ヲタッキーズ97 怨霊病棟
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第97話"怨霊病棟"。さて、今回は怨霊病棟と噂の現場でヒロインの親友が死体で発見されます。
天和の大火(1683年)まで遡る怨霊の仕業?秋葉原が怯える中、抗ガン剤の治験との関連が浮上、美貌の院長に魔の手が…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 異常気象の夜
夏の終わりに雷鳴が轟く。
終日降り止まない雨。明らかに異常気象だ。その雨の中に濡れ立つ白い病院。窓は閉まり人の気配皆無。廃病院なのか?
「…誰?誰なの?」
暗い廊下を、点滴スタンドを押しながら歩く患者女子。
背後に人の気配。怯えながら振り向くが、誰もいない。
「気のせい?」
その時、締め切った窓のカーテンがはためく。
怪しい物音がして闇の中へ引きずり込まれる←
聖マリア像の顔に血飛沫w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「夏の終わりの嵐。何処か切ないですね」
「夏休みの自由研究、やり残した口?ところで、このタワマン、まさか雨漏りしないょね?」
「超リアルな返し、ありがとうございます」←
僕の推しミユリさんがメイド長を務める御屋敷は、秋葉原駅に近い超高層タワーの最上階にある。
いつもは、関東平野の形がわかる抜群の夜景ナンだが、今宵は闇から降る豪雨が窓に叩きつける。
「今回の休暇は、ズッとアキバでお過ごしですょね?明日の夜ですが、コレだとトラッドだしハズさないかなって」
「紺ブレ?七五三以来だ…で、明日の夜って何だっけ?」
「…忘れてるの?!」
カウンターの中のミユリさんは、アキバで美し過ぎるメイドNo.1だと常日頃よりホレボレしてるが…突如般若の化身に…
「わ、わ、忘れてナイけど…何だっけ?」←
「"fSFコンファレンス"。私とお出掛けスルって約束したでしょ?!まさか…お・わ・す・れ?」
「ま・さ・か。そ、そ、そうだった!明日の夜だった。楽しみだなー。紺ブレ、thank you。七五三…」
「シナリオ理論のパネルディスカッションがあるのです。プロ作家の見識に触れれば、テリィ様の作家としての視野も広がると思うのです」
「そ、そ、そうだね!…で、スゴい雨だけど、雨天中止とか?」
「屋内です」
気まずい沈黙を破りミユリさんのスマホが鳴るw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
空は明るくなったが、未だ激しい雨は降り続く。
「ジェニ・ティト、32才。ガン病棟が改修工事中で、隣の病棟で化学療法を受けてた。3時45分、ナースが点滴を交換。6時45分の巡回時に死体を発見。恐らく死亡直後」
「ジェニは、工事中のガン病棟で何をしていたの?」
「適度な運動による治療効果の向上を図っていたに違いナイ。最近の学会誌に論文が載ってた」
口から出任せで。話題を撹乱スル僕。
現場を仕切るラギィ警部は僕を無視。
「目撃者はゼロ。死因は…見ての通り、工事中で剥き出しになってた鉄骨に串刺しナンだけど、詳しくは司法解剖を待って。因みに"blood type RED"。彼女は、スーパーヒロインじゃないけど、確かミユリの…」
「ありがとう、ラギィ。古い友人ょ」
「死体の横に白いバラが落ちてた。ジェニ・ティトの病室とバラの入手先から調べてみるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
所轄の万世橋警察署に捜査本部が立ち上がる。
「ミユリ。ジェニ・ティトの病室に薔薇はなかったわ」
「やっぱり?ラギィ、他の病室も?」
「ない。あの白バラ、いったい何処から現れたのかしら」
美女2人は頭をヒネり、僕は遅刻して玄関に駆け込む←
「ボタンを押してドアを閉めろ!早く!奴が来る!」
「え。どーしたんだ、テリィたん、誰?前話でやっつけたゾンビの逆襲?」
「来た!」
僕が指差す先に、濡れた長髪に顔が隠れた、黒革の上下を着込んだ怪しい人影が不規則なゾンビ歩き?でうごめいてるw
「おーい待ってくれぇ。乗せて…」
ゾンビが金属探知ゲートでモタつく間に"閉"を連打スル!
「ごめんなー」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィたん、地下ライブに誘われて逃げてる?」
「YES。この前ナンか変な動画を見せられたンだけど、奴のアパートには剥製だらけナンだぜ?」
「剥製?」
"奴"を締め出した万世橋のエレベーターの中で質問責めw
「YES。ソレもハツカネズミだ。名前は"聖キルダ"」
「そ、そっか。でも、最近はドール男子ナンて普通だし…アキバじゃ特に変わってるとは言えないカモ」
「ソレが…剥製に女装させてんだょな。スク水、バニー、彼シャツ…」
ココで爆弾投下!
「しかも奴自身は黒革の…タイトなミニスカで」
「…アキバじゃギリギリ普通だろ?」
「でも、僕の分まで用意してあったんだょ!」
エレベーターのドアが開くと美女2人が乗って来るw
「あら、テリィ様」
「病院の事件で情報提供者が来てる。テリィたんも会う?」
「ふーん面談室?」
「大雨で浸水したので取調室だけど」
ラギィが名刺を見せてくれる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「サマサ・キスパさん、こんにちは。警部のラギィです。コチラはSATOのミユリ…」
取調室に入ると、髪をオレンジとグリーンに染め分けたアラフォーオバさんがマジックミラーの向こうを凝視しているw
「あ、ごめんなさい。向こうが見えるかと思って…廃病院で
殺人事件と聞いたけど、被害者は患者なの?死体の発見場所と様子は?落とされたの?」
「…被害者のお知り合いですか?」
「え?赤の他人ょ。何で?」
厄介そうなオバさんだ。因みにSATOはアキバに開いた"リアルの裂け目"に対処スル首相官邸直属の防衛組織。
僕がCEOを務め、ミユリさんが率いるスーパーヒロイン集団"ヲタッキーズ"はSATO傘下の民間軍事会社だ。
万世橋との合同捜査はしょっちゅうw
「この事件に興味が?」
「失礼。つい興奮しちゃって。私は"fSF"の会員ょ。年次総会に出席する途中で立ち寄った」
「エフエスエム?」
「YES。"女流SF作家"のコトょ」
そーだったのか!てっきり"fSM"は女同士のSMかと…
「貴女、SF作家なの?」
「YES。ソレでオカルト事件の話を聞きに来たの。ところで…」
「なるほど。話は以上ですね?では、表まで署員がお送りします」
脱力感に襲われ、追い出しにかかるラギィ。
「待って!私は捜査の力になれるわ。も少し事件の詳細を教えてくれる?」
「いいえ。でも、捜査の力になれるとは?」
「犯人が分かるの」
霊能者?
