導くもの達
真っ白な空間。
上も下もなく、ただそこには2人の神が浮いていた。
『こんな所にいたのね。竜神王。』
『ルビシアか。』
『何その格好?わざわざ世界を改変して、こんな所で何をしたいの?』
ルビシアの前にはまるでバーテンダーの様な姿した壮年の男が立っていた。
丸いメガネをかけ、ちょび髭を生やした怪しい男だ。
『どうだ?人間の姿を取ってみたんだが。この姿の時はプタンと名乗っている。』
そう言いながら手をかざすと、二人の間にテーブルと椅子が現れた。テーブルの上には紅茶が乗っている。
『長い話になる。座りたまえ。』
ルビシアは驚愕した。
竜神王、プタンは何も無いところからテーブルセットを創造した。
勿論、神たるルビシアもそれは出来る。
出来るがあそこまで自然に何でもない事のようには出来ない。
やろうとすると数日以上の時間を有するだろう。
『創造神たる私以上の力ね。それがこの聖域の力って訳?』
苦虫を噛み締めた様な顔のルビシア。
『そうだ。実際素晴らしい力だよ。この世界全てを思うがままに改変し、創造出来る。まぁ件の世界全体の改変には苦労したがね。』
ドカりと乱暴に席に着くルビシア。
不機嫌な様子を隠そうともせずに話し掛ける。
『それで。何でこんな事をしたのよ?勇者因子を完全に消して、この世界のデーモンクエストの因子をごちゃ混ぜに作り替えた意味は何なのよ。』
『そう。そのデーモンクエストが原因だよ。結局、この世界はかの世界の影響を受けざるを得ない。私はね。この世界を独り立ちさせたかったのだ。』
この世界はシュウのいた世界の影響を常に受け続けている。
デーモンクエストの続編が出れば、それに合わせて歴史を始め、様々な要素が改変される。
完全な主従の関係と言えた。
『・・・なるほどね。動機は分かるわ。共感も出来る。
でも、勇者因子を消した理由は?』
勇者因子を消した事で完全に光と闇のパワーバランスが崩れてしまった。辛くもかの世界より勇者を召喚出来たが、そうしなければこの世界は悪魔に乗っ取られていただろう。
『その勇者が原因だったからさ。
知っているかね?かの世界の人間達は勇者としてこの世界を冒険するそうだ。勇者因子こそが、この世界とかの世界を繋ぐ大きな要素だったのさ。
デーモンクエストの要素がごちゃ混ぜになったのはその影響
でしかない。』
あぁ。なるほど。分かってしまった。
神たるルビシアには、プタンの気持ちがよく分かってしまう。
世界としての独立。
そしてそれはこの世界に魔物を含めた生きとし生ける者の為とも言える。
新たなデーモンクエストのタイトルが出る度に改変される世界。
この世界には絶対たる法則がない。
それは世界としての歪さ故、極論、昨日まで生きていた生物が、明日には消える可能性さえある。
『エルギオネル・クロウには勇者因子の排除を命じた。この世界の為、彼には死んでもらう必要がある。』
『別にアンタの考えを否定はしないわ。
でも、それはこの世界全ての人間を殺すと言う事に他ならない。それは私として看過できないわね。』
にぃっと笑みを作るルビシア。
『人間舐めてんじゃないわよ?』