15話 腹黒友人の誘い
「姉さん…」
ルカに気絶させられ倒れるアーネを見てつぶやくレナ。
自分の実姉が倒れているのに驚くどころか騒がないようすに逆にルカの方が驚いていた。
「えと、その…レナ…これは…」
「ルカ…ここから出ていくの?」
ルカが銀の竜騎士だと知っても態度を変えずいつもと変わらない様子で質問してきたレナ。
「…ルカが何か隠してたのはわかってたけど、まさか竜騎士様だったなんて…」
「えと、その…ごめん」
「なんで謝るのさ…もう…」
王族の身分を隠してからできた初めての友人が「変なの」と笑いルカの顔に笑みが浮かぶ。
「あ~あ。ルカが銀の竜騎士だってわかっていたら色々面白い話聞けたのに~」
「え~と? そうなの?」
「だって、ルカから次現れる場所を聞いておけば情報屋に情報売ってお小遣い稼ぎに…」
「ひどぃ!! この貴族娘、腹黒いよぉ!!」
レナは「冗談よ」と告げるが目がお金になっていたのにルカは気づいていた。
レナは一見おとなしそうに見えるが時折腹黒い面がある。
あるクラスメイトの男子がレナの見た目と家柄狙いでナンパを繰り返していた。
素行の悪い友人を使いアレコレしていたが、数日後にはその男子と友人らは謎の病気や罪状を受け学園を去った。
ルカは一度何をしたのかレナに聞いたが「秘密」の一言で片づけられてしまった。
「で、姉さんはこのままにしといて…」
「アーネさん放置していいの?」
「ルカはこれからどうするの?」
「えと、とりあえず学園の庭に隠してるへそくりを回収してしてそのまま逃亡…はっ!!」
「へぇ、庭にへそくりがあるの~~」
身バレして気が緩んだのか、これまで悪党から集めて(強奪)してきたへそくりをしゃべってしまいレナの目がお金になる。
「だ、だめだからねぇ!! あのお金は私の逃走資金なんだからねぇ!!」
「でも、ここで私が声を上げたら逃走もできないんじゃない? だったら…友人として、逃走の協力が必要かなって」
「うぐぅ…」
レナの顔に怪しい笑みが浮かび、ルカに悪魔の提案をささやく。
ここでレナに声を上げられたら城からのご褒美ほしさに人が群がってくる。
しかもレイドのようにルカとギンの力欲しさに力づくで来られると厄介だった。
(ルカ。早くしないともっと逃げにくくなるよ? それとも、目の前にいる子も気絶させる? )
(うぅ…レナ相手に手を上げるのは…)
頭の中にギンの声がどうするのか投げかけてくる。
ギンは既に学園の上空におりルカの脱出機会を見ていた。
だが、学園の中にはルカの身柄を確保しギンも手に入れようと武装した一団が学園の守りについている騎士や兵士らともめていた。
もう時間はない。
見つかってレイドのように強制的に連行されるか。
もしくは、アーネのように熱狂的なファンに囲まれ崇拝され続けるか。
最悪の場合、ギンと引き離されて国に理不尽に利用されるか。
「…わかった…レナ、助けて…」
唯一の親友にルカは素直に助けを求めるのであった。