8話(回想3)騎士団長、アーネは正義の味方に惚れる。
ひぃ、助けてくれぇ!!」
「こんなんだったら捕まって牢に入ってる方がマシだぁ!!」
館の地下で魔物の入った檻を蹴りガス抜きしていた男達が自ら逮捕してもらうために騎士や魔法師団たちに泣きついた。
「ちぃ!! 邪魔がぁ!!」
アーネは泣きつく男達に舌打ちする。
魔物の討伐中に正直邪魔だったが、重要な参考人を死なせるわけにはいかず保護すす。
だが、男達に気を取られているその隙に魔物たちが森の外へ出ようとする。
「くぅ!! こいつら、一体どれだけの数の魔物を捕獲してたんだ…このままでは…」
魔物は地上だけでなく空にもいた。
上空にいる魔物に向け弓矢や魔法を放つが距離が離れており回避されたり、傷が浅く効果的ではなかった。
魔物達は攻撃性と凶暴性が増した怒り状態のせいで、こちらが傷を与えても怒りのせいでひるまない。
一匹、二匹と次々と魔物達が逃げていく。
このままいけば近くの村や町に被害が出る。
手柄を取りに屋敷に入ってしまったレイドたちを連れ戻してももう間に合わない。
「クソォ!! レイドのやつめぇ!! 我々は民のために戦う者なのに、手柄のために部下を見捨てて!!」
責任感が強いアーネが吠える。
貴族なら地位など関係なしに弱者を守らなけらばならない。
特に、正体不明のドラゴンに乗った女にまかせっきりになり自分達の存在は必要ないと影口をたたく者もおりアーネは気にしていた。
「団長!! 逃げてください!!」
「っ!! しまった!! きゃぁ!!」
逃げて行った魔物に気を取られてしまい、目の前にいる魔物の攻撃を受け剣が折れて、アーネが倒れる。
「くぅ…こんな、ところで…」
部下や民を守れない悔しさにアーネの瞳に涙が浮かぶ。
まだ、18歳の少女は「死にたくないっ」とつぶやき恐怖で涙を浮かべた。
ガァァ!!
次の瞬間、上空からドラゴンの咆哮と共に銀色の光が降り注ぎアーネに襲い掛かってい魔物と森から離れていく魔物を消滅させた。
「な!? あれは!?」
次々と魔物達が屠られていきその光の正体が降臨した。
銀色の鱗を持つ銀竜とその背に乗る銀の竜騎士だった。
(あっぶなかった…あの人、レナのお姉さんだ…)
(ルカ。とりあえず、森から離れようとした魔物は銀の光で消したけど、まだ館の中に魔物の匂いが残ってる。後、生きてる人間の匂いも)
(まずは魔物を全て倒そう。後、逃げようとしてる馬鹿どもを抑えておかないと)
ルカが手をかざすと、昨日北の砦で魔物の大群に向け放った銀の光で館から飛び去り森から抜けようとする魔物を消滅させた。
「ど、ドラゴンだ…けど、今のうちに…」
騎士団たちに泣きついて魔物の運搬をしていた男達が子の隙に逃げようとした。
だが、極小にまで圧縮し威力を抑えた銀の光が男達の足元の地面を大きな音を立て深くえぐった。
「ひぃぃぃ!!」
逃げるな。と釘を刺され尻もちをつくか気絶する犯罪者たち。
(逃げるんじゃないよ。どうせ、貴族とかのお偉いさんから十分小遣い稼ぎできたんだから。今度は一生分の苦い汁飲んどけ)
(ルカ。この魔物達、相当怒ってるね。人間に捕獲されて暴力を受けて、まともに水や食事を与えられなかったから、人間に相当怒ってる。一体でも逃がしたら、小さな村なんてすぐに滅ぶよ)
相棒の声を聞いて剣を引き抜きぬく。
ギンの言葉を聞いてかわいそうと気持ちが出るが、そんな気持ちで戦っていたら出さなくていい犠牲を出してしまう。
銀の竜騎士になってから、何度も痛い目にあってきたルカは容赦なく魔物を切り裂く。
(まずは、目の前の魔物をせん滅させなきゃ…って、もう!! 騎士団と魔法使い達は何してんのさぁ!!)
地上にいた者は空で戦うルカとギンの戦いに見とれていた。
ルカが銀の光でだいぶ数を減らしたとは言え魔物はまだ残っている。
ルカは一度、息を大きく吸って吠えた。
「何を惚けている、貴様ら!!」
自分の中の高貴な銀の竜騎のイメージを壊さないようにしつつ怒声を上げた。
「貴様らが欲しいのは手柄か? 地位か? お前たちは国や民を守る者だろうが!! そこの犯罪者どもと一緒にそこで惚けているなら騎士や師団などやめてしまえ!!」
ルカの声を聞き騎士団と魔法師団は「はっ」とした表情を浮かべた。
そして、一番銀の竜騎士を見とれていたアーネは己の頬を強く両手で叩き、頬が赤くなる。
部下から剣を借りアーネは叫ぶ。
「何をしている!! 銀の竜騎士様の言うとうりだ!! 一匹たりとも魔物を決して逃がすな!!」
アーネの声に鼓舞され騎士と魔法師団が声を上げた。
この時、ルカは有翼の魔物を追いかけ剣で切り裂いていて気づいていなかった。
アーネが銀の竜騎士様と呼んでいたことに。
(あ~あ。また熱狂的なファンができちゃった…)
(え? 何? もしかして、また魔物が出てきた?)
(いや、地上の方で結構頑張ってくれてるから魔物の数もだいぶ減ってきたよ)
今は戦闘中だし、余計なことを言うのはやめようとギンは空気を読んだ。
銀の竜騎士が出現してたった数分で屋敷の地下にいた魔物達がほとんど全滅させることができた。
地上にいたアーネ率いる一団が部署を超えた団結を見せたおかげで森から逃げた魔物が一匹もいなかった。
(ふぅ…なんとか落ち着いたわね…あとはアーネさんたちに任せて、私たちは帰ろう…てっ!?)
「きゃぁ!!」
「うぁぁ!! な、何か飛んできたぁ!!」
帰ろうか。とギンに告げようとした瞬間。屋敷の窓を割り巨大な鉄の三本の爪が火花を散らしながら飛びギンの首に引っかかった。