突入。
「このまま法の神殿に突っ込む。」
フィルを助け出すなり、ロンフーと大神官の2人にまずそれを伝えた。
数は向こうの方が多い上に、こちらには物資がまるでない為、時間は常に向こうの味方だ。
さっさと突入して終わらせよう。
もういい加減、転職したいし。
クスッと俺の横でフィルが笑う。
「如何にも貴方らしい理由ですね。ミレーヌ、シュウ様はいつも突拍子もないの?」
「概ねそうよ。どうせ無茶な事を考えてたんでしょ?フィルからも何か言ってよー。」
最近パパへの評価が厳しい娘である。
そして何だかとても仲良くなっている。
既にお互いを呼び捨てにし合っている。
ちょっと疎外感を感じるナイーブな42歳である。
「確かに、食うもんも魔物達からの配給だしな。時間を掛ければ掛けるだけ不利になるのはこっちだ。」
「うむ。それに例の人間と成り変わる魔物の件もある。このまま一気に法の神殿に向かう方が良いでしょう。」
同意してくるロンフーと神官長。
何だかんだとこの2人も仲良くやっているようである。
「大神官様が捕らえられていた洞窟の先に神殿への裏口があります。鍵は奪われておりませんな?」
「ええ。ここに。」
「ならば、シュウ殿と共に神殿へ向かわれると良いでしょう。神殿を解放させるのに神官が一人もいないのは外聞が悪い。その化物の様な力を振るわれては如何か?」
「ええ。そのつもりです。神官長こそ大丈夫ですか?私を亡き者にせんが為、魔物を引き入れたのは貴方だと裏で噂をされている様ですが。」
「滅相もない。神殿に仇なす者を私が招き入れるなんてする筈もない。大神官様こそ実は悪魔だったと言われているのでは?」
「貴方は神殿の権威が大好きですから、その様な事はしないと存じておりますよ。あぁ。それはありませんでした。悪魔達にも化物と言われましたよ。」
「それは重畳。これで大神官様は唯一無二の化物と証明された訳だ。」
何やら不穏な空気で笑顔で会話をするフィルと大神官。
どうやらフィルはただの薄幸の美少女と言う訳でもなく、案外バチバチとやり合っていた様だ。
「ええ。そうです。私は裏表のない人が好きなので、神官長の事は嫌いではありませんしね。」
「ふん。儂は嫌いだ!
シュウ殿、裏口の開門と露払いはお任せしましたぞ!儂はロンフー殿と皆を纏めてから向かいます。
・・・大神官様も含め、どうぞよしなに。」
オッサンのツンデレかよ。
どこぞの料亭のオーナーみたいだ。
「ツンデレ?」
「あ、私知ってる!普段ツンツンしてるけど、実はその人の事が好きで意地悪してるだけってやつよね!」
「さっさと行け!馬鹿者共!!」
顔を真っ赤にして怒鳴り散らす大神官。
クスクスと楽しそうに笑うフィルを見ると、まぁそう言う事なのではないかと思う。