7話(回想2)騎士団と魔法師団の窮地に現れる銀の竜騎士
(くんくん…臭う…)
(え? もしかして、学食で食べたソースの匂いまだ残ってた?)
ギンが鼻を動かすと、ルカがボケて答える。
(いや、そんなボケいらないよ…人間の匂いがある。多分、騎士とかかな? 後、魔物の匂いが活発になってる…多分、人間にひどい扱いをされてその怒りで暴走してるみたい…見えた、あの建物だ)
夜空の雲から姿を現したギン。
背中には鎧姿のルカがおり、森の奥にある館を見つめる。
館の周囲には鎧を着た一団とローブを着こんだ一団の2種類の人間がいた。
(騎士団と魔法師団かぁ~~まぁ、今日は様子見程度だし、後はあの人たちのお仕事だから帰ろう…げっ!!)
返ろうとしたが、館の中から魔物達が屋敷を壊しながら出てきた。
「うぁぁ!! 魔物だぁ!!」
「ちぃ!! 応戦しろぉ!! 一匹たりとも、ここから逃がすなぁ!!」
騎士と魔法使い達が応戦し始める。
目を赤くし暴れる魔物達。
魔物達は怒り状態になると理性を失い、より狂暴性が増した状態だった。
「え~と、ギン。あれ、まずいよね…?」
(怒って狂暴化した魔物は、普段より攻撃性も狂暴性も増すし...あと、あの数だから多分、一人か二人は死ぬと思うよ)
館の地下から脱走してきた魔物達と応戦する人間達。
騎士団は指揮している少女が指揮を執り、被害が少ない。
逆に魔法使いの一団は魔物達を蹴散らしながら館の中へ突入していった。
ギンと耳と目が同調しているおかげで、ルカは地上にいる者達の顔をはっきり捉え、耳も一人一人の声が聞こえていた。
「レイド!! 何をしている!? この魔物達を放っておけば、近くの町や都市に被害が…」
「黙れ!! 下級貴族がぁ!! 俺に命令するな!! この混乱に乗じてヤツに逃げられたら、おまえは責任を取れるのかぁ!?」
館へ突撃している者の中に昼間にルカを平民と呼び見下していたレイドがいた。
レイドに向け非難の声を上げたのは、レナと同じ青髪をした鎧を着た女性。
レナの姉で騎士団長をしているアーネだった。
「あの馬鹿貴族…味方捨てて手柄取りにいっちゃったよ…」
館の中に突入していくレイドと魔法師団たちを見て呆れるルカ。
騎士団と魔法師団の合同任務なのだが、二つの組織はお互いを睨みあっていたのはルカもレナから聞いていた。
魔物と応戦している騎士団は
「あいつ、俺たちを見捨てやがった!!」
「くそぉ、貴族は周りの人間無視して手柄取りかよぉ!! って、アーネ様、すみません!!」
混乱する戦場で現在一番高い地位にいるのはアーネだった。
「ちぃ!! 陣形を立て直す!! 残っている魔法師団は我々と共に魔物の討伐に入る。この森から魔物を一体も逃がすな!!」
アーネが指揮し、乱れていた陣形が整っていく。
違う部所のはずの残っている魔法師団の人間がアーネに指示に従い行動しており、アーネとレイドにどれだけ信頼の差があるのか目に見えた。
(どうするアル? 引き上げる?)
(…ギン、わかって聞いてるでしょ?)
契約である週に1回の人助けはストックできない。
昨日、魔物の大群をせん滅し既にノルマはこなしており、ここで誰かを助けても無駄なのだが。
(突撃よぉ!!)
(了解!!)
夜空から一体のドラゴンが急降下し、森の外に出ようとした魔物に蒼い吐息を放ち消滅させた。