第十三話 偵察、遭遇
街を見下ろせる高台の一角に着陸した俺は、城下の風景を一望していた。
王家の墓は王都のほとんど中心に位置している王城から見て北側に住居を払い除けるようにして堂々とそびえたっている。
墓といっても、何も知らない人からすれば遺跡のようなたたずまいであり、見る者を圧倒するほどの巨大さと、思わず跪きたくなるような荘厳さに溢れている。
あまり気は乗らないが、王家の墓に忍び込む前に一度警備の様子などを確かめておく必要があるかと思い、俺は王家の墓へと向けて飛び立った。
王城の上を飛び越えて、しばらくして王家の墓の付近へとたどり着いた。
人が住むための建造物で詰め込まれている王都の中にあるとは思えないほどに、王家の墓の周りには建物がなかった。
整地された地面には草木が生い茂り、日ごろから庭師などが整えていることが分かる。
俺は王家の墓の外周部に位置する高い外壁を超えて侵入し、その中にある大きな樹木の枝の上にとまった。
王家の墓の警備は王都にある施設の中でも厳重なものだが、警備をしている人員の殆どは外壁の外で侵入者を待ち構えるようにして配置されている。
そのためか、今俺がしているように何らかの方法で気づかれずに外壁の中へ侵入してしまえば、それほど警備の目は厳しくなかった。
とはいえ、止まり木を飛んで移動しながら様子を探る限りでは、内部の警備も決して甘くはない。
遺跡のような建造物の出入り口には武装をした兵が10人以上は控えており、また、その他の侵入経路となり得る場所にも同じくらいの人員があった。
外壁の中を巡回している警備兵もちらほらと見かける。
カラスの姿であるからこそ怪しまれていないが、今ここで仮に人間態に戻ってしまったら俺は袋のネズミになってしまうだろう。
少なくとも日中に侵入するのは絶対に無理なように思えた。
その後も俺は外壁の中で偵察を続け、一通り観察した終えたころには太陽は西へと傾きかけていた。
流石にあの遺跡の中には入れそうにないが、まだ一つだけ見ていないところが残っていた。
その建物は白く細長い塔だった。おそらく高い位置から侵入者を見つけ出すための監視塔のようなものだろう。
しかし、出入り口に警備兵が数名立っているのはどうしてなのか。
そういえば、以前王家の墓から逃げ出したときにこのような塔はあっただろうか?
あの時は早く逃げなければならないという一心のみで動いていたから一々どんな建物があるのかなんて気にしている余裕もなかったが、よくよく思い出すとこんな塔はなかったように思える。
それに、近づいてみて分かったが、明らかに建てられてからそれほどの年月は経っていないことが見て取れる。
以前王家の墓への侵入者を取り逃した反省から監視塔を新設したのだとすればそれほど不思議なことではなかったが、監視をするための塔にしては背が高いように見えた。
考えすぎにも思えたが、窓から入って中の様子を一応確かめることにした。
そして、俺は格子窓の外側の淵に降りて、その中へと容易に入り込んだ。
そのままカラスからネズミにでも変化しようとしたときに、部屋の中に人がいることに気が付いた。
「おや?態々こんなところに入り込んで来るなんて、私に何か用事かい?」
こちらに振り向くこともなく、声の主はそう言った。