「なぜ犯人がわかるの?」
「彼女は串刺しナンでしょ?そして、現場には白いバラが置かれてた」
「だから?」
その先を聞き、疲労感はMAXに達する←
「犯人は亡霊ょ…あの"八百屋セブン"が蘇った」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
終日、夕立ちのような雨が降り続く。
「あの病院、最近リニューアルして"外神田ER"を名乗ってるけど、実は江戸時代から続く町医者だった。いくつもの無念の死を見届け、怨霊に呪われてるワケ」
「そーdeathか。で、犯人の怨霊は何人殺してるの?」
「わからない。又聞きだから…実は、又聞きの又聞きなの。串刺しの状態で発見された医者もいたらしいわ」
熱心に語るサマサ。シラける僕達←
「錯綜スル複数の殺人、幽霊を思わせる殺人犯。海外ドラマの夏シーズンではお約束の展開だわ」
「でも、偶然にしては出来過ぎだとは思わない?」
「ま、後は警察で調べますので。御協力ありがとうございました」
ところが、サマサは粘るw
「もっと御協力しちゃう。江戸時代からの古文書が眠る病院の書庫に手がかりがアル。でも、調べたいけど"外神田ER"は、SF作家じゃ書庫に入れてくれないのょ」
「ソレを警察に調べて欲しいと?」
「そーゆーコト」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
粘るサマサの事情聴取を若手に任せ、捜査本部に退散w
「ジェニは、池袋時代からのメイド仲間でした。アキバに移って自分の御屋敷を持ち、メイド長をやってましたが、半年前から病気を理由に休んでて」
「TOは?」
「チルズ。池袋時代からの推しで、現場でも人望のアル真面目なヲタクだったと聞いてます」
被害者情報をミユリさんと共有中に刑事が割り込む。
「警部。事件現場の"外神田ER"ですが、特に脅迫されたり、院内での暴力沙汰もないようです。目下、職員を調べています」
「続けて。化学療法中の他の患者も調べて頂戴」
「わかりました」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
監察医から検視結果が報告される。
「ジェニ・ティトのガン治療は奏効し、小康状態を保っていました。でも、最近になって抗ガン剤の組み合わせを変えています」
「ソレが死因?」
「いいえ。抗ガン剤の血中濃度は致死量以下でした。性的暴行の痕もなく、外傷は鉄骨の上に落下して出来たモノです」
胸を貫く鉄骨を思い出し、ゾッとスル。
「大量の出血がありましたが、死因は溺死です。肺動脈を貫かれ血が肺に溜まった結果です」
「では、事故なの?」
「意識障害を伴う、新しいタイプの抗ガン剤なので可能性は否定出来ません。でも、この画像を見てください。出血は伴わないモノの、手に無数の小さな傷があります」
捜査本部のモニターに小さい傷が無数についた手の画像。
「現場に落ちてた白いバラに因る傷かしら」
「恐らく」
「死後に犯人が薔薇を握らせてる。この事件は、事故でも幽霊でもないわ。誰かが彼女を殺した」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部のギャレーで飲むコーヒーが大好きだ。
あのパーコレーターで煮詰めた味が良いンだな。
「テリィたん?私、サマサ・キスパ。アキバ工科大学卒の理数系SF作家。最近"銭形平次が銀河を股にかけるのは間違いだろうか"がアニメ化された。因みに、巨乳(ミユリさんよりw)」
ホントだ…いきなりステーキ、じゃなくて、イキナリ握手←
「存じてます。はじめまして」
「会いたかったわ、テリィたん。良ければお茶でもどう?」
「もう飲んでます」
サマサは、巨乳を故意にプルプル揺らしてるよーに見えるw
「いいの忙しいわょね。テリィたんのデビュー作"メトロキャプテンV"を読んだわ」
「ホントに?!」
「巨乳ウソつかない。他の分野も描いたら?いつまでも"executive story editor"じゃMOTTAINAIわ。男なら"writer"でしょ?私が読みたいって言えば長編SFを描いてくれる?」
ヤタラ先輩風を吹かせる"上から目線"が実に不快。でも…
「実は、短編でSF執筆を勉強してルンだ!」←
「素敵!"fSFライター"の年次総会、いらっしゃルンでしょ?会場で会えそうね。お話ししない?作品も読みたいわ」
「喜んで」
すると、サマサは巨乳をプルプル揺らして微笑む←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
サマサと話し心がピンクに染まったトコロで、ラギィ警部と"外神田ER"まで事情聴取に逝く。リデル院長とは旧知。
「犯人は、血塗られた病院の歴史を利用してる」
「そーか…」
「え。どーしたの、テリィたん。何か目が泳いでるけど」
院内エレベーターの中でラギィの鋭い指摘←
「今回の事件の解決には、明確な死生観を持つコトが必要だ。死の先には何がアルのだろう」
「(何なのイキナリ?)この仕事をしてればワカルわ。必要以上にね。肉体は滅んでも魂は生きている。そう信じたくなる気持ちはワカル」
「(げ!マジに反応?)おいおい、カルト信仰かょ?まさか前シリーズの"洪水教"に入信してるとか?」
