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13話 馬鹿貴族に発見されるルカ

 「へっくちゅん!! うぅ~~これでくしゃみ何度目? もう、どっかの貴族が私とギンをどううまく扱うか話してるのかな…はぁ…」


 ノートを閉じ危機的状況を脱する方法が浮かばずルカはうなだれる。


「う~~せっかくの私の自由な日々が。また城の窮屈な生活なんていやだよぉ~~」


 ルカはノートに挟んでいた国王の持っていた同じ古い写真を眺める。


 ルカの本名ルーカルナ・クラントリー。


 クラントリー王国の既に死亡したと思われていた第一王女だった。


 写真には若かりし頃の両親である王と王妃。そして、幼いルーカルナ王女と共に魔物の襲撃により死亡した双子の弟「ギルン・クラントリー」が写っていた。


 王族の子は現在第二王女エレナ・クラントリーを残し、双子の子供は魔物に食われて亡くなったと一般的に知られていた。


   廊下の方からドダドダと駆ける音が聞こえ、ルカはノートと机に戻し写真をポケット入れて慌てて机の上に上る。


「やばい、やばい…よいしょ」


 あらかじめ開けていた天井の板を外し、天井裏に隠れ板を元に戻す。

 部屋に何人もの学生が入ってきて、ルカは息を殺した。


「くぅ、ここにもいない」


「もしかして学食の方かしら、あの子。結構大食いで有名だったから…」


「なんとしてでも探せ!! 見つけた者には報酬をさずけるぞぉ!!」


 部屋から出ていく学生たち。皆、英雄からサインをもらいたい。握手してもらいたなど言い。中にはルカを捕まえドラゴンを手に入れるために傭兵や人さらいの犯罪者まで投入する者もあらわれてしまった。


(ルカ…)


「…もう、これダメだね…、学園には…ううん。この大陸にいられない」


 学園のはるか上空にいるギンの声に寂しそうに答える。


 身バレしたらこうなる事はわかっていた。


 親しくしていた友人たちが自分を見る目を変え「英雄」としか見なくなる。平民、貴族問わずとにかく自分とコネを持とうとくだらない争いが起き、人の心が醜く魔物みたいになる。


 憧れていた物語の主人公が身バレした時の絶望が今、自分に起きてしまった。


(…まぁ、そもそも死んだはずの王女が普通の生活なんてありえないんだけどね)


 幸いにもルカのもう一つ身分である王女の事は知られていない。

 知っているのは現国王である父と身近で極小数の大臣のみだった。


(ルカ、今すぐ学園から逃げる?)


「そうだねぇ、急がないと捕まりそうだし」とギンに答えながら天井の穴から部屋に入る。


「まずは、逃走用に確保してた資金を庭の土から出さないと…げっ!!」


「まさか、平民のお前が例の女だったとは….城からの召喚状がでている。来い」


 右手にコンパス|《探知機》と城からの召喚状を持ったレイドが現れた。


(こんな時ににぃ!! なんで面倒なのがいるのさぁ!!)


 内心レイドを罵倒しどう逃げようか考えていると、レイドが探知機を床に捨てルカの手を強く握った。


「痛っ!!」


「あのドラゴンはどこにいる? 魔物を屠ってきた力はあのドラゴンが与えたのか?」


 レイドはギンの事をしつこく聞く。こんな小娘があんな力を使えるのはドラゴンのおかげだ。なら、自分もドラゴンから力を手に入れてやると興奮していた。


 野心を露わにするレイドを見て気持ち悪くなりルカはシルバーレイ|《銀の光》をレイドに放とうか割と本気で思っていたら。


「この外道がぁぁ!! 銀の竜騎士シルバードラグナー様に汚い手で触れるなぁ!!」


 先日まで銀の竜騎士シルバードラグナーを毛嫌いしていたアーネが疾風のごとく部屋に突撃し、レイドの顔に飛び蹴りをかました。


「ぐへぇ!!」


 騎士団の団長として鍛えられた脚力。


 その飛び蹴りを顔に受け鼻と口から血を吹き出し、部屋の壁にめり込むレイド。


「え? ちょぉ!? 何事!!」


「ご無事でしたか、銀の竜騎士シルバードラグナー様!!」


 自分より位が上のはずの貴族に蹴りをいれた罪悪感などなく、アーネはルカの前に膝をついた。


「え? え~~!?」


 銀の竜騎士シルバードラグナーが嫌いであった友人の姉の激変に驚くルカだった。





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