VSグラエル。
遅くなりました・・・。
「やぁっ!」
リリーの横薙ぎの剣が数匹の魔物を切り裂く。
雫で上げたステータスにも慣れてきた様だ。
「『怒涛の羊呼び』!」
召喚された無数の羊達が魔物の群れを一掃する。
もうこれ悪魔召喚とかそう言う別の何かだな。
少なくとも羊ではない(確信)
吹き溜まりの村で、目につく魔物達を倒しきる。
海から送られてくるので、1回の上陸で数百匹程度だろうか?俺達と言うより、羊達の前では無力なもんだ。
「ぅー。全然熟練度が上がりません。」
リリーはレベルを上げすぎた為に、熟練度のレベル上限に引っかかってしまったらしい。
「もうそこまで来たらレベルをカンストさせた方が早いな。今のレベルはいくつだ?」
「うそ。もう72まで上がってます・・・。」
まぁ、数が数である上に敵もそこそこ強い。
少し思い付いた事があるので試してみるか。
上手く行けば敵をおびき寄せられる。
【第1陣の壊滅は既にあの魚魔王に伝わっているだろう。となれば、このまま我々を倒せるだけの戦力を送り込むか、迂回して別のルートから神殿を攻めるか、悩む所だろう。】
正解は迂回だろうな。
所詮、俺達は精鋭でも少数だ。どれだけレベルが高くても広範囲の被害は止められない。
まぁ、そうならないようにこちらも敵の進行ルートを絞ったり、戦力を分散させている訳だが。
「釣れるといいですねぇ。」
「まぁ、物は試しだ。」
~~~~♪
2人分の口笛が海辺に響き渡る。
数分後。
サバっ!!ザバッ!ザバッ!ザバッ!
陸の魔物を背中に乗せた大量の海の魔物達が顔を出す。魔物8割り、海2割くらいか?
中々の大部隊だ。
【よし!釣れたぞ!敵の本陣だ!やはり我々を迂回しようとしていたと見える!】
「でも、す、凄い数です!」
敵の中央に一際目立つ太った半魚人がいる。
三股の槍を持ち、頭には王冠を乗せた巨大な魔物。
奴こそはデッドムーアに仕える魔王の一角。
魔王グラエルだ。
【貴様達が勇者共か!恐れ多くもこの魔物グラエル様を誘き寄せるとは不届き・・・】
「『大地の祝福』!」
「からのー、『極大雷魔法』!!」
【ぐわぁああああああああああああ!!】
リリーの祝福で倍加された、勇者のみが使える聖なる雷属性の広域殲滅魔法が、海の水を伝って魔物達を飲み込む。
【・・・お前達。様式美って分かるか?流石に口上の途中でこれは酷くないか?】
「隙を見せたら死ぬんですよ?」
流石、スライムに殺されかける村人のステータスを鍛え上げたリリーの一言は重い。
波打ち際には大量の魔物の死骸が流れ着き、塵となって消えていく。
グラエルはどこだ?
【こ、この程度で魔王たる私を倒せると・・・】
あぁ。良かった。
備えが無駄にならずに済みそうだ。
俺の指に付けた山彦の指輪が輝き出す。
この指輪は放った魔法を繰り返す。
つまり、2連撃である。
【ぬわあああああああああああああああっ!】
最初の一撃で生き残っていた魔物達と共に、魔王グラエルも塵となって消えた。
南無。