「実は、日曜日のホコ天で、死んだ元カレを見かけたコトがアルのょ」←
「ソレは…無差別殺傷事件で失われた魂じゃナイか?誰もが存在を感じたコトはアルょ」
僕とラギィは、同時に溜め息をつく。
「寂しいね」
「そうだな」
エレベーターが止まり、ゆっくりドアが開く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィたん、久しぶり。ジェニ・ティトは、抗ガン剤の治療プログラムに参加していたの」
「小康状態だったンだって?」
「初めて成功したの。こんなコトが起きて、とても残念だわ」
"外神田ER"病院管理者リデル・アイリ。彼女はアキバのヲタクなら誰もが1度はお世話になってる救急病院の院長。
「リデル院長。コレは事故ではなくて、殺人事件なの」
「殺人?ソレ、ホントなの?ラギィ警部」
「残念だけどYES。何か心当たりは?」
リデルは、明らかに狼狽スル。
「いいえ。事故だと思ってたから」
「カルテ、防犯記録、職員名簿を見せてもらうけど」
「モチロンどーぞ。法務部に連絡しておくわ」
ラギィは手慣れた手順で話を進める。
「ついでに審理中の訴訟や病院への脅迫についても確認したいの。復讐されるような要素があるかどうか」
「わかった。病院側に何か問題がアルのかしら」
「ソレは…」
口ごもるラギィ。僕の出番だ。
「"八百屋セブン"についても教えて欲しいんだ」
「…父から聞いたコトがアルわ」
「お父様は?」
「もう亡くなった。江戸時代から続く怨霊の話ょね?最後に"出た"のは、秋葉原の駅前に神田青果市場があった頃って聞いてる」
え。ソンな最近"出た"の?
「ねぇねぇテリィたん。お願い、慎重にね?病院が潰れちゃうわ。せっかくリニューアルしたばかりなのに」
「怨霊の話で?」
「だから、その"怨霊"はヤメて。秋葉原駅前に市場があった頃、その話で病院が倒産しかけたコトがあるの。父が院長だった頃の話だけど…ほら、駅前の市場って、野菜市場だったでしょ?」
「バブルの前の話だろ?」
「あのね。人は、病気にかかれば病院に来るけど、怨霊が出たら来なくなる。ソレでも来るのはヲタクだけ。そーしたらウチは病院を廃業してお化け屋敷に業態変更ょ。だから、何でも協力スルから"八百屋セブン"の噂、この際キレイさっぱりナシにして欲しいの。お願いょ!」
その時、彼女のスマホが鳴る。
「はい。リデル」
彼女は送話口を抑えて困惑顔w
「テリィたん、例の現場から悲鳴が聞こえたらしいわ。ウチの警備員は近寄りたくないって」
「ガン病棟は出て右?」
「YES」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
雷鳴の中、(ラギィがw)音波銃を構えて踏み込む。
「あぁ最悪だわ」
白衣の男が倒れている。
血染めの胸に白いバラ。
第2章 八百屋セブン
昼が過ぎてなお、アキバの雨は降り止まない。
「ラゼル・モガン。死体は、ジェニの主治医だった」
「もっと楽な方法で殺せば良いのに。何でいちいちスリラー仕立てにスルの?」
「怨霊がやったように見せかけるたいんだ。マニアの犯行だな」
捜査本部に戻って議論再開だ。
「怨霊ナンていないわ。病院か院長か、どちらかに復讐したい奴の仕業に決まってる」
「警部。"外神田ER"のガン病棟の改修工事ですが3ヶ月遅れてるそーです。建設業者は、遅延の罰金が科されるカモとヒヤヒヤだとか」
「そっか!ソレが、殺人事件の捜査による遅延なら延滞金を支払う義務が免除されるとか?契約を調べて」
刑事達が雨の中、飛び出して逝く。
「ソレから訴訟の調査はスピアに頼みましょう。ルイナ、良いかしら」
「OK…ってか私も何かやってみる」
「医療ミスの線もアル。ヲタッキーズの2人は、被害者の2人を当たって」
ルイナは、車椅子の超天才で会議アプリで捜査会議に参戦している。スピアはルイナの相棒のハッカーだ。
ヲタッキーズの2人とは、妖精担当のエアリとロケットガールのマリレ。2人共メイドだがエアリのTOは…
「テリィたん、ブルスと仲良くして」
「え。してるょ!ダチ公さ。だって、奴はエアリのTOじゃないか。わっはっは」←
「じゃ遊んであげて。逃げないで」
無理だ…話題転換!
「ねぇサマサをどう思う?」
「女流SF作家の?怨霊殺人がホントなら自分の本の宣伝になるわ。実は怪しいと思ってる」
「おいおいエアリ。自分で殺しておいて、ワザワザ怨霊の話をしに万世橋に来るか?」
僕の冷静沈着な思考にエアリは感銘を受けたようだ。
「ソ、ソレは…怨霊にでも命じられたか、想像以上に頭がお花畑なのか」
「あのさ。秋田発7時半に末広町駅着の地下鉄リニア特急で上京してルンだぜ?コレがウソなら相当のバカだ」
「テリィたんは、あくまで巨乳の肩を持つのね」
え。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
監察医がラゼル・モガンの検視結果を報告スル。
「首の注射痕から"外神田ER"が治験中の新しいタイプの抗ガン剤が検出されました。被害者は、注射直後に心停止したモノと思われます」
「その抗ガン剤は誰が入手出来るの?」
「"外神田ER"に確認中」
ココで捜査本部に外線着信。
「テリィたん!外線2番…女の人」←
何だソレ?高校生の学寮か?
