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ファントム・レガリア  作者: pity


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第六話 その腹に一物あり

アリエル=ミナス=レヴナント


彼女について俺が知ることはあまりにも少ない。


それこそほぼ他人と言ってしまっても問題ないほどに何も知らない。


知っていることがあるとすればそれは一つだ。


俺の唯一の肉親であったということ。


しかし、それでさえあまり実感のないことでもあった。


そもそも本当に肉親であったのかということさえも未だに疑わしいと思っていた。


彼女が俺の肉親だったと言えるような手がかりはたった一つだけだ。


いつの間にか迷い込んでしまっていた王家の墓で拾った一通の手紙だけだ。


そこにアリエルという人物と俺が血を分けた家族であるということが書かれていた。


その手紙は多分本当のことが書かれていたんだと思っている。


なぜなら、手紙に書かれていた指示に従わなければ俺は最高刑に処されていたことは確実だからだ。


今の今まで俺が最高刑に処されていないのはその手紙のおかげといえた。


けれども、俺はその手紙の主に全く感謝などしていなかった。


おそらく、その手紙の主、つまりは姉は俺の身を案じたがゆえに助かる道を示したのではなく、俺に再起をはからせるためにこの手紙をよこしたのだ。


手紙の最後の一文を読めばそれを察することは容易いことだ。


"私たちはレガリアに呪われた。だけど、ソラリス貴方ならきっと辿り着くことが出来る。王家の墓に眠るのはレガリアにしてレガリアに非ず。王家の墓自体がレガリアだった。逃げ延びることができたのなら、失われたはずの王権(ファントム・レガリア)の手がかりを見つけなさい。それが王家の墓を暴く鍵になるはずだから。

3年後、おそらく王太子の就任パレードが開かれる。

グリムリードの手記にもパレードの夜は警備が手薄になると記されていた。



再挑戦の機会があるとすれば、きっとその日だと思う。

それまではフラエス地方のエレシアに住むフランツノイシュ夫妻を頼るといいわ。

きっと力になってくれるはずだから。

父祖の無念を貴方が晴らすことを願っています。"


手紙はそう締めくくられていた。


父祖の無念など全く心当たりがなかったが、おそらく姉はその妄執に取りつかれていたに違いない。


そうでなければ俺にもう一度王家の墓に侵入しろなどとは言わないだろう。


その後の三年間、俺はフランツノイシュ夫妻とやらを頼ることなく、細々と盗みを働きながら生計を立ててきた。


王家の墓に侵入したことがばれれば問答無用で最高刑となる身の上である。


まともな仕事になど就けるはずがなかった。働くこと自体はできても、ばれるかもしれないと思うと、どんな仕事も長続きしなかった。


かといってただの悪党になり下がるというのも、それはそれで腹立たしいものだが、そんな安いプライドで生きていけるほど世界は甘くなかった。


どうせ既に一番重い罪を背負っているのだから、盗みをはたらくことぐらいなんでもない。


そう言い聞かせるようにして、盗みなんていう最低の行いを繰り返してきた。


それがいけなかったのだろうか。俺はとうとう因縁に追いつかれて、王家の墓に侵入したということを知る相手にいつの間にか目をつけられてしまっていた。


「クソッ!」


カイルのやつにあんな大それた野望があるとは思いもしなかった。


俺とは違って最高刑を恐れもしない堂々とした眼が腹立たしくてたまらなかった。


脅されたこと自体は別に良い。所詮悪党などそんなものだからだ。


しかし、王家の墓を前にして怯みもせずに、レガリアへとたどり着けると確信した様子が俺を堪らなく苛立たせるのである。


用心深いカイルのことだ。俺の余罪は話しても、王家の墓のことは誰にも話していないことだろう。


王家の墓について口にすること自体がタブーなのだ。


それは自分が王家の墓を狙っていますと宣言するに等しい行為だ。


仮に王家の墓を狙っているのであれば、誰にもそれを狙うような素振りを見せてはいけないのである。


カイルが俺のことをどうやって突き止めたのか、見当がつきそうになかったが、それでも俺を見つけ出したのだ。逃げることで生じる危険性すら未知数に思えた。


彼の瞳の奥に狂気的なまでのレガリアへの執着を見つけたのはきっと気のせいではないだろう。


どうせあいつは利用できるだけ俺を利用して最後は殺すかどうかして俺を排除しようとするだろう。


秘密を知られた相手がいること自体急所になり得るのだから、秘密をしゃべる口もまとめて使えなくなるように始末するのが手っ取りばやい。


カイルの悪辣さはこれまでで嫌というほど見てきたし、奴がそれを躊躇わないだろうこともわかっている。


一方的に利用してやろうという魂胆を持った相手に対して裏切りという言葉を使うのも変な話だが、カイルは王家の墓場で俺への用事が済んだら速やかに裏切る心づもりだろう。


そして、もし俺が協力しないといった場合、彼の王家の墓を狙っているという秘密を守るためにどうにかして排除しようと動いてくるはずだ。


多分、俺にとっての最善の行動は、カイルと共に王家の墓に侵入し、そこでカイルを始末することだろう。


先ほどカイルが言ったように、今カイルを殺そうとしてもお仲間とやらに俺が何者であるのか、あるいは犯した盗みの数々を暴露されて終わりだ。そんなのはごめんだった。


しかし、どうにかしようにも俺の余罪とやらを知る協力者を探し出すまでにはパレードの日が来てしまうのは明確だった。


やはり王家の墓に侵入したうえでカイルと対決する以外に方法はないのだろう。


皮肉なことに、手紙に書かれた通りに俺は再び王家の墓場と侵入することになるらしかった。二度とそんな真似しようだなんて、考えてすらなかったのに。


逃げ出したはずの運命に追いつかれてしまったようで、どうにも落ち着かなかった。


手紙に書かれていたファントムレガリアとやらも、見つけ出すことはできていない。


かつては記憶を失いながらも王家の墓から逃げ帰った。しかし、逃げるための必要な代償も今度は払えるのか分からない。


手紙に書かれていたように、王家の墓は侵入者が逃げることを許さず、逃げる者には代償という名の罰を与えるらしい。


俺が記憶を一部失っているのはきっとその影響なんだろう。


一度会ったフランツノイシュ夫妻の書庫にあった王家の墓に関する資料を読ませてもらったが、逃げようとして記憶を失うことで墓への侵入者は容易く捕縛されるようだった。


俺の姉がそうしたように、事前に手紙を持たせるなどしてそれを回避する裏技もあるが、カイルがそれを知っているのかは怪しいところだ。


王家の墓に関する資料は一般的には禁書とされる区分に位置している。


所持していることがばれただけで重い罪に問われるような危険な代物である。


どうやって俺に辿り着いたのかは知らないが、その捜査能力を以てしても易々とたどり着けるような代物ではない。


それならばやはり、アドバンテージは俺にある。


また記憶を失うのは勘弁してほしいことだったが、あの疫病神から逃れることが出来るのであれば、必要経費と考えられなくもない。


俺はカイルを出し抜く作戦を考えながら夜を明かした。


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