サイドストーリー:お嬢さんの気持ち
――メイは、ほんとうに、ほんとうに横暴!
お嬢さんの許可も取らないで、バケツと箒を持って部屋に入ってきて、床も窓もゴシゴシ勝手に磨いちゃった。
おかげで部屋はピカピカになっちゃったけど、あんなの頼んでない。石さんらが別石みたいだった。
でも、お嬢さんは賢いからいいことを思いついたの。
お母さんが来たときに、「これ、お嬢さんがお掃除したんだよ」って言ってお手柄にするつもり。そうすれば、お母さんはきっと褒めてくれる。
別にこれからはお嬢さんが掃除するから嘘じゃないもん!
それから、メイは不思議なものをくれた。「リンゴ」っていうんだって。
サクサクして甘くて、少しだけ酸っぱい。
……お嬢さん、あれは嫌いじゃない。
でも、メイは時々、本当にひどいことをする。
私がずっと使っている、この毛布。
洗うとか言って、奪おうとした。
ダメなのに。これは、お母さんがこの塔に来ていたころから、ずっとここにあるの。
お母さんのものは何一つ持っていない私にとって、お母さんが触ったこの毛布さんだけが、お母さんと繋がっている場所なんだから。
髪を洗おうとするのも、体を拭こうとするのも、全部いや。
メイに譲ったら、お母さんの居場所がなくなっちゃう。そういう気持ちが分からないなんて、ほんとーにダメダメ!
魔法使いになったらきっとお母さまに褒めてもらえるのに、メイは応援してくれないし、私のことを「小さい」ってバカにするし!
お嬢さんが小さいんじゃなくて、周りのものが大きすぎるだけなんだもん!
それにメイはいつも、急にやってくる。
忙しそうに、いつも、怒鳴るみたいに喋って、文句を言いながらでも毎日、必ずご飯を届けにくる。
すごく意地悪で、お母さんとは全然違うけど……。
…私はお母さんを待っているの。
お母さんを、誰よりも愛しているの。
もし、メイのことを大切だなんて思っちゃったら、それはお母さんを裏切ることになるんじゃないかな。
お母さんが読んでくれた絵本に出てきた人は、一番大切な家族というものののために、大きなお金を諦めた。
でも、それってきっと、一番じゃないものは選んでもらえない。一番じゃないものは、捨てられちゃうって事。
だからお嬢さんは、お母さんにとっての一番にならなきゃいけないの。メイもお母さんとお嬢さんが会ったときのためのお勉強をするって言ってたしそれを叶えなきゃ。
でも……。
メイは、「夕飯」を教えてくれた。おかげでお嬢さん、美味しいのを一日に二回も食べられるようになった。
それに、「毛布さんが踏まれるのが好き」なのも初めて知った。今まではあんまり踏んだことがなかったから、きっと毛布さんは悲しんでたんだと思う。メイが言わなきゃ知らなかった。これからは今までの分も、たくさん踏んで幸せにしてあげなきゃいけない。
毛布を重ねた場所は、びっくりするくらいに、ふかふかだった。
それにメイ、「一番じゃないけど、なかなか代わりがいない特別な枠」に、お嬢さんを置いてるんだって。
ふふん。さすがはお嬢さん。
それにね、メイはお嬢さんの涙に、とっても弱いの。とくべつ枠も用意してくれたし。だからそのうち、「一番」も奪えそうな気がする!
…お嬢さんはメイの事を一番にも、とくべつにもできないけど。
でも、メイを味方にして、お母さんも待つ。完璧な計画だよね。
メイ。この種、お嬢さんが持っててあげるから、欠かさずここに来なきゃダメだよ。
お嬢さんがメイの出来ない弱点をやってあげてるんだから!




