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9話(回想4)銀竜(シルバードラゴン)の捕獲

 ルカとギンが館から逃げる魔物を討伐している時。


「あぁ、せっかく生贄にしようとしてた魔物どもが...ちっ」


 館から離れた場所に黒いローブを着こんだ三つ編みに眼鏡の少女がおり舌打ちした。


「いつも、どこでも邪魔ね…あの、正義の味方は!!」


 少女は汚く吐き捨て、銀のシルバーレイで魔物を屠るルカを見ていらついていた。


「あのクソデブ貴族に捕まえさせた魔物どもを使えば、いい実験ができたのに...」


 恨み言を吐く少女はその場から立ち去り、ローブの下にはルカの通っている制服が見えた。






「く、くそぉ!! 魔物が逃げるわ、騎士共が出るわ!! 一体どうなっている!!」


 地下での騒動後にすぐに逃げる支度をしていた館の主のデブ男。


 だが、館の周辺は騎士と魔法師団に囲まれており逃げ道をふさがれてしまった。


「こうなったら、あの女が助けにくるのを待つしか...それか、外にいる連中が魔物どもに食われた後に逃げるしか…」


「だ、旦那様!! お逃げくださ..ぐはぁ!!」


 長年自分の右腕としていた執事が部屋に飛び込むが気絶させられる。


 部屋に入ってきたのは男を逮捕して得られる手柄のためにアーネや自分の部下を見捨て館に突入したレイドとその取り巻きだった。


「観念するんだぁ…魔物の不正取引がどれだけ重いか、貴族のあんたならわかるような?」


「き、貴様!! ここは私の館だ!!何を訳のわからんことを!! あの魔物達は知らん。私を陥れようとした者の陰謀だ!! 」


 この世に及んで自分は無実だと主張する男に冷笑を浮かべるレイド。


「おいおい、おっさん。俺らがここにいるのは、ちゃんとした証拠があってだぞ? まぁ、そんな魔物みたいな図体と頭じゃ、何も理解できないか」


 取り巻きたちと馬鹿にした笑いを浮かべる。


 挑発されて今にも襲いかかりそうな館の主だが、突如外で銀色の光が起きた。


「な、なんだ!? あれは、ドラゴン!!」


 窓の外を見た男が空にいる銀のシルバードラゴンの姿を見て目を輝かせた。


(美しぃ..あれが、この世に一体しかいないドラゴン…欲しい、鱗は鎧にも使える。爪だって適当に加工しても高値で売れる!!)


 ドラゴンを見て品定めすると男の行動は早かった。


「くそぉ!! あれが噂の迷惑女か!! つっ!! おい待て!! 豚ぁ!!」


 銀の竜騎士シルバードラグナーを勝手に動く迷惑女とレイドが舌打ちしていると、欲にかられた男が巨体を揺らし隣の部屋に逃げ込んだ。


「はぁ、はぁ!! あれは、俺のだぁ…絶対に逃がさねぇぞ!!」


 部屋の中には男のコレクションなのか魔物のはく製から、魔物の死骸を加工した装飾品や武具が置かれていた。


 男は大きな筒を取り出す。


 (へっへへ!! この大砲の先にある爪は一度食い込めば簡単に外れんぞ…それに、爪からワイヤーにいたるまで、触れたらこの探知機に反応する液体もあるからぜっったいに逃がさねぇ!!)


 レイドたちが扉を強く叩き絶対絶命な状況だが、この豚男の頭の中には銀のシルバードラゴンの事しかなかった。


「はっははは!! ドラゴンは俺の物だぁ!! あの女にもぜってぇ渡さねぇ!!」


 男は自分に魔物を捕まえろと命令してきた女の事を叫んだ。


 不思議な力を持つ女のおかげで、莫大な富と名誉を手に入れることができた。


 女は自分に生きた魔物を集めろと命令してきたが、目の前のドラゴンだけは自分の物にしよとした。


 狙いを定め捕獲アームを発射する。窓ガラスを破り、鋼鉄のワイヤーの先にある鉄の爪が火花を散らし開いて銀竜シルバードラゴンの首に引っかかった。


「はっははは!! やったぁ!! ドラゴンを捕まえたぁ!! 」


 アームからワイヤーまで見えない無臭の特殊な粒子が飛び、銀竜シルバードラゴンとその背中に乗る銀の竜騎士シルバードラグナーに付着した。


 男はポケットからコンパスを取り出す。


 アームに触れた獲物がどこにいるか、特殊液体に敏感に反応する探知機がアームの先にいるドラゴンと竜騎士に向け反応する。


「はっははは!! …はぁ?」


 アームでドラゴンを捕まえたはいいがその後をどうするか考えてなかったデブ男が惚けた声を上げた次の瞬間。


 捕獲された獲物(銀竜)の上から女性が勢いよく飛び降りデブ男に向け突撃した。


「ぎゃぁぁぁぁ!!」


 着地した衝撃で部屋の窓や装飾品が引き飛ぶ。その時、ちょうどレイドたちが扉を破壊してデブ男の確保に突撃したのだが。


「このぶたぁぁ!! よくもギンにくだらねぇ傷つけてくれたなぁ!! しねぇぇぇ!!」


 相棒の銀竜にかすり傷をつけられた銀の竜騎士シルバードラグナーが気絶した男を殴り蹴りの暴行を加えていた。





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