「ミユリ姉様。きっと女流SF作家だわ。スゴい巨乳で、テリィたんは胸ばかりジィーっと音がスルぐらい見てた」←
「まぁ!テリィたんって不潔!」
「待って、マリレ。きっとテリィ様はホンキじゃ無いわ。小説のネタを探してるのょ」
「姉様、甘いカモ。だって、あの作家は…」
「巨乳?」
「私達よりね。しかし、スーパーヒロインより巨乳ってどーなの?」
「とにかく!ヘンだから。ミユリ姉様、何か裏がアルわ」
「そうね。気をつけるわ」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
雨のアキバ。マチガイダ・サンドウィッチズ。
「テリィたん、気に入ったわ!」
「そ、そーかな。ダメなトコロはぶって。直すから」←
「ないわ。コレほど完璧な短編草稿は初めてょ」
「ホント?」
オゴリのチリドックを頬張りながら断言するサマサ。
「of course yes。もっと長いのを描いたら?長編小説とか」
「実は描いてる」
「じゃ私の編集者を紹介するわ」
わぁ夢のよーだ!
「テリィたんの文壇デビューを祝って、お友達にもデザートだ!」
「うわ!フォンダンショコラ?!ヴィンテージポートかしら?」
「まぁ昨日の売れ残りだからヴィンテージだ」←
正義の味方YUI店長も応援してくれてる!
「YUI店長!コチラ、SF作家のサマサ・キスパさんだ。サマサさんは"fSFライターコンファレンス"に出席されるンだ!」
「はじめまして、店長さん」
「ようこそ、秋葉原へ」
握手スル。
「センセもモノ描き?」
「YES。最近"銭形平次が銀河を股にかけるのは間違いだろうか"がアニメ化されたわ!」
「(知らねぇなw)テリィたんも描き溜めてルンだ。じゃごゆっくり…」
YUI店長は引っ込む(サマサの谷間に視線を落としたママw)。
「テリィたん。アナタって、いつもソンなに謙遜スルの?」
「時々さwところで、貴女の作品は作り込みが細かくて素晴らしい。いつもどうやってるの?」
「リサーチ、リサーチ、リサーチょ。ただただ綿密に調査しまくるのみ。現地に足を運び、その世界に浸り、その対象について徹底的に調べるの」
なるほど。少し探りを入れてみる。
「まさに作家の裏話だな…"八百屋セブン"とかも?」
「え。ヤーダ、あの怨霊話はウソ。何か起こると、一般人は、直ぐ幽霊や怨霊と結びつけたがる。どうしてかしら」
「答えがわからない方が良いのにね」
「あぁ!テリィたんの長編SF小説が楽しみだわ!」
乾杯する僕とサマサ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋の捜査本部。
「ガン病棟の改築業者の線はどーだった?」
「警部、違いました。如何なる理由でも延滞金は払う契約になっています」
「そう…まぁソレが普通カモねwサマサのウラは取れたかしら?」
「犯行時刻に地下鉄リニア特急に乗車してました。車掌を含む複数の目撃証言がアリます」
ラギィは、長い溜め息をつく。
「テリィたんが心配してたから伝えなきゃ。恐らく彼女は…シロだわ」
ココでラギィのスマホが鳴動。
「ルイナ?何かわかったの?」
第3章 TOの品格
"南秋葉原条約機構"の司令部は、パーツ通りの、とある地下ゲーセンの、そのまた地下深くに秘密裡に作られ、日夜"リアルの裂け目"から降臨スル脅威に敢然と挑戦してイル。
ルイナのラボはSATO司令部に併設。
「ラギィ。"外神田ER"が過去5年間に訴えられた訴訟について調べてみたの」
「ソレで?」
「やっとテリィたん好みの展開になって来たわ。じゃ詳しくはスピアから」
アプリの画面は、車椅子にゴスロリのルイナから、彼女の相棒でジャージ姿のストリート系ハッカー、スピアに代わる。
スピアのトレードマークはスク水で恐らくジャージの下は…
「訴訟の多くは、医療保険や病院食など、良くある不満ばかりだった。恨みや脅迫系は無し」
「で、貴女達の大発見は?」
「コレょ。ジェニ・ティトとラゼル・モガンが殺された理由は不明だけど、ココ数ヶ月間、2人は頻繁に連絡をとっていたの」
2人の通話記録が画面にUP。恐らくスピアのハッキングw
「患者と主治医だモノ。ある意味、当然では?」
「最初は、そう思った。でも、ジェニのTOチェルは、全くラゼル医師とは没交渉なの。ジェニが殺される夜まで」
「そりゃジェニのプライバシーだから」
ココでラギィはスピアに説教されるw
「あのね。アラサーを過ぎた推しとヲタの間には、プライバシーなんかナイの。テリィたんとミユリ姉様が悪い、じゃなかった、良い見本でしょ?」
「ゴメン。心の底から納得したわ」
「でね?も1つ。もしかしたら、ジェニのTOチェルは、この事実に気づいていたのカモしれない」
今度は宿泊施設の名簿?みたいなモノが画面にUP。
「3ヶ月前のデータょ。ある日の宿泊データにDr.ラゼルとジェニT。別の日にはRモガンとJティト。同じ日に宿泊してるのは偶然かソレとも…」
「やれやれ。今後の参考のために聞いとくけど、ラブホの名前は?」
「"秋葉原ブルーエンペラー"。最近、巷では"TOチェンジ"のメッカとか呼ばれてる」←
ラギィは溜め息をつく。
「コレは"TOチェンジ"や"推し変"じゃ無いわ。立派な"不倫"ね」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その日の内に被害者のTOチャルは万世橋に出頭スル。
「さぁ質問に答えてもらうわょ」
「そのつもりだ」
「ズバリ"推し"の"不倫"をいつ知ったの?」
ラギィ警部は、真正面から挑むような視線を放つ。
「"不倫"?何のコトだ?」
「気づいてたンでしょ?」
「何を言ってルンだ?"推し"は末期ガンだったンだぞ?」
チャルは、あくまで穏やかに切り返す。
「関係ナイわ!あの夜、アナタは何処にいたの?」
