孔明気取り
重ね重ねすみません。
ぬぅ!仕事のヤツめ!
転移先は法の神殿のテラスだった。
そのまま視線を外に向けると、地平線の向こうまで魔物達が列を成している。
正に100万の軍勢である。
漫画版だと狭間の世界を治める魔王アクバルが10万の大群を率いていたと思うが、残り3柱と大魔王直属の魔物も合わせたらあれくらいになるのかね。
「おぉっ!シュウ殿!待ち侘びましたぞ!」
ツンデレ大神官がテラスに飛び込んで来た。
同じ飛び込んで来るなら、フィルがこの胸に飛び込んできて欲しい。
「後で好きなだけその胸に飛び込みますので、今は置いておいて下さい。
大神官様。現状はどうなっておりますか?」
「飛び?う、うむ。先程の伝令によると、お二人の聖戦士により、魔物の1柱を倒したそうです。その後、は戦線が膠着している様ですな。」
(ルビシア!聞こえてるか!?さっきみたいに俺達5人を念話で繋いでくれ!)
頭の中でルビシアを呼び出す。
『聞こえてるわよ。と言うより、何でいきなり呼び捨てで便利に使おうとしてくれてんのよ。』
(封じられてるのを助けてやっただろ!)
『まぁ、いいけどさ。ちょっと待ってなさい!』
初対面のやさぐれOL感から、俺の中ではもうルビシアが同僚にしか見えないのだ。
程なくして俺達の意識が共有される。
(リリー、ステラ、そっちの状況は!?)
(現在、神殿の東側に陣取って魔物の進行を堰き止めている!守備隊達も一緒だ!回復と補助にリリーもいるからな。当分は持つぞ!)
(魔物達は東側から攻め込んでいる様です。シュウさん。良かったら他のルートも確認して貰えますか?)
ふむ。法の神殿は西側に俺達の来た砂漠があり、東には平原、南には吹き溜まりの村と海があり、北には切り立った山が聳えている。
リリーは他のルートにも魔物がいるのではないかと考えている様だ。
有り得る話だろう。
しかし、どこから見て回るか・・・。
あぁは言っているが、2人には余裕はないだろう。
あまり時間を掛けたくない。
【騙し討ちや挟撃はごく当たり前の戦略だからな。ほれ。1柱泳ぐのが得意な魚の魔王がいたろ?】
魔王グラエルか!
となると南の海からの奇襲。
吹き溜まりの村を襲って橋頭堡にし、洞窟経由で神殿に攻め込める!
パズルの様に頭の中で戦略が組み上がる。
【ほう?気付いたか?貴様、筋は悪くないな。】
偉そうにブラドが褒めてくる。
まるで諸葛亮孔明の様にニヤリと笑うブラド。
悔しいが、流石は戦いの神と言える。
「腐っても戦神だな。どうやって相手の戦略を読むんだ?」
【なぁに。我クラスになると、人間や魔物の位置は気配で分かるからな。この地域一帯に誰が何処にいるかは常に把握出来ている。】
おい。それ戦略を読んだって言わねぇよ!
力技じゃねぇか。よくそれで孔明気取れるな!
褒めて損した・・・。