サイドストーリー:お嬢さんの願い
――きらい。別にあんなひと、きらい。
「メイ」っていうひとは、とっても嘘つき。
前の人はいつもびくびくして、お母さんは来るってしか言わない。でもお母さんの事知ってた。…なのに、あのひとは違う。
黒いローブを着ていても、隠しきれないくらいに目つきを鋭くして、ひどいことばかり言ってきた。
それで、私のことを「お嬢さん」なんて呼ぶって決めたの。お母さん以外のひとに仮であっても、とくべつなものをもらって、そんな風に呼ばれるのは、なんだか、お母さんを裏切っているみたいで、胸がざわざわする。許可したの私だけどだめだったかな?
でも、お嬢さん、あんなひとに騙されない。お母さんの事知らないらしいし。本当に役立たず。
お母さんはあんなに優しくて、あんなに綺麗なのに。
あのひとは、なんだか……何を考えているか分からない。
「いい子で待ってなさい」ってお母さんは言った。
私はお母さんのお役に立ちたいの。
お外は、お母さんがお仕事をする場所。そこには、お母さんを助けられるすごい人たちがいっぱいいるんだと思う。
私は……私は、何もできない。
お母さんのお手伝いをしたいって言った時、お母さん、悲しそうな顔で「あなたには無理よ」って言った。
だから、お嬢さんができる唯一のお手伝いは、ここで待つこと。
お嬢さんがここを動かないことが、お母さんのためになるの。
あのひとが持ってきたパン、ちょっとだけ美味しかった。
なんだか……不思議な匂いがした。
でも、そんなことで喜んじゃだめ。
それに、お母さん「次に来たときは一緒にお外に連れていってあげる」って約束してくれたんだもんね。
あのパンを手に入れられたのも、お嬢さんがパンを交換してあげただけだから…。
あんな固いの毎回、欲しがるなんて変だなっては思うけど。
お嬢さんが、利用してるの。
でも、あの人、手伝ってくれるって言ったしお嬢さん悪くない。あの嘘つきのひとに、美味しいものをもっと持ってこさせて、お母さんが来るまでお腹を空かせないようにしてもらうの。
お母さんがいつ来てもいいように、私は元気で、いい子でいなきゃいけないんだから。
それでお母さんが来たら、お母さんに言ってやるの。
「私はちゃんとお母さんを待ってたよ。あんな人のことなんて、全然気にしてなかったよ」って。




