魔法都市からの招待状
「ノエルちゃんお届け物」
いつものようにカウンターで書類と「にらめっこ」していたノエルが顔をあげる
ロゼッタがギルドまで封筒を届けに来た
表面には金で魔法陣が織られており、受取人以外は開けられない
「うわ高級感すご……なんだろこれ?」
ロゼッタがわざわざ来るのも納得の重要感がプンプンする
「一応危険物とかでは無いのは調べてある」
受取魔術印を起動すると招待状が入っていた
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魔法都市シルバーヴェイル主催
公式ギルド・非公的ギルド友好交流会
魔法技術、情報、人脈の未来を培う場として、ご出席をお待ちしております
開催日:20日〜22日(3日間)
会場:魔法都市シルバーヴェイル中央魔導塔
※交通費および滞在費はすべて負担します
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「なんか、とりあえず凄そう」
後ろから覗き込んだロゼッタがう~んと唸っている
「裏がありそうですね 魔法都市が【非公的ギルド】にも声をかけてくるとは」
「今さらですけどウチって非公式なんですか?」
「あらっ?ノエルちゃん知らなかった?」
その言葉に奥から来たマスターがふっと笑った
「魔法都市か……俺が顔出したら【外交問題】になるな」
「ええっ!マスター行かないの!」
「行かないから、お前ら行って来い」
「私とロゼッタさん?」
ノエルが視線を動かすと壁沿いにシルが立っていた
「僕も行く、魔法都市なら土地勘あるし」
マスターが頷いた
「相手の招待は【調査】の意味もある あそこは闇実験も山ほどあった過去がある」
シルの目がわずかに曇る
ノエルはそれに気づかず「魔法都市って未来都市みたいなんだって、ワクワクするね!」と目を輝かせていた
「せいぜい無事に帰ってこい」
――
「なぜノエルちゃん宛てなのか気になりますね」
「人材形成と処理能力、後は潜在魔力量辺りか?誰かが裏で情報売ってるな」
ノエルが居なくなるとマスターとロゼッタが封筒を怪しむ
引っ越しの時といい、最近はノエルを嗅ぎ回っている事件が多い
「シルを連れて行くとは思ってましたが、自分から行くと言うのは意外でしたね」
「そうだな、まぁ念のため保険は多いほうがいい」
――
屋敷の廊下
魔道灯がぽつりと灯る廊下を、ノエルは歩いていた
明日は魔法都市
言葉にできない何かが不安を掻き立てる
そんなとき、ふと曲がり角の先で人影が現れた
「ノエルちゃん眠れないの?」
「ロゼッタさん」
紅茶を手に廊下の椅子に腰掛けていた
モコモコな部屋着姿は普段とは別人のようだ
「緊張してるって顔に書いてあるわ」
「そんなにわかりやすいですか?」
ノエルが顔をムニムニしながら隣に座った
「魔法都市は、技術と謎が入り混じってる あなたは変に構えずに【表の部分】だけ見ていればいい」
ロゼッタの声には、いつもとは違う張り詰めた感じがあった
「何度か行ってるんですか?」
「2回ろくでもない仕事よ でも今回はノエルちゃんと一緒だから楽しいかもっ」
ギュッと抱きつく、プライベートだと性格違って混乱するかも~
「そろそろ寝ましょ 言って無かったけど道中は1泊野宿よ」
ロゼッタは立ち上がり、ノエルの頭を軽くぽんと叩いて部屋に戻って行った
「えぇ~!」
ノエルの声だけが静かな廊下に響く




