魔王
剣が閃き、燃え盛る爪が空を走る。
お父さんと悪魔の戦いは常にお父さんが圧倒していた。
「力こそ強いが、一撃一撃が雑だ!腕が1本ないからか!?
俺程度の技量でも十分対応出来る!」
【ぬぅう!!小癪な!!】
悪魔の口が燃え盛り、炎を吐き出す。
あっという間に火炎の息がお父さんを包み込む。
「効かん!!」
バサッと氷炎のローブをはためかせ、炎から飛び出たお父さんがその勢いのまま悪魔を一刀両断にする。
【がはぁっ!!こ、これがルビシアの使徒たる勇者の力・・・か!予言に違わぬ益荒男ぶりよ!だが!それでも私は・・・!!】
上半身だけとなった悪魔は地に倒れ、それでも尚、
しぶとく戦いの意志をみせる。
【じゃ、ジャミエル様を援護しろ!!】【回復を!】
「勇者様に続けぇ!!」「ステージに上がらせるな!!」
ステージに押し寄せる魔物の群れ。
街の人達だけではその勢いを止められず、堪らずお父さんが雨のような無数の斬撃を何度も放つ。
【い、今のうちに・・・、せめて1太刀・・・。】
半身だけとなった悪魔はそれでもお父さんに向かおうと這って向かって来る。
「やらせない!お父さんは私が守る!」
白金に輝くオリハルコンのナイフを手に、私は再び鳥頭の悪魔と対峙した。
【また貴様か!小娘!き、貴様さえいなければ!
まだだ、まだ負けん!!】
「・・・そんな姿になっても、まだ立ち向かおうとするのね。」
【当然だ。それとも、偉大な魔王の一角たる私が地でもがく様は、滑稽かね?】
この悪魔は許せない。
お父さんや街の人達に薬を盛り、拉致し、生贄として何十人も殺そうもした。
そして、今までもそんな事をして来たのだろう。
でも、どれだけボロボロになっても抗う姿は・・・。
「貴方のして来た事は許せない。でもその諦めない姿だけは、尊敬するわ。ジャミエル。」
【くははっ!光栄だな!聖女よ!】
満身創痍を通り越して、瀕死のジャミエルはそれでも、それを感じさせない鷹揚な笑みを浮かべる。
【親愛なる大魔王デッドムーア様の予言にあった5つの光、その一つたる白金の聖女よ!
デッドムーア様配下、五大魔王が1柱、ジャミエル!その威光、畏れぬならば掛かって来い!】
「ぅわああああああああ!!!」
三度、私はオリハルコンのナイフを振るい、ジャミエルに突き立てた。
【み、見事。・・・き、気をつけ、るが良い。で、オルドデミウス、は既に、我等より、先、に・・・。ぐふ。】
そうして、ジャミエルは魔王として最後まで折れることなく、倒されたのだった。