発表会
大ホールでの技術発表会が始まった
各地から招かれたギルド代表者が、魔法や発明を披露する
ノエルも今日はギルド代表だ
「なんで私が代表」
舞台袖でノエルはぶつぶつと文句を言っていた
「ノエルお姉ちゃんの魔力制御は研究員の人達も関心してたよ」
「でも、豆腐だよ?」
「……」
観客席には例年より多くの研究員が詰めかけている
魔法都市のバッジを貰った者がいる、と噂になっているらしい
その最前列には、ホワイトギルドの面々──元上司たちの姿があった
「あの人達なんで来てんの?」
ノエルが小声でシルに話す
「大手ギルドだから招待されてるんでしょう 知らなかったんですか?」
唯一助かったのは、出席者はお偉いさんだ
ノエルは上司を知っていても、アチラは受付嬢なんて覚えていないだろう
――
「次は非公式ギルド代表として、ノエル氏による魔力操作です!」
壇上に立ったノエルは、観客席を見渡して緊張感MAXになった
後ろを振り返ると、舞台袖からロゼッタとシルが親指を立てて笑っている
「……ま、いっか 豆腐行きま~す」
ノエルが魔力を集中させると、手のひらにふわりと大豆が浮かぶ
分解再構築され滑らかな豆腐へと変化していく
「まずは一丁目召喚 絹ごし」
「豆腐を16等分」
まるで目に見えないナイフが走るように、豆腐が切り分けられていく
観客席から驚きの声が上がった
「精密すぎる……」
「これは、魔力の精度という意味では前代未聞では?」
「次は2丁目【豆腐の角スキル】で硬質に強化 動くゴーレム化 木綿君」
2丁目の豆腐が召喚されるがこちらは角ばっていて固い
四隅から足が生え会場内を走り回る
裏で見ていたシルが「うわあ……」と引いている声が聞こえる
一方研究員は相変わらず大盛りあがり
「凄い小型ゴーレムだ」
「柔らかい豆腐をどうやって」
「欲しい」
――
一方、ホワイトギルドは鼻で笑っていた
「豆腐だと あんなもの買えば良いだろう」
「田舎の家庭料理魔法か?こっちは攻撃魔法を見に来たんだ」
だが数秒後、発表会担当教授が手を挙げた
「失礼 魔導都市代表として申し上げますが、その【豆腐魔法】は通常なら魔法回路が暴走するはずでは」
「──え?」
教授の一言で、場の空気が更にヒートアップ
近くの研究員同士でそれぞれ議論が始まってしまった
騒然とするホールの中、ノエルはそっと壇上を降りた
「ノエルちゃんの魔法、やっぱりすごいんだね」
ロゼッタが小声で笑う
「すごいのは豆腐なの!」
ノエルが答えると3人で笑ってしまう
「じゃあもう豆腐受付嬢ノエルだね」
「やめてよ」
ノエルはようやく肩の力を抜いた
ホワイトギルドでは一度も得られなかった『認められる』という感覚が心地良い
うちのギルド サイコーかよ




