11話 (回想6)竜騎士の捜索と発見
森の館での戦いから数日後。
ルカはいつもどうりに学園の授業を終えて、学園の中を適当にぶらついていた。
(ふぁ~たくっ。貴族ってなんで偉そうにしたがるんだろうね。あぁ~~来週は誰助ければいいんだろ)
次の週の契約ノルマをどう達成するか思考する。
この一年で犯罪組織や魔物をほとんど壊滅させてきて、ノルマ達成のための予備がそろそろ切れかかっていた。
(下手に動くと自作自演の奴らにでくわすからね~~)
ルカとギンを捕獲するためどこかの国が奴隷商人に成りすまし捕獲の罠を張られた事もあった。
その時は本当の奴隷はおらず、全員が兵士や冒険者など実力者ばかりだったので8割程度の力で全員を黙らせた。
後にこの馬鹿な捕獲作戦を実行した国は周辺の国々より
「銀の竜騎士様を怒らせて、もう助けてもらえなかったらどうするんだ!!」と大バッシングを受け、国王は引退。大臣や重鎮は総入れ替えで、作戦に参加した兵士や冒険者たちは降格や除名など罰をうけるなど悲惨な目にあっていた。
(あ~もう。これじゃぁ、契約がきれちゃうじゃない…いや、別に事件起きろとか、起こせとかじゃなくて…魔物も少なくなってきてるし…もう、別の大陸に行こうかな…っ!!)
「きゃぁ!!」
「くぅ!!」
考え事をしていたら曲がり角にいた人物とぶつかる。
ルカは倒れ、ぶつかった人物は手からコンパスを落とした。
「お前は…この間の平民!!」
「げっ!?」
目の下に隈ができてるレイドを見て思いっきり嫌な顔をしたルカ。館で散々罵倒しまくったのを思いだし「すみませんでした!!」と急いでその場から逃げた。
一方でレイドは落としたコンパスこと探知機を拾う。
館の貴族がギンに放ったアームに付着した液体を探知する装置と逃げるルカを見てレイドは叫ぶ。
「おい!! まて!!」
レイドの手にあるコンパス型の探知機は逃げるルカに向けまばゆい光を放っていた。
「どういう、ことだ…なぜ、あの平民に反応した…まさか…」
レイドは先日、銀の竜騎士から受けた罵声の声とルカの声を思い出し徐々に確信に変わる。
ルカは知らなかっただろうが銀の竜騎士にボコられた館の主は意識を取り戻すと「ドラゴンが!! 私のドラゴンを早く追わなくては!!」と叫び、探知機の存在がレイドたちに知られることになった。
探知機の反応に従い館の後始末を放り出し休まず調査を続け学園にたどりついてルカと遭遇した。
レイドは取り巻き達を使いルカの素性を洗い始めた。
ルカの友人たちから最近の様子など聞き出し、いくつか判明したことがある。
・時折、授業中に抜け出してすぐに戻ってくることが多くなった。
・銀の竜騎士が現れた日はルカを見ていない
銀の竜騎士がこれまで現れた日や時間。ルカが姿を消していたタイミングを照らし合わせてみるとほとんど一致してしまった。
レイドと取り巻きらの中で銀の竜騎士=ルカの図式が当てはまった。
ただ、探知機が反応したのと姿が消した時間が同じだけではまだ根拠が薄いはずなのだが、取り巻き達が自分達の知った秘密を「自分の手柄にしたい」と権力者や友人さらに家族にまで話してしまった。
悲しきかな、上司の普段の行いが部下に影響を与えてしまい手柄欲しさのために噂が広まり、ついには人々の頭の中にも銀の竜騎士=ルカが刷り込まれてしまった。
たった数日で噂が国どころか大陸中に広まり、ルカはもはやまともに外を出ることもできなくなってしまったのだった。