「自宅だ。制服警官が押し掛けて来て"推し"の死を初めて知った」
「ソレを証明出来る人は?」
「いないょ」
全く動じる気配もナイ。
「殺人現場の"外神田ER"には行かなかったの?」
「行けば彼女が生き返るのか?」
「じゃなぜラゼル医師に連絡をしたの?」
「確認だ」
「"推し"と性的関係があるかどうかを?」
2人が写ってるラブホの防犯カメラ画像を示すラギィ。
「毎週末、彼と彼女は一緒にいたの。主治医と患者の絆を超えてる」
「あくまで"不倫"だと言いたいのか?」
「じゃこの画像にどんなキャプションをつくの?」
つまらなそうに画像を見下ろすTOチャル。
「地元の病院は、荷が重いと言って新しい抗ガン剤を使わなかった。だから、唯一センセのトコロで"推し"は投薬と治療を続けた」
「…"外神田ER"が新しい抗ガン剤の治験を始めるまで?」
「YES」
ユックリと…だが、決然と立ち上がるTOチェル。
「1つ正しいコトがある。確かに俺の"推し"は、彼が好きだった。だが、ソレも含めて、俺は彼に感謝している。2人への捜査が行き詰まったから、ソレだけの理由で俺を逮捕スルのか?ならば、呼び止めて逮捕しろ。俺は帰る」
チャルは、最後まで淡々と語り、去って逝く。
その態度にはTOとしての品格すら漂っている。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
窓を打つ激しい雨。ギャレーでパーコレーターのコーヒーを不味そうに飲むラギィ。チャンス到来!僕は微笑みかける←
「ルイナ。嫌な雨だ」
「テリィたん?さっき"推し"を失ったTOに追い打ちをかけてしまったわ。ホントに因果な商売ょ」
「で、何かわかったの?」
「何にも。改築業者に動機は無い。病院を恨む職員もゼロ。で、あのTOも恐らくシロだわ。全てフリダシに戻った」
今だ!と思ったらルイナから電話w
「ラギィ。抗ガン剤のスタートアップにオックスフォード時代の友達がいた。彼女に聞いたら、犯人は最低3人を殺せる薬を持ってるわ」
「ラゼル医師の首から検出された新しいタイプの抗ガン剤のコト?」
「YES。盗まれたのは1ロットで150ccは持ってるらしい。3人が死ぬ量ね。点滴のように少量ずつ投与スルなら安全。ガンも治る。でも、一括投与すれば即死」
「わかった」
スマホを切るラギィ。
「ラゼル医師の他の患者の監視を強化させる。手がかりの白いバラ、くし刺し、怨霊の話も詳しく調べ直さなきゃ」
「じゃサマサが話してた書庫も調べたら?」
「書庫?"外神田ER"の書庫ね?…確かに犯人が訪れた可能性がアル。鑑識を送るわ」
「ソレに、書庫に眠る江戸時代の古文書にも、何か重要な鍵が隠されてるかも。サマサも参加させよう」←
「え。何で」
さすがに怪訝な顔をするラギィ。
「犯人の痕跡を失った以上、古文書を調べるしかない。彼女は秋葉原の歴史にも精通している」
「だから?」
「だって、今まで膨大な古文書を調べて検証してきた人ナンだぜ」
「つまり?」
「ほこりっぽいトコロでの調査が得意ナンだ」←
「うーん」
渋々うなずくラギィ。
「彼女が証拠保全と守秘義務に同意スルならね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"外神田ER"書庫。
「テリィたん。ラギィ警部から話は聞いてます。指紋採取は済ませましたので、後はお任せします。ココは、少なくとも20年は放置されていると思います」
「ありがとう。後で合流スルょ」
「ては、指紋には気をつけて」
馴染みの万世橋の鑑識が引き上げて逝く。
「ココには"外神田ER"が、江戸時代に町医者だった頃からの記録が残されてる。当時の医術はオカルトと紙一重だったから、結構ソッチ系の資料も埋もれてるハズさ」
「素晴らしい!お誘いに心から感謝するわ。今回の事件には、間違いなく江戸時代の怨霊"八百屋セブン"の話が関係してる。真相を知るには、先ずココから調べなくちゃ」
「OK。鑑識からビニ本、じゃなかった、ビニ手をガメといた。コレさえつけてれば、何をしても良いょ」
僕とサマサは、蜘蛛の巣の張った古い書庫へ入って逝く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「おかえりなさいませ、お嬢様…あら?エアリ?」
「ミユリ姉様。テリィたんが、テリィたんが…」
「え。テリィ様が?!何かあったの?」
カウンターの中でイキリ立つミユリさんwところが…
「私のTOを避けてるの!ヒドい!」
「…ソレ?あのね、先ずカウンターを濡らさないで。ソレからテリィ様が何なの?」
「ブルスのライブから逃げ回ってる。来て欲しいのに」
途端にテンションの下がるミユリさん。
「あ、そーなの。えっと、テリィ様はJAZZだから。ブルスのやってるのは、えっと、あの…」
「ノイズロック」
「そうそう。ソレょね。テリィ様はダメみたいょ(因みに私もダメw)。ソレと、テリィ様は地下の箱は苦手なの。確か、エアリの御屋敷って神田佐久間町の地下迷宮ょね?」
エアリは、肩を落とす。
「ブルスは、秋葉原にお友達が少ないのです。彼は…変わり者だから」
「ソレはお互い様ょテリィ様も変わり者だわ」←
「とにかく、ヲタクの友達はテリィたんだけなの。だから、姉様からもお口添えプリーズ。ほら、テリィたんは姉様の言いなりだから」←←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃"ミユリさんの言いなり"の僕は、女流SF作家サマサと2人、"外神田ER"の古い書庫で蜘蛛の巣に塗れてるw
「素晴らしいわ。江戸時代の腑分け、解剖について調べたけど、実物の資料を見るのは初めてょ!まさか、江戸時代にも墜落したUFOの宇宙人を解剖していたとは」
