望む夢
4日目の朝。
ダンジョンの中なので今ひとつ実感はないが、朝である。
昨日、ルビシアの突然の邂逅があった。
まるで夢の様な出来事だったが、俺の腕に着いた腕輪とルビシアに生やしてもらった幾つかのスキルが、邂逅が事実だったと伝えている。
「お父さん。何かスッキリした顔してるね?よく眠れた?」
歩きながらミレーヌが声を掛けてくる。
この世界の事を把握出来たからかなのか、確かにスッキリしている。
ミレーヌもいつもより可愛く見えるな。
「私とミレーヌを置いてお1人で寝ていて、スッキリした顔をしている・・・。何をされていたのやら。」
俺が1人で寝たので、不満気な顔しているフィルがブツブツ言っている。
その不満気な顔すら可愛く見えるのは、しょうがないと諦めるしかないな。
しかし、この元大神官、耳年増過ぎないか?
人の心が伝わると言うのはやはり問題が多そうだ。
「フィルはさっさと帰って来い。次の階層は危険はないが、気を引き締めとけよ?」
階段を降りると、そこは荒廃した大きな都市だった。
元は綺麗に区画整理された石造りの白亜の都市だったのだろう。
今は見る影もなく、ボロボロだ。
一緒にいたミレーヌとフィルは消えており、俺一人、その都市にぽつんと立っていた。
辺りをキョロキョロと見渡しながら、進んでいくと
街の広場でルビシアが1人立っていた。
「来たわね?勇者様。」
ニヤッと笑うルビシア。
「ここがデスゴッドか?ゲームじゃここに訪れた時は主人公の産まれた村だったはずなんだがな。いきなり真実の姿なんだな。」
そう。ここは訪れた者の望む夢を見せる場所。
この廃墟の都市はその夢を剥がされた真実の姿だ。
「そうよ?その機能は今も健在よ。貴方の連れ合い2人は夢の中にいるわ。貴方が夢に入らないのは、この世界自体が貴方の望んだ世界だからじゃないかしら?」
多分、ルビシアは俺がこの世界に残ると知っていたのではないだろうか?
今ひとつ踏ん切りの着いていない俺の背中を押すために、昨日はああ言う言い方をした様に思う。
ふむ。なるほどな。
俺が望んだ世界か。妙に納得される単語だな。
「俺が望み、アンタが導いた世界がこの廃墟って訳か?」
何だか心を見透かされた様で悔しかったので皮肉ってみる。
「あぁ。言い得て妙ね。この世界が改編されてグチャグチャになったんもの。世界を直す為に、貴方の力を借りたいと言う思いも、確かにあるわね。」
・・・デモクエビルダーズ要素もあるとか言わないよな?