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第十二話:食事の時間と地獄の階段

申し訳ありません。

少々、題名を変更しました。

あらすじと少し整合性を意識しました。

ご迷惑をお掛けします。

「……ん、ふふ! ……メイ! これ、あれより、ふわふわしてる! おじょうさん、このパン、みとめてあげなくもないよ!」


「なんでお前はなんだかんだ、そんなに偉そうなんだ……」


少女は初めて触れる「柔らかいパン」の感触に、本当に夢中なようだった。ちぎれば白く柔らかな中身が顔を出し、指先で押せば生き物のように跳ね返ってくる。それが楽しくてたまらないといった様子で、少女はパンをこねたり、指先で小さく丸めてみたりと、夢中で遊び始めてみている。


「おい、遊んでて落とすんじゃねえぞ。大事に食え」


フローラが釘を刺すと、少女はびくりと肩を揺らし、慌ててパンを両手でぎゅっと抱え込んだ。


「……お、落としても、食べるもん! メイ、落としたからっておじょうさんから、奪う気だったんでしょ! もうっ、メイはすぐにつけあがるんだから!『むだんもすみもない』!」


「いや、落としたら食うな。汚ねえだろ。あと、『油断も隙もない』な。常に周囲に気を配らなければならず、休まる暇がないって事で…。てか、誰がすぐにつけあがるって?」


少女はフローラに「べー」と小さく舌を出した。しかし、フローラは少女の小動物が木の実を必死に抱え込むような仕草に、口元がわずかに緩んだ。


そして、その視線はすぐに部屋の隅、外へと続く扉に向けられた。


――……ったく、問題山積みだな。


フローラは内心で深くため息をついた。


まず屋敷を出て、広大な庭園を横切り、鬱蒼とした森を抜けて転移陣へ。この距離だけでも、せっかくの温かい食事は冷め、スープはぬるくなる。




だが、真の「最難関」はその後だ。あの、狂ったような傾斜の石階段である。


一段一段が異常に高く、手すりもないあの急勾配を、五階分も登らなければならない。両手が塞がるような大きな荷物は持ち込めないし、少しでもバランスを崩せば階下まで転げ落ちて背骨が折れるのがオチだ。


――スープ一杯運ぶにしても、蓋付きの容器で尚且つ、体に括り付けるしかねえ。家具を設置しようにも、ここまで運ぶとなると、バラして小分けにして運ぶか……いや、それでもあの階段を何往復すりゃいいんだ。


フローラは改めて、ここの造りに舌打ちをした。グレンデルが造ったというならば、村人達に快適な暮らしをさせないための嫌がらせか、それともただただ設計ミスか。どちらにせよ、まともな人間が住むには不便すぎである。


「メイ? ……お顔、わるい」


不意に少女に覗き込まれ、フローラは我に返った。


「……何でもねえよ。てか、お顔わるいってなんだ。私は病人かなんかか。せめて『こわい』にしろ」


「こわいの? メイ、もしかしてお腹いたいに、なったの……?」


「ちがう。お前のこれからの『授業』のカリキュラム……予定を考えてただけだ。お嬢さんは、まずそのパンを全部食え。話はそれからだから」



――この場所を「まともな部屋」に変えてやらねえと、授業もへったくれもねえからな。



「かりきゅらむ……? ……でもわかった!メイって、お顔こわいんだね! 」


「……違うが、まあ、さっさと食え。喉にも詰まらせんなよ」


少女は眉間にしわを寄せたフローラにケラケラと笑い今度は大きな口を開けてパンを頬張った。


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