売り込んでみよう
遅くなりました・・・
山の中腹の村では法の神殿関係者が魔物達の監視の元、生活を送っていた。
さて。この監視体制なのだが、『魂砕き』の被害者が再利用されている。
魂を砕かれても人間は死なない。
ここで魂が砕かれた人間の設定だが、少しあやふやな部分がある。魂が砕かれた人間は別に死なないし、何なら普通に会話も出来る。
その上で魔物に洗脳され、自身の魂を使った『魂の剣』で武装して監視任務につくのだ。
そしてこの『魂の剣』だが、実は自身の『魂の剣』で自分を刺すと洗脳が解けて復活すると言う設定がある。
「おーし。これで最後だな。」
ロンフーが捕まえた監視達を縛り上げて順に、奴らが手に持った『魂の剣』で突き刺していく。
「これで大丈夫なはずだが、一旦様子を見てくれ。」
適当に指示を出し、ミレーヌを置いて村の中を見て回る。
原作と変わりなく、この村では囚われた法の神殿の神官達が生活している様だ。
って事はあの面倒臭い神官長もいるのか・・・。
「ばっかもーーーん!!」
村の中でも1番高い所にある小屋から怒号が聞こえる。
やっぱりいるのか・・・。
小屋の扉の隙間から中を覗き込むと、ボロボロの小屋の中では汚れた派手な法衣を着た髭のオッサンが顔を真っ赤にして怒鳴っていた。
「神殿騎士でありながら、魔物達が攻め込んできた時には役に立たず、今更助けに来ましただと?馬鹿にしておるのか!!」
吹き溜まりの村にいた2名の生き残りの神殿騎士が真っ青な顔で俯いている。
「しかも、どこの馬の骨とも知れぬ輩たちの手を借りてと来たもんだ!神聖な神殿騎士が嘆かわしい!何で私か神官長の時に限ってこんな事に・・・。」
そう。ゲームでもそうだが、こいつの肝はここなのだ。
基本的に神殿の権威を絶対に考え、そして何より、自分の経歴や汚点を気にしている。
うーむ。実はこの神官長。このまま放っておくと魔物に殺されてすり替えられる。
原作ならいい気味だで終わるのだが、今回は既に吹き溜まりの村やこの村も解放して一丸となっている。
そう言う獅子身中の虫の様な面倒事は避けたい。
しゃーないな。
「つくづく度し難いな。神官長殿は未だに現状を把握されていないと見える。」
ここで馬の骨のエントリーだ!
「何奴だ!?」
「し、シュウ殿!」
「何でここに!」
「今仰られていたどこの馬の骨とも知れぬ輩ですよ。神官長殿?」
まぁ実際、異世界人だしな。
「ふ、不敬な!現状の把握が出来ていないだと!?
貴様の様な輩に・・・!」
「各国は法の神殿の状況を把握していない。もしくは対応する気がない。」
「!?」
「私はベリーオラトリオからカルカナ経由でここに来たが、法の神殿で起こっている事態は一切噂になっておりませんでした。」
これはその通りだ。
ステラも法の神殿の事は何にも言っていなかった。
「これは下の村にいた冒険者達の証言とも整合する。つまり、この法の神殿の事は一般には知られておらず、国単位では把握はしているかもしれないが、具体的な対策は立てられていない。」
まぁ知らないんだろうな。
知っていたら無視するにしても自国民には法の神殿への渡航は止めるだろうし、多少の噂になってて然るべきだ。
「そ、それではこの自体は解決出来ないではないか!
」
ゲームでもこの神官長は解決は人任せ、と言うより他国任せにしている節がある。
すぐに各国が事態を把握し、討伐軍を向かわせる筈だと考えているのだ。
「確かに何年もこんな事態が続けば各国も動くでしょうが、今の所すぐには無理でしょうな。」
「そ、そんなに待てる訳がないだろ!」
先ずは相手を全否定するのがディベートの基本、だったかな?
さて。どうなるか。
「どうです?ここは私に賭けてみませんか?
この窮地を救う英断をした神官長と歴史に名を刻もうじゃありませんか。」