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第1話 いまだ存続してる世界



 最後に記憶に残っているのは、死にゆく俺を黙って眺め続けている魔王の姿。

 俺の意識は、死の気配に引き寄せられて、深淵にのまれていった。


 魔王に挑んだ勇者は倒された。


 攫われた聖女の、歪んた旋律……死の歌声を聞きながら。


 魔王の力と堕ちた聖女の力によって、世界は呪われ、枯れ果てていく。


 その瞬間世界中の人々は、どんなに絶望しただろう。


 勇者なき世界の始まりは、終焉の始まりと同じ。

 絶望に満ちた未来が、訪れるかに思えた。


 しかし、なぜか……世界は存続していた。




 魔王に殺された勇者、こと俺。

 心臓を貫かれたはずの俺は、どうやら転生したらしい。


 赤ん坊になって、どこかの田舎の家の子になっていた。


 俺が勇者であった記憶を思い出したのは、この体で五歳頃の事だ。


 世界はまだ穏やかで、様々な種が存続していて、人々は根絶やしにされていなかった。


 魔王もどうしてだか、主だった活動を行っていないようだ。


 俺の記憶の限りでは、あの過去の時代に、勇者である自分以外で魔王に太刀打ちできる存在などいないはずだった。


 不可解な現状に頭を悩ませる俺は、修行を積んで、前世でお世話になっていた王宮へ赴く事にした。


 国では、大々的に魔王の討伐のパーティーメンバーが募集されているらしい。


 多くの果敢な者達は、いくつもの優秀なパーティーを作って、どこかへ消えてしまった魔王を探しているらしい。


 魔王の行方についての手がかりは、まったくない。


 しかし人々は、魔王の恐怖を忘れていなかった。


 いつ、復活するのか気が気ではないといった風に、様々な憶測がとびかっていた。


 そんな彼らを放っておいてもよかっただろう。


 新しい人生を歩んでもよかったはずだ。


 だが俺は、再び勇者として生きる事を決めたのだった。



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