10話 (回想5)竜騎士とレイドの出会い
(ちょっと~~いきなり飛び降りるなんて危ないよ!! こんなかすり傷なら大丈夫なの知ってるくせにぃ!!)
首にかかった三本爪を自力で外したギンが、ブチ切れてアームを発射したデブ男に暴力を加えるルカを慌てて止めに入る。
(それでもぉ!! 大切な相棒に傷をつけた、このデブは!! 神が許しても、私はぜっったいに許さない!!)
かすり傷程度でブチ切れる相棒を見て嬉しさと戸惑いが半々にあるギン。
前にも魔物から助けた貴族から「ドラゴンを言い値で買う」と言われた時は、ギンが止めなけらばその貴族は魔物に食われた方がマシな目にあっていた。
ドラゴンである自分を見れば名誉や地位。金になると邪な人間しかいなかったが、かすり傷がついた程度で相棒のために憤怒するルカにやれやれと首を振るルカ。
「そもそも、てめぇが魔物の捕獲なんてアホな事しなければ、こんな無駄な苦労しなくてよかったのにぃぃぃ!!」
ギンとの契約。1週間に一度誰かを助けるは何度助けても次に持ち越せないしストックできない。
本当なら調査だけで後日、ノルマクリアのためにとっておこうとしたのだが台無しにされた怒りも含めて、不正により贅の限りで太くなった男の腹をけり上げた。
「げぼぉ…」
ルカに蹴り上げられ、壁にめり込むデブ男。吐血と一緒に胃の中の物も吐き出してしまい、汚物の匂いが広がりルカの鎧の下の顔が歪む。。
「うぁ、汚い…もういや、早くいこう…」
「おい、まて!!」
ルカはギンに乗ろうとしたが、レイドたちに呼び止められる。
(うわぁ~~手柄取りに仲間見捨てた馬鹿貴族だ…とりあえず、無視無視)
自分の地位にしか興味のないレイドに関わりたくないと無視を決め込む。
だが、レイドは杖を抜き火球を放つ。
(げぇ、攻撃してきた!! もう、面倒だなこの人!!)
ルカは自分に向かってきた火球を片腕で粉砕した。
「なっ!? くそぉ!! 抵抗するなら、手加減はいらねぇよな!!」
「レイド様!! さすがに、銀の竜騎士を攻撃するのはまずいですって!!」
取り巻き達が止めに入るがレイドは魔法を放つ。
国民達に慕われている英雄に攻撃したのが上に知られれば、自分達が悪者扱いされると知り取り巻き達は冷静だった。
だが、レイドは銀の竜騎士に手柄を横取りされたのと無視されたことでプライドが刺激され顔を赤くしていた。
(もう、これだから、馬鹿貴族はぁ!!)
鎧のおかげで体に傷はないが、ストレスで精神の方がやられそうだった。
ルカは怒りながら手を頭上に向け、昨日北の砦で放った極太のシルバーレイ|《銀の光》を放つ。
一瞬夜が朝になり、館の屋根が吹き飛び大きく揺れた。
「ぐぁぁぁ!!」
レイドや取り巻き達は目をきつく閉じ、光の衝撃に膝をつく。
光が消えた後。ルカは吠えた。
「いい加減にしろぉ!! 貴様は仲間を見捨て、敵を見誤り。それでも貴族か!! 恥じを知れ!!」
「なぁ!?」
ルカは怒りのあまりに貴族以前に人間として失格。貴様は力を持つべきではない。など感情を爆発させ、言いたい事を吐きまくった。
(お~い、ルカ。さっきの光のせいで騎士団の人たちこっちに来てるよ? 早く帰ろうよ?)
(くぅ!! もっと言ってやりたいことがあったのに!! ちくしょう、覚えてろ!!)
この無能貴族が!! と罵声を最後にギンに乗り飛び去っていく。
(…やつの声、どこかで聞いたことが…ん、なんだ? このコンパス…は?)
ルカに罵声の言葉を吐かれ呆然としていたレイドは傍に落ちていたコンパスを手にした。