LV1勇者「悪の天才と言われる大魔王か! 僕に倒せるだろうか?」
神託を受けた。悪の限りを尽くす大魔王を倒す勇者はお前だと。
神からの贈り物に『魔法のタブレット』これを見ると、自分の状態が分かるらしい。
「なるほど僕はレベル1か。まずは周辺のモンスターを倒してレベルを上げればいいんだな?」
僕が武器を携えて城を出ると、おあつらえ向きにモンスターの登場だった。
◇
「はあはあはあ」
数時間後、目の前に転がる敵の亡骸を見ていた。勇者となってすぐこんな強敵とやりあうとは。
全身には激痛。二度と相手にしたくないタイプのモンスターだった。
「苦労した敵なんだから、経験値も多いだろう。レベル爆上がりかな?」
すぐさま自分の状態をチェックできる、魔法のタブレットを覗いて見ることにした。ワクワクが止まらない。
なにせ苦労したモンスターだ。こっちはわずかな回復魔法しか使えない、仲間もいない。だが敵はえげつない魔法にブレス攻撃。二回連続攻撃がデフォルト。あまつさえ、変身して戦闘力まで爆上げしてきた。
戦闘が終わって僕の魔法エネルギーは空だし、体力もギリギリ。そんな敵だったんだからもちろん経験値も高いよな?
タブレットを確認。しかし経験値は0。再度見ても0。目を細めて見たら8に見えたけどやっぱり0。
「なにいー!」
そんな馬鹿な話があってたまるか? 僕の全力をぶつけた相手が経験値0?
これじゃこれより強くて経験値を持ってる相手となんて、戦えないぞ?
僕は息も絶え絶えに城に入り、傷を回復させようと宿屋に行くと主人が、「あなたこそ誠の勇者です」というだけで泊めてくれない。
仕方がないので、裏路地で野宿した。その時、夢に神様が現れて「よくやった」とか「もう戦わなくてもよい」とか言われたが、もう解雇宣言なんて酷すぎる。たった一度の戦闘で全てを判断しないで~。
次の日、なんとか神様の信頼を挽回するため、レベルを上げようと城の外にでたものの、モンスターの影の形もない。これじゃレベルが上げられないし、強くなきゃ大魔王と戦えるワケがない。
頭を抱えた。これが悪の天才、大魔王の策略なら完全にはまった。彼は軍勢を引っ込めて僕を強くならせない。その影で悪の限りを尽くすのだろう。さすが大魔王!
◇
その頃の神様は平和になった地上を眺めて笑顔になる。
「大魔王が旅に出たばかりの勇者に戦いを挑むとは考えていなかった。しかしあの勇者はそれ以上に強かった。彼には平和の中で、英雄と讃えられながら暮らして欲しいもんだ」と呟いた。