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神ゲーのヒロインになりました  作者: 若狭巴


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3/12

時の神

最初は、さっきまでゲームをしていたから夢でも見ているのだろうと思った。


画面で見る風景とは違い、とても美しくこの世のものとは思えなかった。


例え夢の中でもと思い、もっといろんな美しいものを見たいと立ち上がろうとするとなにも身に着けていないことに気づいた。


「え?」と間抜けな声が出て、頭を少し下げて状況を確認しようとするが、美しい銀の糸が目に入り、物凄く嫌な予感がした。


その銀の糸をゆっくりと上に伝って触っていくと、自分の頭の上で終わってしまった。


(嘘よ!)


必死に何度も頭の中で否定した。


きっと髪の色だけ変わって、顔は元のままだと言い聞かせ、裸なのも忘れて、顔を見ることができる場所まで走った。


ゲームの内容を思い出し、ヒロインが産まれた場所のすぐ近くに川があるのを思い出した。


そこまで走り、川に映った自分の顔を見ると、ゲームのヒロインで、どのルートでも最悪な結末を辿る悲劇のヒロインになってしまっていた。


例え夢の中でも耐えられないこの状況に、髪の毛や顔をどれだけ引っ張ってみても、夢から覚めることはできなかった。


どうにかして夢から覚めようとしても、この体は神で傷一つつけることができなかった。


崖から落ちても、川の中で溺死しようとしても、全て無駄に終わった。


ヒロインになってから、この世界で三日が過ぎた。


どうしたら、この夢から覚められるのかと焦り始めた頃、このゲームがどうやって始まったかを思い出した。


ヒロインがこの世界に誕生してから四日目になると、創造神の遣いで時の神が訪れに来るのだ。


そこで、時の神から名を与えられ、己の使命と役割を知るのだ。


このヒロインは基本、自分の住む領域から出ることはない。


それは人間たちの魂を守るための存在であると同時に、全ての人間の魂を意のままに操ることができる存在のため、下界の穢れた存在たちに連れ去られないようにするため、最も安全な場所で過ごすことが決められていた。


(元の世界に戻る方法を見つけるためにも、今はこのヒロインを演じるしかないわね)


体も傷つけることも、死ぬこともできない菫は夢から覚めるまでの間、この世界に従順することにした。


そして、絶対に頭のいかれた攻略対象者たちと出会わないことに決めた。




次の日になると、ゲームの内容通り、時の神が私というよりヒロインを訪ねに来た。


真っ裸であるため恥ずかしいが、時の神は気にすることもなく淡々と決まっている内容を口にした。


「初めまして。運命の女神。あなたは人間の魂を守るために、我らが父、創造神様によって誕生した存在です。あなたの役割はこの庭に美しい花をたくさん咲かせ続けることです。その花は人間の魂そのものです。いつかは枯れて散ってしまうでしょうが、それは人間たちの寿命がきただけです。あなたに落ち度はありませんので気にする必要はありません。ただ、あなたは咲いた花を大切にしていれば問題ありません」


時の神の言葉には感情など全く感じられず、機械が話しているかのようだった。


彼も運命の女神と同じで、人間たちの時間を守るために存在している。


魂と時間。


最初は人間たちを守るのは時の神だけだったが、彼が守れるのは生きている間の時間だけで、死んだ後は人間たちに時間はないため管轄外だった。


死んだ魂をあの世へ送るための天使たちはいるが、彼らが導く前に穢れた存在たちによって魂を奪われてしまっていた。


ある者は食べられ、ある者は汚され、ある者はその者たちのように堕ちてしまった。


こんなことがこれ以上、起きないように、人間たちの魂を守るために運命の女神は誕生させられた。


ある意味、時の神よりも重要な役割だ。


「わかりましたか」


一方的に言いたいことを言い終えた時の神は、確認のため聞いてきた。


いきなりこの世界にきていたら、混乱して、取り乱して、時の神に詰め寄っていたかもしれない。


だが、何度もゲームをしたおかげか戸惑うことなく「はい。わかりました」と答えることができた。


ゲームをしていたときはヒロインの声を聞くことはできなかったが、実際に聞いてみるとクールなヒロインにぴったりな凛としていて力強い声だった。


「そうですか。では、力の使い方を教えますので、こちらに来てください」


時の神は右手に力を集める。


神の力は神の力を感じることで把握することができるらしい。


神によって能力は違うが、それも一緒にわかることができる設定になっていた。


神だけに、そこらへんはいいようにできているなと、と初めてプレイしたときに思った。


「はい」


菫が近づくと、時の神は右手を頭の上に乗せて力を解放した。


その瞬間、自分の能力をどう使うのかが一瞬にして全てわかった。


ただ、あまりにも膨大な量だったため、それを処理するには神の頭でも難しかったみたいで意識が遠のいていく。


新たな情報が頭に入ってくるたびに、元の世界での記憶がどんどんとなくなっていく気がした。


(だめ!やめて!)


そう叫びたいのに、声が出ない。


体の力も抜けていき、後ろへと倒れていく。


意識を手放す前に、時の神が何かを言ったような気がしたが、聞き取ることはできなかった。


「すまいな。悪く思わないでくれ」


時の神は運命の女神が倒れる前に支え、横抱きにして彼女のだけの神殿に寝かした。


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