33:回顧
顔が熱くなる自覚があった。ええと、彼女はなんて言った? 身体の方に興味が、だなんて――俺はそう思われても仕方のないことを……した、のか?
答えなければ、という思いで「あの……」と切りだしたものの、続かない。何を言えばいいんだ、俺ってやつはほんとうにもう――
「あの俺、そういう男に見られてた……?」
恥ずかしさと自己嫌悪で俺は完全に片手で顔を覆って、呟くように言った。
「そういう男?」
彼女が繰り返す自分の台詞に、俺は自分をぶん殴ってやりたいくらい情けない思いで顔を隠していたけれど――説明すべきことはしなくてはと思い直して顔をあげる。
彼女は、俺を見ていた。質問の裏に何か思うところがあるようなそんな口調ではなく、単なる質問なのだろう、とその表情で理解した。
それなら――俺もまっすぐ伝えれば、いい。
「あんたを守りたかったから。――それだと、答えにならないか?」
「私を、守りたかった」
彼女の口から繰り返される自分の台詞は陳腐だ。情けない思いで口の中に溜まった唾を飲み込むと、俺は頷いて、そして戸惑いながら言葉を探しつつ、続ける。
「抱きしめることであんたを守れるかどうかはわからないけど、ただ、俺があんたを守りたいと思ってるってことを、示したかった。――でもそれ、言葉で言えば良かった。いきなり抱きしめたりとかは……失礼だよな。ごめん」
言葉にするうちに落ち着いてきた俺は、言い終えてもう一度頭を下げた。ごめん。本当にごめん。謝罪の気持ちが彼女に伝わればいい。そしてもし出来るのなら俺が彼女を守りたかったことを正確に受け止めてくれれば――俺としては御の字だ。
そっと頭をあげると、彼女は表情を変えずに俺に向かって手を伸ばす。
え、と何かを予想する前に、彼女の両手が俺の首に巻きついた。巻きついて肘を曲げれば……彼女の身体が俺にぴたりと吸いつくように、寄り添う。
その状況を理解するのに俺はたっぷり一分はかかったと思う。彼女が俺を抱きしめている――ああ、さっき、俺は言ったんだ、あんたを守りたい、って。それを示すために抱きしめた、って。
彼女の気持ちは俺にストレートに伝わってくる。それはつまり……彼女が、守りたいと思ってくれていること。
耳元に彼女の吐息が触れる。俺の感覚が耳に集中したその時――彼女が呟いた。小さな声だったけれど、俺の耳は確かに聞いた。
「私――嫌じゃなかった」