生贄の選定。
この村なのだが、実は魔物達のもう1つの罠でもある。
一言で言うならば蠱毒なのだ。
力を奪い、一つの村に押し込め、不安や不満を増長させ戦い合わせる。そうして勝ち抜いた戦士を捕えて再度力を抜き取り、殺す。
そうやって人間達から力を集めて、主たる大魔王オルドデミウスに力を送ると言う計画である。
つまり、この村は非常に治安が悪い。
全員が力を奪われ、逃げられない上に魔物達が争いを煽ってくるのだ。そりゃあピリピリする。
一応、生かさず殺さず程度の食料は支給されている様だが、その食糧を取り合って日夜、弱肉強食の奪い合いが起きている。
「だ、旦那ぁ。もう勘弁してくだせぇ・・・。」
この村で1番大きな建物の主賓室で、俺とミレーヌは豪華なソファーで優雅に寛いでいた。
俺達の足元で土下座をする厳ついマッチョが目障りである。
「うるさい。いきなり俺達に喧嘩を売ってきやがって。うちの娘が怪我したらどうする気だったんだ!」
「確かに見せしめのつもりで喧嘩は売りましたが、その喧嘩を買って俺達をボコにした主犯はその娘さんじゃないっすか・・・。」
うむ。ミレーヌも強くなったものである。
デモクエ7ではこの辺だと、適正レベル14、5くらいだろうか?
レベル28でオリハルコンのナイフ装備のミレーヌにはこいつらは逆立ちしても勝てない。
本来は負けイベントなんだが、リアルならこんなもんだ。
「この村の掟は弱肉強食なんだろ?お前もこの屋敷を無理矢理奪い取ったと聞いているぞ?」
「そ、そりゃあそうですが・・・。」
「大丈夫だよ。ロンフーさん。私達あんまり長居する気はないから。」
「本当ですかい!?お嬢!」
嬉しそうに顔を上げるロンフー。
一応、これでもこの村のトップだ。
「うん。私達、法の神殿を解放するつもりなの。」
ミレーヌがさらりと告げた一言に狼狽えるロンフー。
「お、お嬢!そいつはいけねぇ。いくら旦那とお嬢が強くても多勢に無勢だ。それにこの村は山と海に囲まれた孤立した土地だ。助けを呼ぶ事も出来やしねぇ。」
「人手ならいるだろ?確か、法の神殿を守護する連中がいたろ?」
そう。法の神殿には守護騎士団なる連中がいる。
大部分は魔物が占拠した際にやられたらしいが、1部は生き残り再起しようと日夜励んでいる。
「あの連中は使えねぇ。所詮は敗残兵だし、山の中腹の村で監視されているらしいですぜ?何か期待する方が難しいってもんでさぁ。」
その辺は原作通りだな。
山の中腹の村には本来、法の神殿の大神官を初め、神官長やら沢山の神官と騎士団の生き残りがいる。
「この村にも1人騎士団の生き残りが居ますが、中腹の村にも行けない始末。無茶はしない方が・・・。」
何やら普通に心配してくれるロンフー。
結構良い奴である。
「まぁまぁ。その辺は何とかするつもりだ。」
ソファのサイドテーブルに置いたロンフーから取り上げた、もとい、寄贈された『力の雫』と『守りの雫』と『素早さの雫』を見つめ、『魔鳥の翼』を手にしてニヤリと笑みを浮かべる。
「時にロンフー君。君、今レベルいくつだい?」