小賢しい黒幕。
「ほぉう。人間の旅人がやって来るとは珍しい。
しかもそれなりに力を持った戦士の様ではないか。」
姿を見られる前にさっさと逃げようとした所、そのまま真っ直ぐに俺達の方に向かって来たデーモン・プリースト一行。
お陰で街のど真ん中の広場で鉢合わせしてしまった。
デーモン・プリーストを先頭に、4匹の悪魔が護衛を務めている。この辺も原作通りだ。
改めて見ると小憎たらしいデザインだ。
体格はひょろ長く、口には細く整えた口髭を生やした、意地の悪そうなおっさん顔。
プリーストと言うが、まるで魔術師の様な黒と赤のローブを羽織り、頭には大きなターバンを巻いている。
しかし特徴的なのはその目だ。
白目の部分が黒く、黒目の部分が赤い、明らかに人以外の特徴を兼ね備えていた。
「おや。村長様ですかな?この村は良い村だ。
様々な種族が平和に暮らす、まるでこの世の理想郷の様ですな。」
取り敢えず相手をヨイショする。
今は一刻も早くこの場を終わらせたい。
後々のストーリー展開的に、この村で争いを起こすのは得策ではないだろう。
「ふぁっふあっふあっ。そんな大層な役ではない。しがない警備隊長と言った所よ。しかも他の仕事で忙しくてな。ろくにこの村には警備兵を置いていないのだ。見ての通り、堀や壁などもないので、何処からでも入り込めてしまう。」
ん?何だコイツ?
「この村の、ほれ。アソコに塔が見えるだろ?
あそこにはこの村の象徴とも言うべき、絶世の美女がおってな。エルフと魔族のハーフの娘なのだが、面白い特徴があってのぅ。」
ニヤニヤとしたやらしい顔をしながら話しかけてくる。
あぁ、なるほど。
やっぱりコイツは小賢しい。
「その娘の流した涙は、全て魔力を備えた極上の宝石となるのよ。人間に取っては1粒で1財産程の価値があるらしいな。護衛こそ一体だけはつけておるが、ヌシほどの戦士なら・・・おぉ。怖い怖い。」
やけに大袈裟な身振りで身を竦めるデーモン・プリースト。
つまり、襲いに行けと言っているのだ。
原作でもコイツはやけに魔王ピエトロの事を強調していた。
つまり、勇者と魔王の共倒れを狙っていたのだ。
魔王謀殺を狙うコイツからすれば、ローザは魔王に平和を訴えかける百害あって一利なしの存在だろう。
・・・しかし。色々突っ込みたい衝動に駆られる。
ゲームの時も思ったが、リアルで見ると本当に滑稽な奴だ。
策士を気取っている割りに底が浅いのだ。
ゲームでも既に勇者とピエトロが和解しているのに、それを知らずにひたすらピエトロが悪いと叫ぶ姿は、
仲間キャラからも滑稽だと言われていた。
普通、初めて会う人間に、白昼堂々と街中でこんな明らかに裏が丸分かりな怪しい事を言わんだろう。
何と言うか、自分以外は馬鹿しかいないと思っているんじゃないだろうか?
もし俺が、実は魔王の部下とかだったならコイツ処刑されても文句は言えんぞ?
裏取り調査くらいはしてるんだろうか?
チラリと横目でステラを見ると、デカ過ぎる釣り針に面食らった顔をしている。
両手で構えている身の丈程ある杖を見るに、先制攻撃を仕掛けようとしたが、あまりの胡乱な会話に冷静になってしまった様だ。
うーむ。直情タイプなステラを踏み留めるとは、侮れないかもしれんなぁ・・・。
取り敢えず適当にスルーして、お帰り願うか・・・。
「ぬぅ!やはりか!貴様、魔王様の想い人、ローザ様を亡きものにして人間と魔族の争いを進める気じゃな!?」
おい。今の誰だ?
「前から儂ら皆、怪しいと思っとたんじゃ!
安心してくれぃ!旅の人!
既に村の人間には事情を伝えて既に避難させておる!
存分に剣を振るうと良い!!」
やけに説明口調で仕切り出す例の複数店舗店長の爺さん。
そして、やけに素早い対応の村人達。
明らかに訓練された避難っぷりである。
こ、此奴ら!俺達を巻き込みやがった!!