挑発
8日目。
地下10階層、封印の間。
ようやく俺達はお楽しみダンジョンの封印の間に辿り着いた。
戦闘こそスキップしたが、それでも流石の広さを誇るダンジョンだ。踏破するのにここまで時間が掛かってしまった。
「お父さん。すっごく今更だけど、何で大魔王を倒す前にここに来たの?」
ありゃ?説明してなかったっけ?
ミレーヌが首を傾げて質問して来る。
「大魔王の『暗黒の衣』をどうにかするのに、ここで戦神を倒す必要があるとは仰ってましたけど、具体的な説明はなかったはずですわ。」
フィルがフォローをしてくれる。
そうか。クリア後の特典だとは説明出来ないから、何となくしか説明してなかったか。
「本来、『暗黒の衣』をどうにかするには、特定のアイテムやら魔法が必要なんだが、今回はちょっと時間が微妙だ。まぁスキルでも突破出来るんだが、せっかくだし戦神の力を借りようと思ってな。」
ここのダンジョンは元々クリアするつもりだったしな。
やっぱり隠しダンジョンと言うだけあって、有益なアイテムも拾えたし、最悪ブラックドレアムは無視しても何とかなりそうな気がする。
「・・・シュウ様が大魔王や戦神を完全に舐めている事は伝わりますわ。」
「あぁ、それは私も何となく分かる。」
一応、警戒はしているぞ?
リアルだと死ねば死ぬからな。蘇生魔法とかも試したくはないし。
ゲームならブラックドレアム最短で2ターンキルなんだが・・・。
「ま、まぁそれはそれとして、奴は戦神と言うだけあって、自分より弱い者の言うことは一切聞かん。大魔王の『暗黒の衣』をどうにかしてもらうにしろ、奴との戦いは避けられないんだ。」
封印の間に入ると、おどろおどろしい祭壇があった。
まるで物理的な圧力を発する様な強い邪念が辺りに渦巻く。
【私を呼び覚ます者は誰だ。】
地の底から震えるような声が辺りに響く。
【我が名はブラックドレアム。破壊と殺戮の神なり。我は誰の命も聞かぬ。ただ破壊するのみなり!】
あたりに霧散していた邪念が1つに固まる。
虚空から異形の戦士が現れた。
鋼の様に鍛えこまれた褐色の肌。要所要所を守る黒い鎧には脈打つ様な赤いラインが入っている。
頭からは左右に伸びる大きな角を有し、その手には身の丈を超える強大な剣を持っていた。
【言葉は不要!その力、見せてみよ!】
はっ!良いぜ!見せてやる!
嵐の様な邪念や魔力を振りまく戦神を前に、強引に口角を上げてみせる。
ミレーヌとフィルも果敢にブラックドレアムを睨みつけている。いい子達だ!
「デモクエ6発売から14年!ゲーム業界のインフレの恐ろしさ、見せてやる!」