新たな仲間
「流石に疲れたな。」
ドサリと割り振られた神殿内の自室のベットに腰掛ける。
ミレーヌとは別室なので久々に1人である。
1日中、ミレーヌと途中参加して来たロンフーと神殿騎士2人、数名の有志を募って熟練度上げをした。
俺とミレーヌは羊飼いを含めて複数の職業を極め、次の上位職へ無事に転職出来た。
途中参加のロンフー達が合流してからは狩場のレベルを変えて戦い続け、無事にロンフー達も1つ2つの職業を極める事ができた。
ふむ。前から疑問だったのだが、どうして皆そんなにレベルや熟練度を上げないんだ?
例えばロンフーのレベルなら熟練度は極めてても良さそうなのに。
「熟練度は自分と同格かそれ以上の魔物を倒す事で上がります。普通はそんな死闘を何百回と繰り返しません。」
なるほど。安全マージンを取りすぎているのか。
まぁ現実なら死ねば死ぬからな。
俺のように裏技を使ってレベルカンストさせて熟練度アップの制限を解除しない限り、簡単に上げるというのは難しいのか。
・・・ん?
今誰が喋った?
「貴方の合法ロリ神官メイドですよ?あぁ。神官は辞めましたので、今は合法ロリ賢者メイドですが。」
フィル!?神官辞めたの!?
え。そんで俺のなの!?返さないよ!?
フィルがいつの間にか俺の横に腰掛けていた。
「ええ。本日、全て神官長に引き継ぎをしました。これからの転職は神官長に申し付けて下さい。
こんな化物女ですが、末永くご寵愛頂けると嬉しいです。」
嬉しそうな顔をしてベットに腰掛ける俺の横に座っているフィル。
戦力的には大歓迎だ。職業が賢者なら上位職だし、今からなら最上位職の大魔道士も目指せるな。
雫はまだ余ってたかな?
俺を呼ぶなら大魔道士とでも呼んでくれ。
やっぱりダイ〇大冒険は面白いよな。
・・・密室に2人切りだ。
この状況は不味い気がする。
フィルは20歳。俺の感覚でも成人している。
大人同士なんだし、良いのではないか?
ミレーヌとも仲が良いし優良物件なのではないか?
自分を化物と卑下しているが、俺からすると化物でも何でもない。ただの可愛い女の子だ。
見た目が変わらない?
いつまでも若くて可愛い奥さんとか最高じゃね?
ふと脳裏に悲しそうな顔をしたリリーとステラの顔が浮かぶ。
だ、駄目だ!
こんななし崩しであの2人の好意を無碍に出来ん!
最終的にフィルを選ぶにしろ誠実でなくては!
デモクエ5の結婚イベントを思い出せ。
3人の幼馴染から花嫁を選んだ経験を思い出すんだ!
「・・・一夫多妻って知ってます?」
フィルの追撃!
俺の心にクリティカル!
「他の地方では知りませんが、この辺ではよくありますよ?農家の方何かは人手が要るので、複数の奥さんを娶る場合が多いですね。」
・・・美人で可愛い奥さん3人と可愛い娘とのハーレムスローライフ。あった!桃源郷はここにあったんだ!
「クスクス。本当にシュウさんって面白いです。」
からかわれただけ・・・だと・・・?
まぁそうだよな。俺みたいなオッサンにこんな若くて可愛い子が好意を持つとか有り得ないだろ。
はぁ・・・。何を勘違いしてたんだろう。
リリーやステラの事も何かの勘違いな気がして来た。
明日も頑張って熟練度上げて戦神倒そう・・・。
やっぱり俺にはデモクエしかないな。
「・・・本当に絶望しないんですね。大魔王や魔王なんて神話の悪魔を前にしても貴方は変わらない。」
「何度も戦って来たからな。それこそいつも通りだよ。」
ゲームだけどな。
現実になってもバグ技や裏技も使えるし、最悪チートも、まぁ使えるしな。
影響を考えるとチート技はちょっと怖いけど。
「今この神殿では絶望が充ちております。私の盲た目には、全てを塗り潰す程の暗い絶望しか見えません。でも、貴方だけは違う。」
フィルに抱き着かれた。
ふわりとフィルのいい匂いがする。
・・・え?
「この暗い絶望の中、貴方様だけがいつもと変わらない希望の光を照らしている。・・・そんな貴方だからこそ、私は付き従いたいのです。」
え。あれ?どういう事?
からかって・・・いるんだよな?
「からかっているのは否定はしませんけど、本心ですよ?・・・不安で甘えているだけかも知れませんけどね。」
ギュッと力を込めて抱き締められる。
「こんな化物がおかしいですよね。不安で押し潰されそうなんです。今までどんな悪意を向けられても平気だったのに・・・。」
何も言わずにそっと抱き締め返してやる。
潰れそうな程、細い肩だ。
20歳と言っても二回り近くも下のまだまだ子どもなのだ。
10日後、大魔王の軍勢が攻めてくる。
恐怖しないはずがないのだ。
「あまり自分を卑下するな。フィルは女の子なんだ。」
━━━━俺で良いならいつでも抱き締めてやる。
照れ臭くて言えない言葉も伝わったのだろう。
フィルは安心した様に力を抜いて体重を預けて来た。
勿論、それ以上は何も無かった。
ミレーヌが眠れないと言うことで部屋に枕を持ってやって来たのだ。