チーター
「行きますわ!『極大火炎魔法』!!」
「ぶっ飛んじゃえ!『極大爆発魔法』!!」
「刻め!『剣舞踊』!!」
【フン!『極大放出魔法』!】
「駆け向けろ!『怒涛の羊呼び』!!」
リリーの祝福により倍加された魔法とスキルが、壊れた魔王を襲う。
カンストされた魔力から放たれた極大クラスの炎と爆発、究極魔法が倍加され、さらに山彦に導かれ2重となった、魔法。
圧倒的な技量と極められたステータスを込められ、倍加された4連撃の斬撃。
ぶっ壊れスキルと揶揄された羊の大群が空を駆け、魔王に殺到する。
ゲームでは2800程度のHPしかないエルギオネル・クロウに耐えうるはずのない攻撃である。
しかし・・・。
【ふははははははははっ!!効かぬ!朽ちぬ!滅びぬ!この程度で竜神王様に祝福された我をどうにか出来るものか!】
爆煙が晴れた後から出てきたのは、変わらぬ姿の狂った魔王であった。
「シュウの言っていた『暗黒の衣』と言うやつか!?』
「ち、違うよ!お父さん言ってたもん。リリーの祝福やブラドの魔法なら衣を外せるって言ってた!」
【単純な話だ。奴は改造されたんだよ。HPが桁違いに増えている。それにステータスも。】
デモクエではステータスの数字の上限は、魔王ですら999である。シュウはそれを裏技やバグ技でカンストさせていたが、この魔王はそれを超えて桁違いに増えていた。
それは正にチートと言えた。
【あぁ。そうか。竜神王は聖域に触れたんだな!?その異常なステータスも!世界の理の変化も!全てそのせいか!!】
【せ、せい、生、性、製、聖域ぃい!!!!!そう!そうだ!そうなのだ!そうデスとも!遂に!ついに竜神王様はあの聖域を手中に納められたのだぁ!そして、私に私に祝福をお与え下さったァァァァァァ!!!】
過剰なステータス改造によるバグ。
それが魔王エルギオネル・クロウを狂わせた原因であった。
「だからどうした!敵が強いと言うだけだろ!?『剣舞踊』!」
ステラが吠え、追撃を叩き込む。
「ええ!そうです!敵が自分より強いなんて、私にとってはいつも通りです!『聖なる十字架』!」
戦姫の剣舞と、名実共に聖騎士となったリリーの熟練度10スキルが狂った魔王を襲う。
【きかぁああああああああぬ!!!】
咆哮と共に放たれた黒炎のブレスが辺りを覆う。
「氷炎防御!・・・きゃあ!」
フィルの防御魔法を超えて全員にダメージが入る。
ステータスの桁が違いすぎるのだ。
一撃で形勢は決した。
全員が倒れ伏す中、ただ1人狂った魔王が祈りを捧げる。
【おぉ!偉大なる竜神王様!貴方の祝福が勇者の仲間共を倒します!感謝を!圧倒的な感謝を!!こんな私に祝福を頂き、感謝感激でございマス!!】
その姿は、何処までも哀れに見えた。