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14:再びダンジョンへ

 セリアが事務手続きに耽っている間、クロノスは壁際でソフィアと小声で今後のことを話し合った。


「予定通り公の場でレオンたちと勝負に持ち込めたよ」

「とはいえクロノスさま。あの男たちは黙ってこのままフェアな勝負をするとは思われません」


「そのときはそのときだ。私闘は許されないという建前だが、自衛の戦いは暗黙の了解で許されている。そもそもダンジョンの中ではどれだけ死人が出ようがわかりはしない」


「わかってはおりますでしょうが、妙な慈悲はかけませんように」

「降りかかる火の粉は全力で払うさ。誰が相手だろうと」






 かくしてクロノスとレオン率いるS級冒険者パーティーのドラゴン狩り競争が始まった。

 悪の化身でありダンジョンマスターが使役しているといわれるエビルドラゴンが棲む最深部の五十階層はクロノスが追放の宣告を受けた因縁の場所だ。


(あのときは準備不足で死にかけたが、今日は違う)


 対決の誓いを立ててから数時間後――。

 クロノスは市内にあるレイジュのダンジョン入り口前で武者震いに震えていた。


 使い慣れたザックでも最大容量を誇る二百キロ級を背負うと、さすがに重みがズシンと骨身に染みた。

 装備と食料を満載したザックの重みに軽くふらつくが、歩いているうちに慣れるだろう。


「それでは絶対に勝ちましょうねクロノスさま!」


 ソフィアが小さめのザックを背負ったまま楽しそうにグッと拳を天に突き上げて気合を入れた。


「及ばずながら私も加勢するわ。あんな底意地の悪い裏切り者が襲ってきてもケチョンケチョンのギッタンギッタンにしてあげるから大船に乗った気でいるといいわ!」


 ソフィアの頭の上でぽよんぽよんと跳ねているピーチスライムのトルテが蒼い怪気炎を上げている。


「頼もしいな。マジでふたりには感謝してるよ」

「クロノスさま……」

「もう、そんなに持ち上げたってなんにも出ないぞ♪」


 松明の乏しい灯でうにょんうにょんと身体をねじれさせるスライムの存在はちょっと不気味だがクロノスは敢えて指摘しなかった。


 ――行くか。


 ブーツの爪先が湿ったダンジョン特有の空気を吸った石ころを蹴り飛ばした。


「といっても、魔方陣を使って五十階まで飛ぶだけだけだが」

「飛ぶ、とは?」


「ダンジョンの入り口にはギルドが作成した基地局となる魔方陣が置いてある。冒険者たちは、ほら、これが転移石。こいつに始まりの場所である位置のデータを記憶させておいて、あとは降りれる階層まで攻略したら、そこにセーブポイントである魔方陣を設置して戻ってくる。一旦、攻略をあきらめて退却しても、たとえば十階、二十階と好きな階層まで一気に飛んで再び冒険を始められるってわけだ」


「そうなのですか。便利ですね」


 ――前回は死ぬ思いだった。


 クロノスは前回行った瀕死の単独行を思い返し、怒りを新たにした。


 途中で追い出されたクロノスの荷物には帰るための転移石など当然なく、死力を尽くして五十階層から地上に戻ったのだ。


(その代わりといってはなんだが、今回はキッチリ五十階層の誰にもわからない場所に転移用の魔方陣を構築した)


「しかしクロノスさま。レオンたちはずいぶん先に出発したようですが。急がなくとも大丈夫なのでしょうか」


「……その点は気にすることないと思う。あいつらは偵探を軽視していた。地図だってロクに読めない。戦闘以外の雑事を馬鹿にしていたからな。唯一、ブレイグだけは抜け目ない性格だったが、本職ではないからな。苦労してるだろうさ。すぐに追いつく」




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