12話 一方、権力者たちは
ルカが一人部屋の中で長い回想をしていた頃。
「まさか、我が国の者が例の竜騎士だったとは…しかもまだ学生とは…」
高級な調度品がおかれた城の会議室にて、王やこの国の重鎮たち時折ため息をつく。
既にルカの正体について噂は国外へ漏れてしまった。
大陸中の人々がルカに感謝の言葉を述べるために、押し寄せてきて大混乱になっている。
しかも、ルカの身柄を確保しようと怪しい一団まで動き始め、国の騎士団や魔法師団たちも寝る暇もなくルカのいる学園の周囲を守っていた。
「どうしたものか…既に、いくつもの国から救世主様を独占するな。と苦情も来ている…」
「我が国が仕掛けた事だから、これまで被った被害を全て弁償しろとまで苦情がきています…」
「まったく、これならそのまま正体が知られなかったほうがマシだった」
今まで助けてくれたルカに対し「厄介者」とため息をつく大臣や上級貴族達。
「落ち着け皆の者…今まで我が国だけでなく、この大陸を救ってくれた英雄にその言葉は失礼だろ…まぁ、正体が分かった以上、そのままと言うわけにはいかんがな…」
老年の国王は臣下たちをなだめつつ今後のルカの対応を話し合う。
まずは国民を落ち着かせるためにルカとドラゴンの姿を城から眺めてもらい、その後は国々を回ってもらいつつ、今後の国の繁栄のための交渉材料にフル活用。
後は適当な土地に住んでもらい救世主の住まう場所として聖地にして利益を得る。
さらに、魔物の襲撃があれば討伐してもらう。
銀の竜騎士を見世物、国に利益にする交渉材料や維持のかからない戦力として話し合いになっていた。
会議がだいぶ長引き、国王は一人自室で夕日を眺めていた。
(すまんのう…こうでもしないと多くの者が納得しないからな…)
国王は高級な棚の上に置かれた古びた写真を眺める。
写真には国王と既に他界した王妃。そして、王族の子として生まれた3人の子供が写っていた。
「まったく、ドラゴンと一緒になった後は大人しくしていろと忠告しておいたのだが…我が子ながらとんでも無い事をしてくれた…」
国王は疲れた様子でつぶやいた。
「エレナはともかく、あの二人は本当にやんちゃだった頃の君にそっくりだよ…マリア」
唯一存命している病弱の第二王女のエレナと、他界している王妃マリアの名前を呼びどこか遠くを眺めていた。