6話(回想1) 魔物の不正取引。魔物達の脱走
深夜。森の奥にある館。
この建物の持ち主は上級貴族であり、地下では大量の生きた魔物が檻に入れられていた。
「くっくく…これだけあれば...あの黒い女には一部だけくれてやればいいか...あとは、全部俺のだ...」
自分に魔物の捕獲を命令した女の事をつぶやく。
黒いローブを着た正体不明な女だが、あの女の命令どうりに魔物を生きたまま捕獲し渡せば、自分に莫大な利益が転がりこんできた。
「ドワーフどもには高く売れるし、頑固なエルフどもに送りあいつらの困った顔が見れる…あと、魔物《獣人》もどきもくたばればもっと最高だがな…」
太った体に豪華な装飾をした人間の男が笑った。
地下では男の執事や部下が檻にラベルを張っていく。
ラベルにはエルフや獣人の住む集落や町を襲わせる用や、ドワーフ達に解体させる材料用など仕分けされていく。
「それにしても、最近魔物どもが手に入りにくい…あの、女とドラゴンのせいだ…」
人間主義で他種族を見下す傾向にある男がつぶやいた。
これまで魔物の不正な取引だけでなく、奴隷商人を使い他の大陸に売り飛ばすなど不正にかなり染めていた。
だが、銀の竜騎士に邪魔され何度も邪魔されて大きな損害を受けた男は、女の正体をつかみドラゴンを手に入れようと権力と大金をフル活用させは調査したが全く手がかりがつかめていない。
地下から出ていき自室にある国民の税金を横抜きして購入した高級ワインを貪る。
「ごくっ、まぁいい。あの女の持つドラゴンが手に入ればこれまでの損害などどうとでもなる」
この世界で一体しかいないドラゴンが手に入れば莫大な利益が転がりこむ。
手なずけて魔物の捕獲や銀色の鱗は加工して綺麗な装飾になる。
「あっははは!!」
一人高笑いする男。一方で、魔物たちの檻を運ぶ部下たちは不満が貯まり限界がきていた。
「くそぉ!! あのデブが!! 魔物の餌になっちまえよ!!」
古びた檻を蹴り中にいる魔物が怒りでうなる。
毎日、毎日安い賃金で働かされ、しかもいつ魔物に攻撃され死ぬか分からないストレスマッハな職場環境。
魔物を運ぶ檻もろくに手入れされておらず、どれも古い。
しかも鍵も錆びている物も多かった。
「おいおい、檻壊して魔物が出てきたらどうすんだよ…まぁ、俺たちが死んでも豚た貴族どもは何とも思わないだろうが…こいつらが脱走して、貴族どもの所で暴れてくれたほうがスカッとするぜ…」
「なんなら、鍵をわざと外しとくか?」
同僚たちはガス抜きの冗談でいくつかの檻を蹴る。
ガンッ、ガンッと大きなを音が鳴り、錆びれていた鍵から怪しい音が聞こえるが、男達は気づかない。
「ぜぇ、ぜぇ…ふぅ。いい運動になった…そんじゃ、執事のうっせぇおっさんに見つかる前に他の魔物どもをいじめますか」
「おいおい、魔物いじめたらかわいそうだろ…まぁ、こいつらが死んでくれたら運ぶの楽なんだけどぁ~~あ...」
無駄口を叩いていた男の顔が真っ青になる。
さっきまでストレス発散で蹴っていた檻の鍵が床に落ちた。
檻の扉が開き、中にいた魔物が怒りの声を上げ、数秒後には館の地下は魔物だらけになっていた。