「"うつろ舟"のコトだね…しかし、今の検視と驚くほど似ているな。ところで"八百屋セブン"に関する資料は見つかった?」
「この古文書の作者達は、数100年後に私達に読まれるとは、誰も思わなかったでしょうね。江戸時代の町医者に現代の医療技術があったら、彼等はどうしたかしら。小説家の想像力が試される問題だわ。ねぇテリィたん、自分が後世にどう評価されるか、考えたコトある?」
フト振り返ると、彼女は古文書をナイフで切り取ってるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数時間後、僕はアキバ系美女に囲まれ…反省しているw
「みなさんの疑念が的中しました。彼女、サマサ・キスパが僕の作品を褒めたのは、僕の信用を得て"外神田ER"の書庫から資料を盗むためだった。僕は、彼女に利用された。巨乳に目が眩んだ。(ツルペタの)みなさん、ごめんなさい」
「全く男って」
「コレだから男は」
「特にヲタクは」
「…で、彼女の狙いは何だったの?」
「江戸時代に死亡した患者の名簿。その家族と"八百屋セブン"に関する資料を漁ってた」
会議アプリを通じてルイナも口を挟む。
「スピアにも調査させるわ。事件には関係なさそうだけど」
「…書庫では、他にも収穫があったンだ」
「何?」
アキバ系美女の視線を一身に浴びるw
「記録によると、江戸時代の放火魔"八百屋セブン"は、腸チフスを患ってた。リデル院長の御先祖様は、直ちに臨床試験を実施したけど、対象患者の全員が死亡してる」
「その御先祖様は?」
「その後、隅田川に入水自殺。ココら辺がオドロオドロしい怨霊話を生む土壌になってるカモ。でも、白いバラに関する記載は、何処にも見当たらなかった」
腕組みしながらラギィが発言。
「確かに、江戸時代は今より超自然的なコトが信じられてた。放火魔の死や自殺は、怨霊話に発展しやすかったでしょうね」
「でも、サマサは、散々探したけど、見つからなかったって」
「テリィたんは、彼女を信じるの?巨乳だから?」
爆弾質問をするルイナw緊急動議だっ!推理続行!
「…犯人はナゼだか"八百屋セブン"の怨霊話を詳細に承知してるわ。現場に白いバラを残して臭い芝居を打ってるけど、アレは恐らく偽装ね。いったい"八百屋セブン"の話を何処で仕入れたのかしら?」
「"外神田ER"の書庫じゃナイな。長年の間、誰かが資料に触れた形跡は無い(そもそもサマサが切り取った資料が全てだしw)」
「江戸時代から続く由緒正しい怨霊話だ。歌舞伎や文楽にもなってる。絶対何かしらの記録がアルはず。その記録が盗まれたのカモ」
その瞬間、外で雷鳴が轟く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
真夜中の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地良くなり常連が沈殿して困ってる…今は誰もいないけど。
「僕は、大バカ者だ!お世辞に引っかかるなんて」
「ヤメてください」
「何を?」
僕と向き合う、メイド服のミユリさん。萌え萌え←
「卑屈にならないで。テリィ様は違うの」
「冗談だょミユリさん」
「私はホンキです。私は、テリィ様を知っている。誰よりも身近にテリィ様の成長を見て来た。テリィ様は、もう1人前のSFライターです」
ひとこと一言、噛んで含めるように話すミユリさん。
「そ、そりゃどうも」
「だから、そろそろヤメて」
「何を?」
「"editor"です。テリィ様は"writer"でしょ?」
僕はTVデビュー作"地下鉄戦隊サブウェイ5"の原作者なので毎週クレジットに"executive story editor"と出る。
「ずっと(代理店からw)そう呼ばれて来たんだ」
「だから、もう変えても良いのです。テリィ様の意志で」
「そ、そーかな」
第4章 夕焼けオペレッタ
異常気象とは無縁のSATOの地下司令部。
そもそも、今が昼なのか夜なのかも不明←
「テリィたん。私のTOのブルスが探してるわ」
「ヲレもー」
「え。会ってくれるの?ブルスと?」
媚び媚びの下から目線で僕を見上げるエアリはメイド服。
彼女は、平時は自分がメイド長の図書館カフェの勤務だ。
「of course のサヨナラさ。僕から連絡スルょ」
「きっと楽しいわょ!」
「だね!」
僕は、憂鬱なノイズロックで1夜を潰す覚悟だw
「で、ライブ後は"editor"を卒業のね?実は、ミユリ姉様から聞いたの」←
「…僕は絶対"推し変"スル!ミユリさんは今日で破門だっ!」
「ムリムリ。しょせんは姉様の掌の上ょテリィたんは…で、"外神田ER"の書庫には何かあった?」
フテクサレた僕は、ペラペラ喋る←
「見つけて来たさ。ただし、書庫じゃなくて、神田和泉町にある区立図書館でさ」
「リニューアルしてキレイになったょね。駅前のホームレスさん達が日中の暇潰し先が出来て喜んでた。で、ソコで何が?」
「1990年の新聞縮刷版が切り抜かれてた。ここ2ヶ月で"ある人"が同じ頃の新聞を見てる(実は他に切り抜いてる人もいたけどナイショw)」
「ココ2ヶ月って…ズッと張り込みしてたの?!でも、テリィたんは先日、地球に帰って来たばかりでしょ?」
驚くエアリ。何となく愉快になる僕。ザマーミロ←
「テリィたんは、私にヤラせただけ。私が図書館の監視カメラを楽々ハッキングして桜田門の"顔認証"にかけたワケ」
「スピア!さすがストリート系のハッカー…ってか、そこまでテリィたんの言いなり?」
「私はね、テリィたんの元カノ会長ょ?コレはヤラされたんじゃない。会長としての特権ょ!」
混乱するエアリ。ザマーミロ←
「な、何でイバるの…ま、良いわ。で、データベースとの照合結果は?」
「火焔系のスーパーヒロイン"メンフ・ペル"。すっかりオバさん化してる…何か人相とか微妙だけど」
「"メンフ・ペル"?何処かで聞いた名前だわ」
