11:吐露
しばらく言葉を捜したけれど……焦る時はなかなか正しい言葉が見つからない。彼女はそんな俺を涙を零したまま、見つめてた。
「……ごめん」
俺がやっと言えたのはそんな科白でだったけれど、彼女は微かにふるふると首を横に振った。
「いいの。ありがとう」
「いや、そうじゃなくて」
今言わなければ、と俺は何故だか焦った気持ちだった。今俺が感じてることを今彼女に伝えないと。そうしないと何かが逃げていってしまいそうだった。
「俺、わかるよ。あんたの気持ち」
慌てて言う俺の言葉に、彼女が何か言おうとするのを俺は手で押しとどめた。
「嘘じゃない。あんたに気を遣ってるわけでもない。――だってそうだろ? 俺があんたに気を遣う必要なんてないわけで」
彼女との会話の中で最も長いセンテンスだったような気がする。そしてそれは妙に彼女には不釣合いだった。
「そうね」
ぽつりと彼女は言った。そしてゆっくり視線を逸らすと、鉛色の空の下で揺れるピンクを見つめる。
「その通りだわ」
その口調がどこか淋しげで、一瞬俺は怯み、次の言葉をつい、飲み込む。
でも。伝えたい。理由はわからないけど今、俺は彼女に俺が本当に感じた気持ちを伝えなくちゃならないような、そんな気がしている。
「わかる、っつーのもオコガマシイかもしれないけど。あの夜、俺、多分あんたと同じ気持ちだった。夜に桜、見上げ――え?」
ああ、なんでうまく言えないんだ、俺。こんなんじゃ何も伝わらない。
もどかしく言う俺の言葉を途中で止めさせたのは……彼女の細い手、だった。くるりとその身体が俺のほうを向いて、傘を差しかけてた俺の右手にふとその手が触れる。その感覚に俺はそこへ視線を止めて言葉を切った。