中腹の村にて
本日も少々仕事が立て込んでいる為、夕方の投稿が少し遅れそうです。
お時間がある方はお付き合い頂ければ幸いです。
「身体が軽い・・・!思った通りに身体が動く!」
転職を終え、雫をガブ飲みしステータスを最大限まで上げたリリーは絶好調だった。
「しかし、本当に僧侶で良かったのか?村人よりマシだが、ステータス補正もそこまで良くはないぞ?」
「はい!今から行く南側には村があるんですよね?
少しでも回復や補助が使えた方が良いかなと思うんです!」
なるほど。基本的に犯罪者の巣窟の様な村だが、魔物に襲われて傷付くのは捨て置けないと言う事か。
まぁ、ロンフーも何やかんやで良い奴だしな。
カンストしたステータスに任せて神殿からの村までの洞窟を踏破する俺達。
神殿解放の拠点にしていた中腹の村まで一気に戻って来た。
「ここも無人、ですか。魔物も人も全くいませんね。」
勿論、神歌の指輪は外している。
基本的にデモクエでは攻略後のダンジョンでも魔物は出てくる。まぁ、現在だと既に攻略されたダンジョンにそんなに魔物を配置しても意味はないのだろう。
「元々この村は神殿関係者が捕らえられていて、その後は神殿解放の拠点に使っていただけだからな。むしろ人がいる方がおかしい。」
「ローザタウン、カルカナ、そしてここでもシュウさんは、誰かの為に戦っているんですね。」
リリーからの尊敬の眼差しを感じる。
そうか。ベリーオラトリオからここに来るルートは限られているから、リリーが俺の痕跡を追うと、当然今までの戦いを知ることになるのか。
うーむ。単なる成り行きなのだがなぁ。
「だが、その最初の1歩を踏み出せたのは、リリー。君のお陰だ。」
「・・・っ!」
そう。俺が勇者なのだとしたら、間違いなくあの時踏み出した1歩が、俺を勇者にしたのだろう。
【イチャつくのは良いが、人がいるぞ。あの奥に2人。】
肩に乗ったブラドが中腹の村と吹き溜まりの村を繋ぐ洞窟の方を指差す。
「姉さん!姉さん!しっかりして!」
「サジ。私の事はいいから神殿へ逃げて・・・」
おぉ!あれはデモクエ7に出てくるシスコン弟と病弱な姉!
吹き溜まりの村の魂砕きのイベントに巻き込まれた姉弟だ。
あのイベントは大元の魔物を早々に倒してスキップし
たのだが、よもやこんな所で不幸な目に合っているとは・・・。これも運命なのだろうか?
「リリー。回復を!傷が深そうだから祝福で頼む。」
「はい!」
と言うよりも、回復と攻撃力アップならこのスキルだけあれば良いレベルである。なんせ消費MPは基礎回復魔法並の癖に、全体に全開回復だしな。
伊達に廃人ご用達スキルではない。
まぁ、MPや状態異常回復を考えると僧侶と言う選択肢はありなのだが。
緑色の光がリリーと病弱な姉(確かナーヴァと言ったか?)を包み込む。
うむ。落ち着いた様だ。
姉が助かったと見ると、弟のサジの方が必死に俺に懇願してくる。
「た、助けて下さい!勇者様!う、海から魔物が!」
もう来てしまったか・・・。