剣持刀也の日常1
このライバーはこんな事言わない!という意見非常に理解していますがこちらも試行錯誤の上なので解釈違いはご了承ください。
この作品に出てくるライバー達はすべて本物とは別物と考えていただけると幸いです。
夢を見ていた。
またあの時の夢だ。
あの子と追いかけっこをしている夢だ。
でもその差はどんどん開いていく。
――その先は危険だよ!行っちゃだめだ!!
そう何度も大声で叫んでもその子は耳を貸してくれる様子も無く、勢いは止まらずついには崖に――
「――い。おい!起きなさい!!」
「――んぁ?」
なんとも情けない声で起きた彼、剣持刀也が目をこすって机から起きると目の前には鬼の形相をした高身長教師が立っていた。
「オ、オリバー先生!いや~本日はお日柄もよく…」
「やあ、剣持君。お昼寝は気持ちよかったかな?」
優しげな言葉とは裏腹にその顔が先生の心情を表していた。
「私の授業で寝るなんてなかなか度胸があるじゃないか」
オリバー先生は普段は優しい好青年英語教師だが怒ると堅気の者とは思えない雰囲気になると学校で噂されるほど怖い先生なのだ。
――まずい…このままじゃ地獄の説教コースは確定。かくなる上は…
「本当に申し訳ございませんでした!」
精神誠意の謝罪のみ。勢いよく頭をおろして謝る姿を見たオリバー先生は一瞬ふぅと息を吐いて、
「よろしい。次はありませんからね」
そう言うと教壇の方へと戻っていった。
説教コースから逃れて安心してほっとしていると隣の席からクスクスと笑い声が聞こえてきた。
「プッ!起きた時の声聞きました?ンァ?って」
横を見るとピンク髪の女子が口を押さえながら大笑いしているのが見えた。
「夕陽…」
夕陽リリ、彼女は何か事あるごとに剣持をバカにしてはよくお互いにいがみ合っている女子だ。
「でもそうですよね、優秀で勤勉な剣持君も昼寝しちゃうときだってありますよね…ブフッ!」
夕陽にとって剣持を煽るという行為は至福の時、だんだん舌もノッてきたのか続けて煽ろうとすると、
「そうですね。その勤勉さのおかげでこの間のテストは夕陽さんより大分いい点とれましたけどね?」
剣持も間髪入れずに煽り返した。「言い返してやったぞ」と言わんばかりに鼻で笑いながら夕陽の顔色を窺おうとするもすぐに真顔になった。そう、夕陽から笑みが消えていたのだ。いや、実際は口角は上がっているのだがこちらを見る目が一切笑っていなかった。
「へーなんですか?自慢ですか?いいですねお昼寝太郎さんはご身分が高くて――」
またいつものいがみ合いが始まるかというところで前に席の子が振り返ってきた。
「ちょっと!二人とも静かにしなよ~またオリバー先生怒っちゃうってば~」
そう小声で注意をされるとおとなしく二人は口を閉じた。
「二人とも仲良くに、でしょ!」
「わかったよ家長、ごめんな」
頬を膨らませて怒る彼女を見て面倒くさくなったのか口だけの誠意を見せる夕陽。
「も~リリちゃんはそんな適当に謝って絶対反省してないんだから~」
謝られた彼女、家長むぎはそう言葉では言ったものの、その夕陽を見る表情はデレデレのにやけ顔だったのだ。
そう何を隠そう家長は夕陽のことが大好きなのだ。
――はぁ、関わるだけで疲れるはこいつら。
こうしていつもの日常の光景に呆れた剣持が息をつくのと同時に授業終了のチャイムが教室に鳴り響いた。