ダイは大冒険
【何故もがき生きるのか?滅びこそ我が喜び。死に逝く者こそ美しい。さあ、我が腕の中で息絶えるが良い】
詩的で荘厳な大魔王たる自負を帯びた台詞。
その言葉と共に、大魔王からの圧力が増す。
青白い肌を漆黒のローブで身を包み、第3の目が特徴的な帽子を被った異形の魔法使い。デモクエ3のラスボス。
大魔王ゾウマと俺は対峙していた。
神歌の指輪の効果により魔物に襲われないと言うのは、やはり圧倒的アドバンテージと言える。
ルビシアから皆がギアスの大穴に着いた途端にエルギオネル・クロウに襲われたと連絡があり、大慌てでここに来たのだ。
【もがく者よ。何故絶望しない?この世界の向こう側では、竜神王により狂わされた魔王が暴れているらしいな?仲間を助けに行きたいのに、貴様は助けに行けない。それなのに何故そうも立ち向かって来れるのだ?】
おや。流石、大魔王。外の情報も把握している様だ。
そうだな。一言で言うなら俺の中の大魔道士が叫んでいるからなんだが、やはりこの台詞を使わせてもらおう。
「お前を倒せばこの世界の結界が消える。結界が消えれば転移魔法で皆を助けに行ける。順番通りじゃないか。何がおかしい?」
【く、くく、くはははははははははははは!!
何を言っている!貴様の仲間は既に虫の息、そして貴様は我に殺される!足掻くだけ無駄と言えよう!】
悪役の3段階笑いをかますゾウマ。
くそ!何を笑う!
ダイ大は名作なんだぞ!
「なぁ大魔王。お前は何年生きれるんだ?百年か?千年か?それとも死なないのか?」
【何を言っている?】
「アンタらみたいな・・・・」
そこでふと止まる。
作中の台詞はバッチリ覚えている。名言だ。
アンタらみてえな雲の上の連中に比べたら、俺達人間の一生なんてどのみち一瞬だろう!?
だからこそ結果が見えてたってもがきぬいてやる!
一生懸命に生き抜いてやる!
残りの人生が50年だって5分だって同じ事だっ!
一瞬・・・!だけど閃光のように・・・!
まぶしく燃えて生き抜いてやる!
それがおれたち人間の生き方だっ!
・・・駄目だ!恥ずかしい!
俺にはこんな台詞を言える程の若さが足りない!!
「・・・まぁ、その、なんだ。時間ないんだし、さっさとやろう。」
かつてない程のローテンションで戦いが始まる。
【・・・ふん。興醒めだ。】
あれ?ゾウマもやる気なくしてない?
ゾウマが気だるげに手を振ると俺の隣に黒い渦が現れる。
【その先はギアスの大穴の縁に繋がっている。さっさと行け。】
え。いいの?
何?ツンデレ?
【大魔王と勇者の神聖な戦いをこんな横槍が入った状況で進めたくない。竜神王の思惑に乗るというのも癪だしな。我としては奴の考えはどうでもいい。我等の目的には関係ないからな。】
竜神王関係の自体はここに居ながら掴んでいるらしい。
先程ルビシアから話は聞いたが、俺としても、実は特に思う所はなかったりする。
勿論死ぬ気はないし、世界の為に殺されてやる気はないが、世界改変や勇者因子を無くしたと言っても誰が死んだ訳でもない。
この世界には勇者がいても魔物や魔王はいるんだしな。
「ありがとう、と言うのは変かな?」
【やめろ。虫唾が走る。】
ははぁん?やっぱりツンデレか?
ドカンと俺の足元に魔法が落とされる。
あれ?俺何も言ってないぞ?
あ!・・・まさか!
【我は散り際の儚く散る死の一瞬を愛でるが、貴様は閃光の様な一瞬の人の生き様を愛するのだな。勇者よ。】
何サラッと人の心を読んでんだ!
この悪魔!大魔王!
【また合間見えよう。勇者よ。その時は貴様達の一瞬の輝きを見せてくれ。】
やはりダイ大。正式名称デーモンクエスト外伝 ダイの大冒険物語は偉大だったと証明されたのだった。