謎の男たち
「はぁ、はぁ」
剣持は緊張がほどけたのかその場に座り込み肩で息をしていた。
――刀也さん!やったすね!!マジですごいっすよ!
「あぁ、伏見もこの力を貸してくれて本当に助かった。その…ありがとう」
――貸した…? あ、いや、それは――
伏見がなにか言いかけた時、鳥居の方から話声が聞こえてきた。
「あれ?反応はここら辺だったはずなんだけどな~」
「おいおい勘弁してくれよ、やっぱレーダーはお前に渡しとくべきじゃなかったな。晴」
「はぁ~?長尾が見てても変わらないですぅ!」
そうやって口喧嘩をしながら階段を登ってきたのは銀髪の羽織を纏った人と紺色の髪を後ろで結んで刀を二本帯刀している好青年達二人組だった。
階段を登り切ってもある程度言い合いをしていたが境内で座り込んむ剣持の存在に気づき、二人は駆け足で近寄ってきた。
「あの、大丈夫ですか!?どこかケガとかされたんですか?」
「あー、いや…大丈夫です」
なにか面倒ごとに巻き込まれそうな予感がして言葉を濁らせたがもちろん見逃してくれるわけもなく、
「いや、全然大丈夫そうには見えないけど!?かなり体力を消耗してるように見えるけど…目立った外傷は無しか」
銀髪の方がずっと剣持を気に掛ける横で紺色髪の人が辺りの荒れている様子を見たからなのか質問をしてきた。
「いきなりですみませんが、このあたりでなんか化け物みたいなのみませんでした?なんか争いがあった形跡してるんですよね」
「長尾!今はそんなの聞いてる状況じゃないだろ?これだからノンデリは…」
「はぁ?この状況みれば質問するに決まって――」
「あの!」
二人の口喧嘩が盛り上がりそうになるところを剣持が割って入った。
「その化け物…クヲンっていうんでしたっけ?それならさっき二体倒しましたよ」
二人の動きが止まった。
「「…は?」」
剣持は呆然として口をポカーンと開けている二人にさっきまで起きていた出来事を説明した。
「君!それ才能の塊だよ!!うちに来ない?っていうか自己紹介がまだだったね、どうもANYCOLAR所属・甲斐田晴です」
「同じく長尾景です。いや、そんなことより神の力を使えるって…」
甲斐田と名乗る人物に手を無理矢理とられてブンブン振られているときにふと難しそうな顔をする長尾が見えて剣持は慌てて誤解を解いた。
「あー、違いますよ?神の力っていっても貸してもらっただけですから今後使えるようなことは…」
甲斐田が期待外れとでもいうかのように、シュンとして明らかにテンションが下がったように見えた。
――あのーそのことなんですけど…
と、剣持が二人に説明している途中で申し訳なさそうな声が脳内からした。
――なんかですねー本当にこんなはずじゃなかったんですけど今実は俺が完全に刀也さんに憑依した状態になってまして…
「…つまり?」
――俺の意思じゃ離れられないといいますか…方法もわからないといいますか…
「…というと?」
――解決方法分かるまでこのままってことっすね!
「なんっでだよ!!」
怒りでつい大声が出てしまった剣持を不思議そうに見る二人。
「ど、どうした?やっぱり戦闘中に頭でも打っんじゃないのか?」
こんなやり取りを見られて心配されるのも恥ずかしくなってきたので、剣持はハァとため息を吐くと、
「いや、なんか僕に力を貸してくれたろくでもない神によると、現状僕に完全に憑依しているせいで当分は僕がその力を使えるようになるみたいで――」
そう言い終わる前に両腕を二人に掴まれた。
「すまないが、こんな逸材は放って置けないなー」
「とりあえず一旦事務所行きだな」
そういうと二人は有無を言わさず剣持を頭の上で担ぎ始めて階段を降り始めたのだった。