第9話 迷宮最深部
再び、
黒鉄の迷宮。
入口の前に、
王国騎士団、
ギルドの精鋭、
そして少年。
大人数だが、
誰も軽口を叩かない。
空気が重い。
扉が開く。
中は、
以前よりも
暗く感じた。
松明の光が、
壁に長い影を作る。
少年は、
一歩踏み出してから、
止まる。
「……帰りたいです」
マークが、
肩を叩く。
「帰れるように
する」
進む。
中層は、
驚くほど静かだった。
倒されたままの
瓦礫。
崩れた天井。
「俺たちが
荒らしたみたいだな」
誰も、
否定できなかった。
さらに奥へ。
大きな扉。
黒い紋様が
刻まれている。
ギレンが、
低く言う。
「最深部だ」
扉が、
ひとりでに開く。
中は、
巨大な円形空間。
中央に、
水晶の塊。
鼓動のように、
脈打っている。
「迷宮核……」
ダニエルが呟く。
その前に、
影が立つ。
人型。
だが、
目が赤い。
「侵入者」
低い声。
「我は、
迷宮の管理者」
少年は、
完全に固まった。
バルトが、
前に出る。
「交渉は可能か」
管理者は、
首を振る。
「排除のみ」
戦闘。
魔法が飛ぶ。
剣が交わる。
だが、
管理者は、
びくともしない。
少年は、
後ずさる。
足元の石に、
つまずく。
前に転ぶ。
手に、
小石が当たる。
小石が、
跳ねる。
一直線に。
水晶へ。
カチン。
小さな音。
一瞬の沈黙。
水晶に、
亀裂が走る。
管理者が、
目を見開く。
「何を……」
次の瞬間。
水晶が、
砕け散る。
光が、
溢れ出す。
迷宮が、
大きく揺れる。
ギレンが叫ぶ。
「撤退!」
少年は、
引っ張られる。
走る。
天井が、
崩れる。
だが。
少年の進む先だけ、
落ちてこない。
出口。
全員、
外へ転がり出る。
直後。
黒鉄の迷宮が、
音を立てて
崩壊した。
土煙。
沈黙。
少年は、
地面に座り込む。
「……また
転びました」
誰も、
返事ができなかった。




