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おっさんのゲーム世界転移生活日記  作者: 太郎冠者
白金の聖女
39/96

抗い


そこはまるで神殿の様だった。


大きなフロアに魔物の群れがひしめき合い。

一段高くなったステージには、大きな篝火が焚かれ、街の人達が並べられていた。


私も街の人達の列に紛れ込み、目立たない様にキョロキョロと目を動かし、お父さんを探す。



いた!ステージの真ん中の方に、いつもの鎧を付けたお父さんが虚ろな目をして立っていた。


待ってて!今助けるから!


何とかお父さんと抜け出す隙はないか辺りを窺う。


何かの集会が始まるのだろう。

ステージの中央に置かれた石造りのベットの横で、一際大きな、鳥頭の悪魔が演説をしている。



【見よ!この哀れな人間たちを!己の欲望のままに生きた身勝手な者を!不遇な生から逃げ出すしか出来ない弱き者を!幸福の町等と言う甘言にやすやすと惑わされる愚か者共を!】



悪魔の言葉が私に突き刺さる。


不遇な生から逃げ出すしか出来ない弱き者。


あぁ、そうかもしれない。

私はただ、助かりたかった。

逃げ出したかっただけだなのだ。

悪魔の言うことは正しい。



【聞け!我が同胞達よ!

例え、大魔王様が封印されようと、このジャミエルがいる限り、魔族は滅びん!我を讃えよ!我を崇めよ!そして今ここに大魔王様復活への生贄を捧げる!】



【【【ジャミエル!!ジャミエル!!】】】



生贄!?

ろくな目的ではないと思っていたが、まさかそんな!


鳥頭の悪魔がお父さんに近づいて行く。

お父さん!!


【今宵の最初の生贄はこいつだ。

むぅ。中々の戦士だな。大魔王様もお喜びになるだろう!】



お父さん!お父さん!お父さん!お父さん!

頭の中が真っ白になって鳥頭の悪魔に向かって走る。




抗いなさい。

抜いたなら、躊躇をしてはいけない。



2人の教えが私の中に染み込んで行く。

そうだ。教えて貰ったはずだ!

力を貰ったはずだ!


腰に差した鞘からナイフを引き抜く。

冷たい。でも暖かな白金の光に刀身が包まれる。



「うわああああああああぁああぁああ!!」


お父さんは私が守る!!



走り出した勢いのまま、腰だめに構えたナイフを悪魔に突き立てる。


輝く刀身の光が辺りを包み込む。



【ぐぅう!この餓鬼!薬が効いていないのか!?】


バキっ!


悪魔に振り払われ、飛ばされる。

勢いで口を切ってしまった。

頬がジンジンと熱い。


諦めない。

私は絶対諦めない。逃げない。

お父さんを助けるんだ!!


手に持ったナイフが私を励ますように輝く。


「お父さんを返せ!!」


【ふん!多少順番が狂ったが、今宵の生贄は貴様からだ!小娘ぇえ!!】


炎を纏った爪が私に向かって振り下ろされる。


ナイフを握りしめて再度突き立てるべく突進する。



ドン!



・・・あれ?

ナイフを突き立てたが、何時まで経っても悪魔の爪が私を刺すことは無かった。


上を見上げると、あの恐ろしい悪魔の腕がなかった。



不意に後ろから声が聞こえた。



「ウチの可愛い娘になにすんだ。鳥野郎!!」


そこには剣を握ったお父さんが立っていた。



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