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新しい職場

「よし今日から新しい職場だ!」

ノエル=ナロウは胸を高鳴らせながら重厚な黒い扉を押した

新しい職場、新しい人生のスタートだ


「おはようございます」

「おう!今日からよろしく頼む」


カウンターにはマスターのセバスチャン=マスター

黒いシャツに黒いベスト、整髪料で銀髪を横に流してるダンディ

ふっと微笑むと小さな皺ができる

なかなかのイケオジだ


(この職場サイコー)

私情が漏れそうになりながら仕事内容を思い出す

仕事内容はたった1つだけ

『合言葉を言ったお客様を奥の部屋に通すこと』

──それだけ

「制服を渡しておこう」

漆黒でスリムなパンツスーツに、真紅のラインが映える

ホワイトギルド(元職場)のような、胸元がやたら開いたセクシー制服とは違う

清潔感とカッコよさがあるデザインにガッツポーズが出そうだ


「合言葉は覚えているかな?」

「はい『光ある所に闇がある』私が『ホワイトが良いのか?』と問い、相手は『闇に生きる』でOKです」

「完璧だな!酔っていたのに覚えているとは逸材を拾ったか」

うんっ褒められて伸ばす職場みたいだ サイコー


「まあ最初は簡単さ、今日は一人か二人来るくらいだと思う」

マスターはそう言って奥へ引っ込んだ


――


初勤務に胸を膨らませながらノエルはカウンターに立った

受付カウンターはシンプル

しかし、素人が見てもお金がかかってそうな美しい作り

後ろには酒棚に偽装してある鉄扉

足元のスイッチを押すと反転、その奥にギルド本部がある


お客様の秘密重視で、いざという時の守りにもなる

そのへんの冒険者ギルドにも見習わせたいような良い作りだ


装置の構造を眺めていると

ガチャ

最初のお客様がやってきた

「……」

ヤバイめっちゃ怖い


ホワイトでも見ないような大男

全身隠れるようにコートを深めに被っている

背中には人が入れそうな巨大な袋

ポタ……ポタ……赤い液体が垂れてる

(えっ……血……怪我してる?)

一瞬、固まった


男は聞き取れる限界の小声で言った

「光ある所に闇がある」

合言葉だ!

「ホワイトが良いのか?」

「ちっ……新人か 闇に生きる」

なぜか悪態をつかれた気がする


ノエルはマニュアル通り営業スマイルで迎えた

「ようこそいらっしゃいました!どうぞこちらへ」

ガコンッ

ノエルはロックを解除し秘密の部屋へ案内した

袋をゴリッと言わせながら乱暴に引きずる

男は無言で奥へと消えていった

そして扉が閉まる


「ふぅ~」

初仕事を無事に終え一息つく

まぁ機嫌悪い人も居るからこんなもんでしょう

討伐任務の報告かな~あのサイズだと上級モンスターかも

床に付いた血痕を掃除しながら、先程の冒険者のランクについて考える


――


血痕を掃除するのに1時間かかった

なかなか大量だ

気を取り直して──

ガチャ

次に入ってきたのは、街中でなかなか見ないレベルの美女

(こんな人見たこと無いな~普段どこに居るんだろう)


ぽけーっと見惚れていると

「光ある所に闇がある」

合言葉を言われた

「ホワイトが良いのか?」

「新人?ふーん、面白いね どうせすぐ消える『闇に生きる』」


はい合言葉クリア

ノエルはにこやかに案内した

「ようこそいらっしゃいました、どうぞこちらへ」


美女は「せいぜい長生きしなさい」

と声をかけながら鉄扉の奥に消えていった

「美女に心配されちゃった」

超ポジティブなノエルは声をかけられてホクホクである


――


結局仕事はそれだけだった

中に入った人が出てこなかったけど、別に出口とかあるんだろうか?

暇すぎて色々と妄想して居るとマスターが出てきた

「お疲れ様 今日の分だ」

ジャラッ

カウンターの上に硬貨が置かれる

ちゃんと給料は前の3倍


「あっ!マスター頬に血が」

思わず手で拭おうとするが、マスターの顔がブレたかと思うと無くなった

マスターが血の付いたハンカチを畳んでいる

「返り血ですかね 心配ありません」

「いっ……一瞬で」

さすがに受付嬢でも分かる

この人はAランク以上の実力者だ

まぁギルドマスターをやっているくらいだから無能よりありがたい

(有能イケオジ サイコーかよ)


また思考に沈んでいると声をかけられ現実に帰ってくる

「合言葉ですが『光ある所に闇がある』だけで通して構いません 本音と建前のようなものですね うるさい人達にはちょっと指導しておきました」

やっぱり面倒そうな反応されたのはそういう事ね

「面倒なのは、どこにでも居ますから気にしないで」

「はい分かりました!ありがとうございます」

「また明日お願いします 帰りは遅いですから、見えないですけど護衛を付けておきます」


帰り道でスキップしたくなる

ここは最高にホワイトな職場だ

良い上司、良い環境、良い給料

こんなに良いならやっぱり受付嬢はやめられない

「世の中のギルドがみんなこうなら良いのに」


屋根の上でサッと護衛がノエルについていく

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