎を司る神である彼が正しいことを珍しく言ったからだ。


「その机、お前が弁償しろよ」


海と風を司る神が呆れたように言う。


「言われなくてもわかっとるわ」


「このバカの言い分は正しい」


これまで黙っていた、太陽と嵐を司る神が天空と炎を司る神を「バカ」と呼びながらこう続けた。


「たが、彼らの言い分も正しい。そこでなんだが、一つあることを思いついた。人間たちに神の力を与えるのはどうだ?」


彼の発言に、時の神と月と死を司る神以外が全員、「こいつ、とうとう頭がいったのか」と思ってしまった。


だが、二神だけはいい考えだと思っていた。


神が人間界に降りることはできない。


よっぽどのことでもない限り許されない行為だ。


だが、力だけなら問題ない。


そして、その力を使うものには達成するまでの間、ずっとその使命に囚われ続ける。


「いい考えだと思います」


時の神が賛同したことで、同じ地位の天空と炎、海と風を司る二神も何も言えなくなってしまう。


「ただ、問題があります。誰の力を与えるかです。我々にも役目があります。それを全うしなければなりません。与えるものはその間、本来の力を使うことができなくなります。ですが、穢れたものを滅せられる力を持つものでなければ、例え力を与えても意味がありません」


時の神は一神だけ、思いついたが自分の口からその名前を出すのはどうしてもできなかった。


その名前を言えば、これからどんな未来が訪れるのかわかっていたから。


ただでさえ、花が突然燃え、塵となって消えていく姿に心を痛めているのに。


だが、彼女の名前が出たら止めることもできなかった。


それが、彼女の運命なのだと思うしかなかった。


「運命の女神はこの天界で最も安全な場所にあるのですよね。そこなら、襲われる心配もありませんし。人間たちの魂をこれまで守ってきたのなら、それ相応の力を持っているのではありませんか?」


愛と美の女神が遠回しに「運命の女神」が適任だと言う。


「確かに、彼女こそピッタリなのではないか?」


愛と美の女神の発言で、神々もそれがいいと、ヴァイオレットの意思とは関係なく勝手に決められていく。


ただ単に、危険を冒したくはないだけだろう、と時の神はわかっていた。


重要な役割を担っている時の神と四天王たちは、そもそも人間に力を与えることができない。


できたとしても強力で与えられた人間たちが少しの力でも耐えられないはずだ。


「とりあえず、運命の女神に聞いてみるのはいかがでしょうか」


誰が言ったのか、考え事をしていたときの神にはわからなかったが、ここにヴァイオレットを呼ばないという選択肢はなく、下級神官に運命の女神を呼ぶように指示をした。


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