「死亡証明書が出てる。2年前、スーパーパワーを喪失スル事故に遭い、死亡してる」
慌てふためくエアリ。
「でも、先月、区立図書館に来てたのね?…何かヤバそう。ミユリ姉様に言わなきゃ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田佐久間町の地下は、雑居ビル同士で地階を繋いだりスル内にトンでもない地下迷宮が出来上がったが、その最深部にあるエアリの図書館カフェ目指し…気分はトンネル特攻兵←
「テリィたん?!こんなトコロまで…でも、俺もアンタを探しまくったンたぜベイベ」
「ブルス!実は僕もだ!返事をしたくて…逝くょブルスのライブ。ぜひ逝かせてくれ。サビ打ちはサンダースネイクでOK?」
「テリィたん、ライブに来てくれるだけじゃなく、現場でヲタ芸まで打ってくれるのか?!感激だ!泣けるぜベイベ」
昼か夜かもワカラナイ薄暗い地下迷宮の片隅で、黒の革ジャンに銀の鎖ジャラジャラなノイズロッカーに抱きつかれるw
「もともと、ヲタ芸はヘビメタ現場からのパクりが多いからな。ところで、コレから夏の終わりのスリラーなんだが、一緒に逝くか?」
「え。良いのか?」
「そのウザいハンドサインをヤメたらな」
ブルスは何やら両手で影絵みたいな仕草を繰り返してるw
「意味不(明)wソンなのノイズロッカーにしか通じナイょ」
「実は奥に専用EVがアル。使ってくれ。ところで、俺は血糊はOKナンだが、リアル血液は見るだけで失神しちまう。エアリの前の推しとは、同棲中に彼女が生理で…先に気付け薬を飲んで来ても良いか?」
「よし。飲んで来い!」
数秒後、ブルスが乗り込み秘密EVのドアが閉まる。
「テリィたん。実はチケットが余ってる。他にも誰か来ないかな?」
「OK。心当たりがある(しかし色々面倒臭い奴だなw)」
「恩に着るょ」
僕は、全身黒革のノイズロッカーの肩をポンポン叩く。
「ヨセょヲレ達は"ヲタ友"じゃナイか!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時期。ルイナのラボ。
「スーパーヒロインOGの"メンフ・ペル"の情報は?」
「どーやらスーパーパワーを失ってから、隣人の介護を受けていた模様。その隣人はマジェ・キノン。ただし、マジェは半年前にガンで死亡。彼女の夫は20年前に事故死」
「死人ばかりなのね」
溜め息をつくのはムーンライトセレナーダー。
ミユリさんは既にスーパーヒロインに変身中。
メイド服だけど下半身はバニーガールなんだ←
(作者の妄想満載なコスプレw)
「因みに、マジェ・キノンの入院先は"外神田ER"ではありません。聖マリア病院」
スピアがラボのモニターにマジェの画像をUP。
画面を分割して、マジェの訃報もカットイン。
「喪主は、継子のジェナ・ペルか…
「ジェナ・ペル?」
「ムーンライトセレナーダー、何か?」
スピアが振り向く。
「スピア。"外神田ER"の職員名簿を見れる?」
「お安い御用。診察券から簡単にハッキング出来ちゃう…はい、コレだけど」
「ジェナ・ペル、ジェナ・ペル…あったわ。保守主任がジェナ・ペル」
読み上げながら、顔面蒼白になるスピア。
「保安主任なら、改築中の怨霊病棟…じゃなかった、ガン病棟でも怪しまれずに歩き回れるわ!」
「とりあえず、彼女と会いましょう。スピア、マジェ・キノンを治療した聖マリア病院に確認して。秋葉原駅前にあった神田青果市場が太田に移転した、1990年頃の話ょ」
「え?神田製菓市場?生花市場?」
「いいえ。青果市場。"野菜市場"だから!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"外神田ER"事務長ナザフは黒縁眼鏡の神経質そうな人だw
「リデル院長からファイルを預かってます」
ナザフから書類を受け取る。
恐らく書庫に眠ってた奴だw
「…"マジェ・キノンへの新薬による治療申請は却下。新薬による回復は望めない"か。保安主任として"外神田ER"に入り込んだジェナ・ペルは、継母の死後も、新薬により治療される患者を見て来たワケね」
「彼女が屈折した思いを抱く相手は、1990年頃、新薬による治療を拒否した"外神田ER"と、その後、新薬で快方に向かったガン患者というコトだわ」
「例えば…ジェニとかw」
ムーンライトセレナーダーは、ハッと気づく。
「リデル院長は?先ほどから姿が見えないけど」
「建設業者から呼び出しがあって、改築中のガン病棟に行きました」
「待って。ガン病棟は、事件現場で閉鎖中ょ。誰もいないハズだわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ヤメて!お願いょ!」
雷鳴が轟くガン病棟に女の絶叫が響き渡る。誰もいないハズの暗い廊下で誰かを引きずる"八百屋お七"コスプレの女。
まさに歌舞伎の1シーンだw
「ジェナ・ペル!音波銃を捨てて!もう逃げられないわ!」
「ムーンライトセレナーダー?ココょ助けてぇ!」
「近づくな!撃つわょ!ホンキだから!」
ジェナがリデル院長の側頭部に音波銃を当てる。
「ジェナ、ヤメて。貴女の継母の死とリデル院長は関係ナイでしょ?!」
「いいえ。アルわ!」
「違うの。誰のせいでもナイの」
ムーンライトセレナーダーの説得に耳を貸さないジェナ。
「救えた命を見捨てたのょ!あの病院は」
「違うの。貴女のお母さんは新薬でも無理だったのょ」
「嘘ょ!」
「聞いて。お母さんが悲しむわ。慈悲深い彼女は、復讐なんて望まないハズ…」
銃声w
「任せろ。追え!」
雷光に照らされ倒れるリデル院長を僕は抱きとめて叫ぶ。
照明が明滅し消えて真っ暗闇に。ジェナの姿が見えないw
「ゴメンね、ジェネ・ペル」
