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神ゲーのヒロインになりました  作者: 若狭巴


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18/18

ヴューネ


「これは珍しい客人ですね」


前回、呼ばれた会議の建物に訪れるとヴァイオレットが会おうとしていた時の神がいた。


彼は珍しいものでも見たかのようにほほ笑んだが、普段と全く変わらいヴァイオレットの表情の変化の違いに気づき、一瞬で真剣な顔つきに変わった。


「……何かあったのですね」


時の神は力を使い、他の誰も建物に入ることも、盗み聞くこともできないよう結界を張った。


「それで、なにがあったのですか」


「ヴューネが堕とされたわ」


ヴァイオレットは簡潔に結論だけを伝える。


時の神はあり得ない、と言いたげに目を見開くが、すぐに事実を受け入れ冷静さを取り戻した。


「ヴューネは今どこにいますか」


時の神の問いかけに月と死を司る神は力を発動させ、何もなかった空間からヴューネを引っ張り出した。


ヴューネは引っ張り出されるまでの間、月と死を司る神の支配下の一つである死の世界に入れられていた。


そのせいで、引っ張り出されたヴューネはあまりにも恐ろしいところに入れられたせいで、顔面蒼白で体を震わしていた。


時の神はヴューネの背中から生えていた白い羽が無くなっているのを見て、完全に信じることができた。


「ヴューネ」


時の神が呼びかける。


その声は優しく聞こえるのに、威圧的にも聞こえた。


名も呼ばれた本人はゆっくりと顔を時の神の方に向ける。


縋るような、助けを乞うような目をするが、何の感情も宿していない時の神の目を見て戦慄した。


全てを諦めたかのように項垂れた。


「何故こんなことをしたのですか?」


力を使えばヴューネの過去を覗くことが時の神にはできたが、彼の口から聞いてみたくて尋ねた。


「……わかりません。気づいたら、こんなことになってしました」


ヴァイオレットはヴューネが嘘を吐いているようには見えなかったが、天使である彼が気づかないうちにこんなことになるなんてことあるのかと疑問に思う。


そんなヴァイオレットとは対照的に時の神は納得したように頷いた。


「そうですか。わかりました。ですが、これはあなたの弱さによって起きてしまったことです。自身の罪の重さはわかっていますね」


時の神は優しい口調で諭すように語りかける。


「はい。もちろんでございます」


ヴューネは絶望した顔で返事をする。


「あなたはこれから二度と天使になることはありません。人間としてずっと生きていくことになります。これからの人生では二度と愚かな間違いをしないことを願っています」


「寛大な慈悲に感謝します」


言葉とは裏腹にヴューネの表情は死んでいる。


天使として生きてきたヴューネにとって人間として生きていくのは、死よりもつらい拷問だった。


偉大な神に仕え、人間の魂を運ぶ。


特別な力もあり、空を飛ぶこともできる。


人間たちからは天使様と敬われ、神たちからは可愛がってもらえる。


そんな楽園の生活から追い出されるのだ。


自業自得とは言え、ヴューネはいっそのこと殺してくれと思った。


その方が楽でよかった。


時の神の大きな手がヴューネの頭の上に置かれる。


少し前までこの手に撫でられるのが好きだったが、もうしてもらうこともできない。


ヴューネが目を瞑り、次に目を開けた時には人間の世界に落ちていた。


美しかった金髪は色あせた濁った金髪に変わり、サファイアのように美しいかった青の瞳は汚染された海のように汚らしい黒っぽい青へと変化した。


陶器のように美しかった白い肌はザラザラとした肌へとなった。


ヴューネは死にたいと思い、何度も自殺をしたが死ぬことはできなかった。


いっそ記憶を消してくれれば生きていく気力もあったかもしれないのに、と時の神に対して持ってはいけない憎しみを抱いた。




ヴューネが人間界に堕ちたのをみたヴァイオレットは二度と会えないことを悲しく思ったが、仕方ないことだと受けいれた。


人間となったヴューネの魂は天花園に咲くのか。自分はその魂を見つけることができるのだろうか、と、ヴァイオレットはふと思った。


すぐに今思ったことを頭の片隅に避けた。


それよりも大事なことを今から話すのだから、と。


「運命の女神」


時の神に名を呼ばれる。


「はい」


「これから天花園に強力な結界をはります」


今以上の?と思うも、ヴューネの一件があったのだから当然かと受け入れる。


「わかりました」


「しばらくの間、護衛はいませんが、私が張る結界なので誰も入ることはできないので安心してください」


「わかりました」


「私は運命の女神を天花園に送り届けてきます。その間に彼らを呼んできてください」


時の神は月と死を司る神に三神を呼んでくるように命じる。


月と死を司る神は自分が送り届ける、と出かかった言葉を飲み込み「わかりました」と言って部屋から出て行った。


「では、行きましょうか」

「はい」


ヴァイオレットは時の神の手をとり、一瞬で天花園に戻った。


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