運命の再開
学校を出てすぐにいつもの帰り道とは違う道に向かった。
普段は行かないこっちの方面にあるのは、かなりの大きさの森とその奥にある一つの神社だ。そして剣持の要件はそこにあった。
学校から少し歩くと森の入り口にはすぐ着いた。この森は全く人が寄り付かないことで有名だった、その原因の一つがこの入口の看板だった。『狂暴な動物に注意を』と大きな赤字で書かれているが人を寄せ付かせないだけの十分な牽制材料になっていた。
剣持はそれに見向きもせずに森の中に進んでいった。
――おかしい。森から動物の気配が――しない。毎年この森にきているがこの時期なら動物の鳴き声やら走る音なんかでにぎわってるはずなのに…。
異様な空気に覆われた森を静かに見つめていると、いつのまにか顔を伝っていた汗に気づいてそれをぬぐった。剣持はふぅと一息つくと背中にある竹刀を背負い直して森の中に足を進めていった。
――そんな些細な変化を気にしているようじゃ僕の罪は償えない。
森に足を踏み入れていく剣持の表情は少し険しくなっていた。
森の中を歩いて数分がたつと開けたところに鳥居が見えてきた。
そこには「二指伏見大社」と書かれていた。
「一年ぶりだ、な」
感傷に浸る間もなく鳥居をくぐっていき境内に着くと、カバンの中からお供え物の米や酒などを取り出し最後にあいつへの贈り物であるカレーパンを取り出して神棚の上に置いて、
パンッパンッとしっかり二礼二拍手をして
――神様。毎年失礼を承知でお願いしますどうかこのパンを、あいつの大好物だったこの…
「あれ?今年はカレーパンじゃないっすか!いや~刀也さんも分かってるっすね~」
その時、剣持の耳には絶対届くはずのない声が聞こえてきた。
剣持も一瞬幻聴が聞こえたのかと辺りを見回すがそこにはあの子がいたのだ。
「…………は??」
「…ん?――あれ?」
そう剣持刀也の目の前にはまぎれもなく子供の時に目の前で死んだはずの友人、伏見ガクがそれもしっかり成長した姿で宙に浮いている彼がいたのだ。
「え?とう…やさん?俺と目が合ってるよね??」
「あ、あれ?」
さすがにいつも冷静な剣持も動揺を隠せず目をなんどもこすったり何度も自分の頬をつねる始末だ。
「い、い、いやったーーーーー!!!!」
手を広げて叫ぶと伏見らしき人物?いや人と呼ぶにも怪しい奴がこっちへ飛んできた。
「ちょ、ちょと」
「やっとっすよ!やっと俺の姿を刀也さんに見せることができる、これも全部刀也さんのおかげっすよ!!」
剣持は肩を掴んで大喜びする伏見を引っぺがして頭を抱えた。
「お、おい!どういうことだよ。ってか本当にあの伏見なの、か?なんなんだこれ…」
「な~に言ってんすか!正真正銘の伏見ガクっすよ!…まー少し変わったことといえば本物の神様になったことぐらいっすかね?」
ふふーん。と自慢げに鼻の下を指でこする伏見を魂が半分抜けた状態で見つめる剣持。
――もう何がなんだか…
「まー混乱するのも無理はないっすよ、なんてったって刀也さんが毎年お参りしてくれたからこそ俺の力はみるみる戻っていったんですから」
そういってもう話声も聞こえてなさそうな剣持を置き去りに伏見は事情を説明し始めた。