チートにはチート
デバックルームと言う物がある。
ゲーム開発者がイベントチェック、バグ探しやその他諸々を行いやすくする為の場所である。
各種イベントを自由に見る、ステータスや所持金を最大にする、全職種マスターにするなど様々な事が実行できる。
デバッグの為の機能を用意する事自体は、ほぼどんなゲームにおいても行われているが、それ用のアイテムだったり、外部から入力する特殊コマンドだったりと、その形態は様々である。
デモクエにおいては、実際にマップの中にデバッグ用の「部屋」を用意する方式だ。
大抵のゲームは作品完成段階でデバッグルームが削除されているが、デバッグルームそのものがプログラムとして組み込まれている都合上、削除が原因でバグが生まれる可能性もあるため、通常の方法では到達できないように処置を施した上で、あえて残すケースもある。
ちなみにそれはデモクエ3で実在する。
恐らく聖域と奴らが言っていたのはここだろう。
ここなら世界の法則全てを変更出来る。
竜神王はチートに手を染めたのだ。
【うがあああああああ、私の腕、肩、手がぁあああ!!何故!?Why!?どうして!?何故私に攻撃がはいる!?貴様!お前!汝!私に何をしたぁああああああ!!!??】
「お前達がチートをするなら、チートで返すだけだ。」
そう。俺の最終最後の隠し玉。
『魔鳥の翼』と魔法の袋を使ったバグ。
通称、魔鳥バグである。
俺がアイテムを増殖する為に使っている、デモクエ3のバグ技なのだが、実はこのバグ、それだけに留まらない。
やり方は簡単だが複雑だ。袋に魔鳥の翼を入れた状態で使うだけ。袋内のアイテムを置く順番や並びで、その効果は変わる。
今したのは奴の全ステータスを初期値に再設定した。
【これは・・・?お前!汝!竜神王様と同じ奇跡を起こせるのか!?聖域の御業を!!】
そうなのだ。実はこのバグ、チートと同じ効果がある。
その気になれば全アイテムを呼び出したり、ステータスを異常値に変更出来る。
異常ステータスが戻ったからか、徐々にまともに戻ってくるエルギオネル・クロウ。
「言い残すことはあるか?」
【ない。この世界から勇者を消すという事は、守るべき人間達を切り捨てると同義だ。その瞬間、私は天使ではなくなった。単なる魔王として切り捨てた前。】
魔王エルギオネル・クロウ。
人を愛した天使だった彼は、その愛ゆえに人を恨み、魔王に堕ちた。
「また。いつか会おう。」
そうして、狂った堕天使は塵となって消えた。