18話 儀式により生まれし騎士
「ウォォォ!!」
魔法陣の中心で銀色の騎士が叫ぶ。
祖国を救ってくれた銀の竜騎士を慕っていた少年は、儀式師の忠実な下僕となった。
「いいわね...やっぱり、強い執着がある素体だと、いい下僕ができるわ~~それじゃ、さっそく、そこの邪魔なの消してね」
儀式師のサラがレナを殺すように銀の騎士に命令した。
剣を握り騎士がレナに向かっていく。
「ちぃ!!」
自分に向かってくる騎士に向けナイフを投擲するレナ。
ナイフは騎士の装甲に弾かれる。
「ナイフはだめか…なら、ファイヤボール!!」
レナの魔法が一直線に向かってくる元少年の騎士に直撃するが焦げすらつかない。
「へぇ、国の犬にしては戦闘も魔力もそれなりにできるみたいね…けど、私の儀式で生まれたソレがそんな程度で倒れると思った? 」
「くぅ!!」
銀の剣が高速で迫り、レナは攻撃を軽い身のこなしで避ける。
国の要人防衛や隠密行動のために特殊な訓練を受けてきたレナだが、儀式により力を得た少年の動きは人間を超えておりレナの頬や肩などから血が流れる。
「はぁ…はぁ…はやい…」
肩で息を上げ目の前の儀式で生まれた騎士が自分では止められないのを感じた。
「リュウ、キシ、様は…ボクガ、マモル…」
銀の竜騎士により祖国を救われ、感謝の気持ちを持っていた純朴の少年がかすれた声を上げた。
魔物の群れに怯え犯罪者たちに家族を奪われた祖国。
大国は少年の国を助けようとせず、唯一救ってくれたのが銀の竜騎士だった。
我が身可愛さに救いの手を差し伸べず高みの見物をしていた権力者たちへの怒り。
無償で自分と国を救ってくれた英雄のようになりたい。竜騎士様の力になりたいと憧れ気持ち。
二つの心が混じり、少年の力が増していく。
「ジャアクナ、ケンリョクシャ、ユルサナイ…」
銀色の騎士姿は儀式により少年気持ちが具現化した姿だった。
「そうそう、大好きな竜騎士様を汚い権力者たちから守ってあげないとね」
高見の見物をしているサラ。
(儀式の対価にしたのが忌々しい「銀の竜騎士」(シルバードラグナー)への憧れなのは腹立つけど...まぁ、その思いのおかげでこれだけ強いのができたし)
これまで自分の計画や同士たちを討伐してきた忌々しい敵に舌打ちするサラ。
「…まぁ、この程度じゃまだ「契約」はする気はないかなぁ…どうせならもう少し質の良い駒と契約したいなぁ…」
騎士の背後でサラが考え込んでいた。
いつの間にか騒ぎを聞きつけ生徒や教師たちが集まってくる。
「はぁ…ここの生活もそこそこ良かったんだけどねぇ…まぁいいか。私が逃げきれるまで暴れてね…死ぬまで。それじゃ」
「なっ? あなた!! …くっ!?」
逃げるサラを追うとしたが高速で接近してきた騎士の剣が振り落とされ、大量の血が庭の花に付着した。