お約束
さて。デモクエの転職システムが判明した。
元々転職システムが実装されたのがデモクエ3の時だ。この時のシステムは転職と言うより、今で言う転生に近い。
魔法自体は覚えたままだが、完全にレベル1からの状態でやり直す必要があり、ステータスに関してもその職業の基準で1からのスタートになる。
要は、戦士の力と武道家の速さを兼ね備えた魔法使いと言ったハイブリッドが出来ない仕様だったのだ。
この時にはまだ上級職などもなかった為、賢者等の1部の優良職に転職する以外にメリットは殆どなかった。
そこで、デモクエ6から熟練度と言うシステムが実装された。
いわゆる、第2世代転職システムだ。
レベル自体は転職しても据え置きで、その職業の熟練度でスキルや魔法を覚える。
ステータスに関しては職業の影響を受けて増減はするが、そこは上級職なども実装され、カバー出来る仕様になっている。
つまり、万能型の戦士を作りやすくなっている訳だ。
第3世代からはオンラインを意識しているらしく、特化型になりやすい様に、転職したらレベル1からの仕様に戻されている。
ただ、気に入らなければ元の職に戻ればレベルやステータスも元に戻る親切設計だ。
よりパーティ毎の役割分担を意識させる仕様になっていると言える。
ちなみに俺は1人で黙々とやり込む派だったので、第2世代が1番好きである。
仲間全員をレベル、ステータス、職業、熟練度をカンストさせたのは良い思い出だ。
友達も彼女もいない?
そんな事実はゴミ箱にポイだ。
時刻は夕暮れ。
ベリーオラトリオの街の入口でステータスを確認する。
「よし。今日は、と言うより、この作業もこれで終わりだ。ありがとう。リリー。」
ステータスウィンドウに輝くレベル99の文字。
この世界に来て3日目。
先ずはレベルをカンスト出来た。
リリー様々である。
「え・・・。と言う事はもうこの仕事は・・・。」
「何を言っている。明日はいよいよ魔物狩りを行う。装備はこちらで用意するので大丈夫だとは思うが、万が一がある。気を抜くなよ?」
昨日あれだけ酔っ払って醜態を見せてしまったので、気恥しさを誤魔化す為に、少し早口でまくし立てる。
「はい!宜しくお願いします!」
うむ。いい返事だ。
明日で最後なんですね、とボソリと呟いた一言はスルーする。
危うく勘違いしそうになるぜ・・・!
好意は何となく感じるが、2回り以上離れてるのだ。
現実的ではないだろう。
そもそも好意と感じているのも、俺の勘違いの可能性も高いし・・・。
「・・・あー、そうだ。良かったら飯でもどうだ?今日は孤児院には行かずに帰るんだろ?」
取り敢えず話題を強引に変えてみる。
「え、あ、はい。そ、その良かったら・・・是非。」
顔を赤らめながら頷くリリー。
待て待て待て!
そのはにかんだ笑顔。確実にアラフォー童貞を殺りに来ているだろ!
夜のルイーゼの酒場はごった返していた。
よくよく考えれば、初日はリリーと食事をしながら契約内容を詰め、早い時間に引き上げたし、昨日は孤児院で食事を取った為、実は大多数の冒険者達と鉢合わせたのは初めてだった。
「おいおいおい!みそっかすリリーじゃねーか!まだ生きてたのか!」
「えらく立派なパトロンがついたみてぇだな!やっぱり女は得だな!みそっかすでも股を開けば生きていけんだからよ!」
ギャハハハ!と数人の男達が下品に煽ってくる。
漫画や映画でよくあるシーンだが、リリーを馬鹿にされるのは腹が立つな。
「す、すみせん。私のせいで・・・。」
「気にするな。奴らに品がないのも、君の良さを理解出来ない程頭が悪いのも、奴らの自業自得だ。リリーのせいじゃない。」
この時、俺は気が大きくなっていたんだと思う。
大好きなデモクエの世界でレベル99になり、立派な武具で身を固め、一端の武人を気取り、女性と食事に行くと言う初体験づくしの事態に酔っていたのだろう。
今までの俺はこんな事はしなかった。
危ない事は避け、ややこしい事態になる前に受け流し、やり過ごしてきた。
つまり、何が言いたいかと言うと・・・。
「あぁん!?何調子くれてんだ!?オッサン!?」
「みそっかすリリーの前で良いところ見せようってかぁ!?舐めてんじゃねーぞ!?」
「こっち何人いると思ってんだ!?」
「そのご立派な装備は俺達が使ってやんよ!?」
「オラ!飛んでみろよ!?」
「無事で帰れると思ってんじゃねーぞ!?」
まさかのアラフォーおっさんの初喧嘩である。
!?多すぎません!?