暗闇の中から襲いかかるジェナを"雷キネシス"が貫く!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ストレッチャーに乗せられたリデルが僕の手を離さないw
「リデルは血清を打ったから大丈夫だ。ジェナは?」
「怨霊でこそありませんが、彼女は"blood type BLUE"。スーパーヒロイン反応が出ました。本人が自覚していたかは不明ですが…少なくとも、その血筋でした」
「まさか…」
ムーンライトセレナーダーはうなずく。
「彼女は"八百屋お七"の末裔でした。江戸時代からアキバにはスーパーヒロインがいたコトの証左ですね」
「ソレで彼女は音波銃を振り回してたのか…ミユリさん、気にしちゃダメだ。逝こう?」
「はい。テリィ様」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
夏の終わりに異常気象の長雨は止み"fSFライターコンファレンス"には傘なしで出掛ける。ミユリさんとは現地集合。
「テリィたん!来てくれないかと思ってた!うれP」←
"ホテル24"の広大なコンベンションホールの出入り口で張ってた?サマサが、僕を目ざとく見つけ声をかけて来る。
「やぁサマサ」
直ぐ目を逸らす僕を見て、サマサは溜め息。
「悪かったわ、テリィたん。私は、確かに許されないコトをした。江戸時代からの古文書を、自分のリサーチのために切り取るナンて」
「じゃ僕も正直に逝うょ。アレは、貴女ほど有能な人がするコトじゃナイ。僕は、意外だったし失望もした」
「筆が進まなくて焦ってたの。でも、ソレでテリィたんを裏切るナンて、ホント自分が情けナイわ。償いの代わりに、高名な作家連中や、有能な編集者にテリィたんを紹介させて。OK?」
「いや、断る」←
言葉とは裏腹にゴクリとノドが大きな音を立てるw
「ねぇ良いでしょ?私が紹介したいのょ。有望なテリィたんに協力してくれる人達ばかりなの…お・ね・が・い」
上目遣い&巨乳谷間チラ見せポーズwますます生唾ゴクリ←
「(私から見ればツルペタ同然のw)ミユリさんは?御一緒じゃないの?」
「遅れて来るょ。"雷キネシス"を撃った後は、お化粧に時間がかかルンだ」←
「遅くなりました、テリィ様」
ココでミユリさん登場だけど、肩出しのメイド服で…
スンゴイ"盛ってる"何処から美肉を?背中からか?
「サマサさん、安心して。"雷キネシス"は変身した時しか撃たないから…たぶん」
「そ、そうなのw」
「ミユリさん!僕達、仲直りしたンだ。僕をSF作家さんに紹介してくれルンだ。有能な編集者さんにもね!」
有頂天の僕をヨソに耳元から耳元へ重要なガールズトークw
「ホント作家志望の男ってチョロいわね。紹介だけで有名作家になれりゃ誰も苦労しないっちゅーのwでも、貴女には負けたわ。実は私もAカップ。その寄せ上げブラ、何処で買ったのょ?」
「え。失礼ね。私はAじゃナイわ!」
「しっ。ホラ、約束は守るわょ」
グラスを叩き、注目を集めるサマサ。
「アテンションプリーズ!みなさん、今宵はラッキーょ!コチラがあの国民的ヲタクにして"SFライター"の…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
雨上がりの夕陽に染まるアキバ。そして、ヲタクの青春。
「ミユリ姉様。テリィたんにはコレなんかどう?神田明神下の老舗"山の下ホテル"に1週間缶詰めで執筆コース。完全菜食の食事で"八百屋セブン"の続編に挑戦。サブスクTV、インターネットから完全に隔離ですって!」
「ダメょテリィ様は発狂しちゃうわ。間違いなく毎日"ひとり焼肉"に通いそう」
「そっか。でも、そーならないよーに、ミユリ姉様はメタル眼鏡に深いスリットの入ったミニスーツのヤリ手編集者のコスプレで…」
僕達が"潜り酒場"に戻ったのは、このタイミングだw
「最凶だったょミユリさん!」
「え。何ですか、テリィ様。まぁこんなに大勢w」
「スゴかった!焔の演出とかメイクとか!」
口々に大声で騒ぎ立てながら、続々と御帰宅して来る!
たちまち"潜り酒場"は満杯だ!この熱気は革命前夜?
「ブルスのライブ、メチャクチャ楽しかった!音痴なノイズロックだと思ったらロックオペレッタ、しかも、まさか劇団"死期"の"Les Misérables"だったナンて!最凶だった!」
「え?え?ロックオペレッタ?ソレ何?美味しいの?ってかコレ全部、テリィたんのお友達?ってか、お客以外にもレプブリカンやフランス国民兵、あぁラマルク将軍までいるわ(映画には出て来ないのにw)!」
「そうナンだ!演者と客が完全合体した素晴らしいライブだった!ステージ上のブルスと何度も目が合って、最前列にいた僕は…」
ミユリさんが"ヲタクを導く自由の女神"と化し旗を振る!
「自由、平等、萌え!もっとウィスキーを!今宵は御屋敷の奢りです!」
沸き起こる大歓声の中で、僕とガヴローシュに扮したブルスは肩を組み拳を振り上げ大声を張り上げカウンターの上へ!
あれ?僕は何で"ABC café’’を歌ってルンだ?
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"廃病院"をテーマに、ヒロインの親友のメイド長、その主治医、そのTO、前シリーズで登場したノイズロッカーに美貌の病院長、女流SF作家、スーパーヒロインOGにその継子、殺人犯を追う超天才にヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。
さらに、主人公のSF作家としての成長をサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、コロナ全数調査をめぐり揺れる秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。